電話探偵
昨日の夕方、薬局に電話があった。私が薬局でお薬をお渡ししたお婆ちゃんからだ。毎食直前の薬が、袋に入っていないという。薬局では、ご本人の前で薬を見せてお渡ししているし、ご本人がそれを鞄の中に入れているのも見ている。また薬局では、お渡しする直前の薬を常に写真に撮って記録している。お渡ししていることは間違いなかった。
とりあえず否定はせず、状況を詳しく教えてもらう。私は、ひらみ探偵として起動。
毎食直前の薬袋に薬が入っていないということだったので、私はまず袋が本当に当該の薬が入っている薬袋だったのかを確認した。
「その袋に何と書いてありますか?」
そうすると、少し言いたくなさそうな空気が流れた。少しいいよどんだ後、おばあちゃんが300点というようなことを言い出した。それはお薬の袋ではなく、領収書だ。責めないように、そうお伝えする。
そうすると次に、今度は毎食直前の薬の話題から急に離れて、夕食後の薬の袋が二つあるという話になった。そのお婆ちゃんの場合は、夕食後の袋は一つしかないはずだ。
そこで今度は、夕食後の袋に書いてある日付は何月何日かというのをそれぞれ聞く。そうすると、またしても少し言いたくなさそうな雰囲気になった後、おばあちゃんが5月と6月だと言った。
おばあちゃんに7月の袋を探して欲しい。そこに毎食直前の薬も一緒にあるはずだとお伝えする。無い、無いと、ちょっとお怒り気味のおばあちゃん。私は、薬局で薬を鞄に入れているのを見たので、必ず探せばあるはずだと勇気づける。渋々探してみると言って、おばあちゃんは電話を切った。
数分後、電話が鳴る。おばあちゃんからだ。お薬があった!と、とても嬉しそうだった。どうも帰ってきてすぐに片付けていたようで、片付けたことを本人がすっかり忘れていたらしい。
この仕事をしていると、いろんな人に対応する。PDCAサイクルも、対応している間はずっと回している気がする。自分の考えをいったん置いて、相手の話をとにかく聞く。相手の話を十分に聞くと、問題が直接解決してもしなくても、とりあえず問題を受け入れてもらえることが多い気がする。受け入れることが出来れば、解決のために行動する準備ができるので、こちらの話を聞いてもらいやすくなる。また話を十分聞くことで、こちらも相手が本当に何を言いたいのかを理解しやすくなる。
そんなにうまくはいかなくて、怒鳴って電話を切る人もいるけれど。まぁ、それは相手側の心の余裕の問題だと思っているから気にしない。
とはいえ、問題が解決するととても嬉しそうで、かつとても感謝されてしまう。人の役に立てると、こちらも嬉しくなるものだ。
これからも私は、消えた薬を探す電話探偵となる。
応募生活、とはずがたり【エッセイ】 ひらみ @Ka_Ku_Ko
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。応募生活、とはずがたり【エッセイ】の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
心が折れそうになったときのプレイリスト最新/朽木桜斎
★27 エッセイ・ノンフィクション 連載中 180話
身体日記 自分の体を変えられるのか最新/Aba・June
★19 エッセイ・ノンフィクション 連載中 1,363話
エッセイを書く暮らし最新/小木原 見菊子
★57 エッセイ・ノンフィクション 連載中 1,472話
プロ作家の更新情報&小説講座「赤LALA」最新/成星一
★12 エッセイ・ノンフィクション 連載中 269話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます