アチュリとパクラ

うらみ

アチュリとパクラ みつばちさんとのきょうそうかい

 アチュリとパクラはいつもなかよし。

きょうもふたりでいっしょにあそびます。

「パクラ!パクラ!あそぼうパクラ!」

 げんきなアチュリはあさはやくからげんきです。

まだおひさまもねてるようなじかんからパクラをあそびにさそいます。

「アチュリ、アチュリ、まだおひさまだってねてるじゃないか。そとであそぶなら、こんなにくらかったらあぶないよ。」

のんびりパクラはひとつおおきなあくびをすると、ゆっくりベッドから

でてきました。

「きょうのあそびはすごいんだ!ミツバチさんからミツをもらってパンケーキにかけたらとってもおいしくてとってもたのしいとおもわない?」

「それはきっとたのしいだろうね。それならぼくは、パンケーキをやくじゅんびをしようかな。」

「なにいってるのパクラ!パンケーキをやくのも、ミツをもらいにいくのもふたりでいっしょにしたほうがたのしいにきまってるじゃない!」

「そうだねそうだね。ぼくたちはいつもなかよしだからぜんぶいっしょにしたほうがたのしいね。」

「ならはやくいこう!ミツバチさんはいつもおおいそがしだから、はやくしないとミツがもらえなくなっちゃうよ!」

 ふたりはいそいでミツバチさんのところへむかいました。


 ふたりはずんずんもりをすすみます。

まだおひさまがねむっているもりはとてもくらく、とてもしずかです、

たまにきこえるフクロウさんのいびきとかぜのおとだけがとおくからきこえてきます。

「やっぱりくらいとこわいね。ひとりだったらいっぽもあるけないよ。」

 アチュリとパクラはてをつないであるきます。

「だいじょうぶだよパクラ!なにかあってもわたしがパクラをまもるから!」

 アチュリがむねをドンとたたいてえっへんとむねをはります。

「ありがとうアチュリ。ぼくもアチュリがさみしくないようにいっしょにいるね。」

 ふたりはニコニコわらいながらもりをずんずんすすみます。

どんなにくらくてこわいみちでも、ふたりであるけばへっちゃらのようです。


 おひさまがすこしかおをだしはじめたころ、アチュリとパクラはぶじ、ミツバチさんのおうちにたどりつきました。

「パクラ!あれをみて!」

アチュリがゆびをさしたところをパクラはみます。

「うわー。すごいなぁ。」

 ミツバチさんのおうちはある種要塞的機構を搭載した一種の迎撃拠点と化していた。

度重なる蜂蜜の簒奪さんだつに頭を痛めた女王バチが下した苦渋の決断は、かなり大きな成果を生み出した。

 高さ10mからなる外壁には30もの機銃が備えられており、上空からの奇襲にも対応できる。加えて、500もの働きバチが外壁周辺の上空を飛びながら警護している。

当然、入口は正面の正門しかなく、そこにはミツバチではない者が通ろうとするものならこちらがハチの巣にされることだろう。

「ミツバチさんのおうちとってもおおきくなったね。」

 アチュリはそらをみながらいいました。

「うーん…ミツバチさんおこっちゃったのかな。とってもこわいね。」

 パクラはいりぐちをみながらいいました。

パクラはしょんぼりしながらしゃがみこんでしまいました。

「どうする?ミツバチさんのミツ、あきらめる?」

「いやだ!あきらめたくない!わたしはぜんぶぜんぶたのしみたいの!

ミツバチさんからミツをもらうのも、パクラといっしょにパンケーキをやくのも!

いっしょにやってたのしみたいの!」

 アチュリはうおーとさけび、じぶんにかつをいれました。

それをみたパクラもまねしてうおーとさけび、たちあがりました。

「いこうパクラ!わたしたちならきっとできるよ!」

「うん!アチュリとなら、いっしょならなんでもできる!」

 ふたりはゆっくりとミツバチさんのいえへとあるいていきました。


 二つの影がゆっくりと城砦に近づいていく。ミツバチではない二者を視認した警備のハチたちはすぐさま戦闘態勢を取る。対侵入者用武装ミツバチに加え重装アーマードミツバチ、ミツバチ戦車も出てきている。

二つの影が検問所の前で止まる。

「ここは私有地につき、諸君らは立ち入り禁止だ。表の看板が見えなかったのか?」

一匹のミツバチがアチュリとパクラに近づく。

 アチュリは燃えるような、パクラは静かで凍てつく殺気を身にまとっており、ミツバチ達は無意識のうちに大量の汗をかいていた。

「すいませんねぇ。如何せん文字、読めないもんで。にしても随分ご立派な家をお作りになりましたなぁ。」

 アチュリが咥えていた煙草をプッと吹き落とし、足で火を踏み消した。

「君たちがこのまま何もせず、立ち去れば我々も手出しはしない。今回の不法侵入も見なかったことにしよう。」

 ミツバチ達は察していた。この目の間にいる生き物バケモノ達の目は狩りをする者の目であり、その標的ターゲットは我々だ、と。

「不要。」

 パクラは背負っていたSMGサブマシンガンを一丁ずつ手に持ち、構えた。

それに反応し、ミツバチ達も銃器を構えた。

「オイオイオイ、口では帰ってくれとか言ってたけどよぉ。ほんとはウチらとヤりたかったんじゃないの?嬉しぃねぇまったく。」

カッカッカとアチュリは頭を抱え嗤った。

「アチュリ、開戦。」

「あいよ、パクラ。」

 アチュリは言うや否や、持っていたキャリーケースを地面に叩きつける。

キャリケースは地を這うように壁を形成し、あっという間に一つの障壁を形成してしまった。

 アチュリが背負っていた、ミサイルを数発、検問所に撃ち込むと、10mの壁を駆け登り始めた。

爆発に呼応し、さらに爆発が起き、並んでいた重装ミツバチはおろか、ミツバチ戦車さえも粉々に吹き飛んでしまった。

対侵入者用武装ミツバチは、パクラの会敵必殺サーチアンドデストロイによって確実に数を減らし始めていた。

「順調。」

 パクラは一言だけ言い漏らすと障壁を盾にしながらさらに3つの手りゅう弾を投げ込み、逃げるミツバチの背を撃った。

 そうこれはもはや侵略する側とされる側。互いの生存を懸けた競争なのである。

「侵入。」

正門前のミツバチを一掃したパクラは、SMGをリロードしながら正門の中へと入っていった。


 一方、アチュリは壁を登り切り、機銃の攻撃を避けながら空中にいるミツバチ達との戦いを繰り広げていた。

 アチュリの九本ある尻尾がすべて自動迎撃銃座ガンビットと化し、アチュリの回避やリロードの隙を埋めるようにミツバチ達を撃墜していく。たまに近接格闘を挑んでくるミツバチもいたが、アチュリはそれを丁寧に反撃し、順番に命を奪っていく。

 全てのミツバチを地獄に堕としたアチュリは、付着した返り血をベロリと舐めた。

蜜の様に甘い黄色の鮮血を舐める度にアチュリ笑顔は激しくそして醜く歪んでいく。

「甘くて美味いが満たされない。もっともっと上質な味わいを…。」

ふらりと外壁の内側を見ると、中央の建物から一際大きい影がアチュリの方に飛んでくるのが見える。

「おやおや、女王様の登場って訳かい。」

他のミツバチと一線をかくスピードで飛行しながら大量の装甲を身にまといながらこちらに女王バチが飛んでくる。放たれる巨大な毒針が壁や地面に刺さるたびにクレータと大量の砂埃と生み出す。

アチュリが猛攻を回避しつつ、ガンビットが何発か銃弾を撃ち込んだが、装甲に弾かれビクともしない。

「あの速さとあの硬さ。厄介だねぇ。だが、それはあくまで厄介だというだけの話さ。」

 アチュリが手を伸ばすと九個のガンビットが一列に連結し、一つの武器ライフルになる。

 アチュリは照準を覗きながら一発、また一発と銃弾を撃ち始めた。

するとどうだろうか。羽を守っていた装甲がみるみる内に剥がれ、気が付けば一つの羽が剥き出しになっていた。

 アチュリがそこにもう一度銃弾を撃ち込むと、羽が千切れ、バランスを崩した女王バチはそのまま地へと落ちていった。

「味見は出来ないだろうが、目的はそれじゃない。これでちょっとの間ハチたちは身動き取れないだろ。」

アチュリが煙草に火をつけたところで、パクラから無線が入る。

「こちらパクラ、任務完了。脱出する。」

「こちらアチュリ、退路の確保は出来ている。森をそのまま走り抜け、ホームに帰還されたし。」

了解ラジャー。」

 アチュリは壁から飛び降り、森の中へと消えていった。


 アチュリがミツバチさんからもらったミツをパクラがじょうずにやいたパンケーキにいっぱいかけます。フワフワのパンケーキにおうごんのはちみつがかかりキラキラとかがやいています。

「「いただきます!」」

 ふたりでいっしょにパンケーキをたべはじめたふたりはとてもたのしそう。おたがいのきょうのできごとをはなしあい、あしたのあそびをいっしょにかんがえるのでした。


おしまい


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