第10話 変わった世界
国が国民を監視する。
そんなことが許されて良いのだろうか。
「国による人々の監視よ。」
リーパーの言葉が翠の頭からしばらく離れなかった。
まぁ、そんなことを言った本人はというと、先ほどから何やら忙しそうにしながら、
私の見ていた匿名掲示板サイトとにらめっこをしている。
「最初はまったく興味ない素振りだったのにね~」
翠の嫌味も気にせず作業に没頭しているから、珍しいこともあるもんだ。
(リーパーって基本うさん臭い雰囲気だしてるし、真剣な時ってめずらしいもんね)
そんな忙しい人は放っておいて、気分転換に外へ出てみると、
夕暮れ時の空に公園であそぶ子供、犬を散歩している夫婦、私の知っているいつも通りの日常風景が流れていた。
何も変わらない、私の知っている時間の流れでホッとする翠であった。
「ここ最近いろいろあったから、普段いる世界が別物になっちゃった気がしてたから、なんか落ち着くわ~」
土手の原っぱに横たわって夕焼けを眺めながらいろいろ思い返した。
突然変な世界に飛ばされて、戻ってきたと思ったら父の資料やらなんやらで危なそうな情報知っちゃったり。
本当にいろいろな出来事があったもんだ。
「いまだになんであの世界に飛ばされたのか分からないこともたくさんあるけど、今を楽しく生きていればそれでいいか~」
基本私は楽観的な性格だから細かいことは気にしないよ!
そんなこんなで、いい気分転換をして家に帰った。が・・・
部屋を開けるといろいろな書類や、なんやらが散らばっていて、
まるでゴミ屋敷だ…
気分転換後の私の清々しい気分はどこかへ飛んで行ってしまった。
「ねえ、なんでこんなことになってるのさ。」
翠はこの惨状を引き起こした犯人に向かって問い詰めたのだが、
「やっと帰ってきたのね~待ちくたびれたわ~」と、問い詰められても悪びれる様子は一切ない犯人であった。まぁ、リーパーのことなんだけど…。
まず、こんなことになるまで何していたのか聞こうとしていると、
あっちから話しかけてきた。
「とりあえずこれを見て頂戴な」
ベチン
私の顔に向かって一枚のチラシが飛んできて貼りついた。
「"この世界の真実 私たちを支配する巨悪の存在について"だって?」
なんだこの胡散臭いセミナーは!あいつこんなもの探すのに必死こいてたの!?
「あ、今私のこと馬鹿にしたでしょ。」
あまりの衝撃で表情に出ていたのか、リーパーに感づかれてしまった。
(普段からそうだけど、こいつほんと鋭いよね)
「まぁいいわ。それより、なんでこんな胡散臭いセミナーのチラシを持ってきたかっていうと、そのセミナーの主催者は翠が見ていた掲示板のあいつよ。」
え?
あまりの話の急展開に翠はついていくことができなかった。
「えっと~、8chでスレたててた、エシュなんたらとか言ってた人のことだよね?」
リーパーは"当然でしょ"と言わんばかりにうなずいた。
彼女が言うには、「掲示板を調べたわ~、私にかかれば特定なんてへっちゃらよ。」とのこと。
こいつを敵に回すと恐ろしいと感じた翠であった。
とりあえず現状について把握はできたが、一つ疑問が残る、
「このセミナーのチラシを見つけたのはいいけど、その次はどうするの?だってこれ過去のチラシだけど。」
過去のチラシを見つけたところで、過ぎた時間が戻るわけもなく、参加などできないからだ。
そんな翠の疑問もリーパーの次の行動ですぐに答えが出た。
突然リーパーが大鎌を振り落とし、空間を引き裂いたのだ。
その引き裂いた空間の先は、私の知っているあの世界。
「"False World"なら追体験できるでしょ?何せ記憶の世界だもの。」
私はリーパーの手に連れられて、またあの世界へ踏み入れた。
Code07 -コードゼロセブン- 藤沢 凪 @huryu0_0
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