第27話 オーバートラップクリアボーナス
Bランクへ最速の道のりを決めた俺は、真っ先にAランク認定試験の応募要項へと目を移す。
参加資格は当然設けてあり、まずはレベルが50以上である事。
そしてステータスのどれか一つが5000を上回ってる事。
Cランクダンジョン、Bランクダンジョンの踏破経験がある事だ。
ここら辺は既に顔パスだ。
CランクダンジョンはランクC時代に嫌と言うほど回ったからな。
それとBに上がる時もパーティを変えて数回踏破した。
全員が俺に舐めた態度とってきたので、最初と同様攻撃には参加せずに盾役で貢献。
勿論山分けの時に揉める。売値数百円のボックスを渡されてそこから大逆転する光景をその日のうちに5回は見せつけて思い知らせてやった。
既にBに上がってたのになんでそんな事をしたか?
ダンジョンセンターのお姉さんの一存じゃすぐに認可が降りなかったからだ。
だから納品数を積み上げれば上の人も首を縦に振るんじゃないかと思ったら案の定だったぜ!
と、言うわけでAランク向け納品アイテムを集めるパーティメンバー募集の声かけ合戦がそこかしこで始まっている。
ここにいるのは揃いも揃って死を恐れぬ戦士達だ。
既に覚悟がガンギマリの奴らか、俺みたいにAに上がれて当然と思ってるような奴らしかいない。
そんな中でも特に俺は有名人で、なんと言っても彼らの記憶に新しかった。
攻撃をさせれば瞬殺、ドロップはアホみたいに出すし、宝箱を開ければ抽選回数が頭おかしい。
そしてタダで物を配って歩くと言う根も葉もない噂まで広まっている。
しかしCランクで相当わからせたのもあって、俺の顔を見てニヤつく奴もいれば、俺の噂を聞いて怯える奴もいた。
しかし殆どが俺に対して興味を示す奴が多い。
その理由はいまだに根強く信じられてる、こいつと一緒に行動すれば旨い思いができると言う思い込みにあった。
まだ自分の力を理解してなかった頃の俺を、当てにしすぎてるのである。
人気者は辛いぜ。しかし同時に有能な者程仕事を多く回されると言う現実を天上天下で目の当たりにしてきた俺。
別に仕事はしてやってもいいが、タダでそれにありつけるって考えはいい加減捨てて欲しいもんだ。
後はいまだに俺を弱者だと信じて疑わない奴も一定数いる。
そう言う奴は俺のレベルを明かすだけで勝手にビビってくれるのでまだ対処しやすい。
世の【+1】達の教えになれば俺も万々歳なんだが、まぁ迫害されてきた奴らが引っ張り出されたところでそんな度胸つかんよなぁと。
俺の覚悟が決まったのも、ヘイト能力の高い要石さんが居てくれたおかげで攻撃し放題だったからだ。
そして宝箱での攻撃だって思いつきだが、レベルを2に上げてからの効果が特にでかい。
なんにせよ、レベル1を超えないことにはお話にならない。
特に【+1】は能力が低く、HP・MPが貧弱なので攻撃を喰らうと死ぬ薄幸な人生送ってるからな。
誘われようと、ダンジョンに行くか? と言われてもイエスという選択肢はない。そのスキルを授かっただけで引きこもる奴は多いよ。
なんせ世間がステータス至上主義みたいな風潮だからな。
今更価値に気づいて表舞台に引っ張ろうと迫害されてきた過去は変えられねーんだ。ざまぁ。
じゃあなんで俺は行ったか?
そんなもん、翌日の俺の立場を死守するために決まってんじゃん。
本当なら誘うのも御法度なんだぜ?
けど断れる雰囲気じゃねーし、慎も誘う気満々だしで行くしかなかったんだよ。
どう考えたって俺を亡き者にしようって考えだったぜ?
それも未遂で終わったけどな。
俺は運良くレベルアップに漕ぎ着けたが、下手すれば死んでた。
【+1】はとにかく死にやすいもんだから、生き残ってレベルアップしたパーセンテージがそれこそ1%あるかどうかなんだよな。
残りの99%は死。
それを考えて行動を起こそうって奴はいねーよって話だ。
たとえ大金が手に入ろうが、本人からしたら金で売られたってマイナスイメージしか植えつかねーし、とにかく悪い予感ばっかり働いて手が震えるっていうのが本音かな?
BランクダンジョンもCランク同様、ソロでの探索はできない仕組み。そりゃそうだ。Cと違って明らかにダンジョン側の本気度が違う。中にはリッチ対策にゴールドボックスを買いつけてる奴もちらほら。
俺はダンジョンに詳しくないんだが、ランクが高くなるほど出現モンスターは似通ってくるのだろうか?
そんな些細な事に気をかけてると、背後から声をかけられる。
「よう、有名人。こんな所で誰かお探しかい?」
「誰だあんた? まぁ探してるっちゃ探してるが特定個人じゃない。Aランクに上がるための素材を集めてるパーティの世話になりにきたんだが、生憎とツテがないもんでな」
「へぇ、あんたなら引く手数多だろうに。ドロップもボックスの開錠も自由自在だ。気分次第で何処にでも行けるだろうに、何を選ぶ必要がある、有名人?」
ニタニタと笑う男は何処か焦点があってない眼で俺ではない何処かを見ている。今駆けていった女の子を気にしている?
人と話してるっていうのに随分と余裕そうだ。まぁただの立ち話だしな。俺のことより自分のパーティが優先か、めくじらを立てることもない。
「それなんだが、悪影響が出るとクランの上司から止められちまってる。世間の【+1】を見る目は確かに変わったが、使えないやつから利用できるやつにランクアップだ。俺としては使えないと思われてた方が過ごしやすかったぜ」
「ははは、自分の得意分野を封印しろって? 君のとこのリーダーは無茶を言う。俺の得意分野を封印しろって言ったら探索者から足を洗えと言ってるようなもんだ。正気を疑うね。なんでそんな事を言われてまで付き従う? 恩か、それとも弱みを握られてるかのどちらか?」
「どちらかと言えば恩の方がでかい。俺を見つけてくれた、家族を助けてくれた。友人と和解のチャンスをくれた。一歩間違えば離れ離れになって、一生会えなくなるくらいの空中分解一歩手前の窮地を救ってもらってるんだ。それに、俺も幸運だけを売りにするのがまずいと思ってた。これは俺にとってちょうどいい機会だったんだよ、おっさん」
「フハハハ、おっさんと来たか、俺はこう見えてまだ若いつもりなんだがな、坊主」
「高校生から見たら二十代は十分おっさんだぞ?」
「こいつは手厳しい!」
男はエイブラハム・ワズキャンと名乗った。
その苗字に聞き覚えがあったので、天上天下にいるエイミーさんのご親族か尋ねると弟だと聞いて二度びっくりした。
待って、今脳が言葉を理解できずにバグってる。
つまりエイミーさんは結構な年上……ってコト?
俺はつぶらな瞳を潤わせてそう尋ねた。
エイブラハムさんは頷きながら苦笑した。
色々な意味でショックだが、昔の写真を見て心を落ち着かせた。
どうやら彼女は合法ロリで、見た目も声も俺たちの期待通り。
ただし年齢が少しばかり許容範囲を超えている。
そんなところだった。
そんな経緯もあってすっかり意気投合して今回はエイブラハムさんのところで世話になる事に。
彼の率いるパーティは大規模な『
総勢30名からなる団体だった。
全員が全員、この世に絶望してる顔をしてるが、腕の方はお墨付き。
彼らはとある目的のために募り、そして生活を同じくするのだと言う。
その目的はAランクダンジョンの先にある黄金郷。
最も探索者らしい願いを叶えようと手を取り合っているのだとか。
問題はその難易度が極めて高いこと。
探索者界隈では帰らずのダンジョン、ワクワクする自殺場。
通称『
そこには生態系の異なるモンスターがひしめき合い、この世の地獄を形成していた。
行くも地獄、戻るも地獄。
なんと一度降りて上に上がると人間性を喪失する呪いを付与されるのだと言う。
そんなに欲しいのか、お宝……と思ったが、彼らには別の目的があると察してこれ以上突っ込むのはやめた。
ここにいるのは全ての覚悟を決めてきた猛者だけだ。
俺がとやかく言う必要はない。
俺の事情にもとやかく言ってこないし、都合がいいと思って行動するしかねーな。
一層、二層は鹿児島のダンジョンと酷似していて悪魔/死霊系が豊富だった。ここでの俺は回避盾としての仕事を受け持つ。
盾は虹の盾しかないので受け止めることはしない。最悪即死攻撃を受けても、ピョン吉達がカバーしてくれるからな。
そして4階層で出会したのはヒュドラゾンビではなく、ワイトキングの群れだった。
キングなのに群れんなや! そう突っ込みたいが、向こうはモンスター名で規格化されており、仲間を呼べば同一個体が現れる都合上、キングなのに群れるという様相を呈していた。
「よい、しょお!」
ワイトキングは死霊系の上位存在だ。リッチとの共通点があるとするなら、それは憑依攻撃に他ならない。
ただし全方位から攻めてくるので俺は回避しながらゴールドボックスを盾がわりにぶん殴っていった。
もちろん虹の盾と併用してでの運用だ。
俺以外虹の盾は持ってないようなのでそりゃもう張り切ったさ。
それでも大所帯で行動してれば食料は尽きるわけで……
「有名人、一つ仕事を頼めるかい?」
「要件次第だな。お望みは?」
「人数分の非常食だ。装備は有り余ってるが、うちは大所帯だろ? 下に降りるにも備蓄は必要なのさ。金なら出す、一つ5万でどうだ?」
「高級非常食の半分か、悪くない。が、問題があるとすれば今まで入手したボックスのグレードが高すぎる。俺だとシルバーからでも高級を出すぞ?」
「そう言うと思ってアイアンを買い込んである。ベイコ、出してくれ」
「う、うん」
確かこの子は、エイブラハムさんとお話し中に市場に買い物に出かけてた子だよな?
それが示し合わせたように10個のアイアンボックスを取り出した。当然のようにマジックボックス持ち。
Bランク探索者の荷物持ちなら当然って感じか?
一つ5万で、鍵はなし。俺としちゃシルバーでも回避で間に合った。そしてアイアンなら余裕で乗り越えられる。
<飯狗頼忠はアイアンボックスを開けた>
トラップ発動!
複数のダーツが飯狗頼忠を襲う!
飯狗頼忠は華麗に回避した!
ミス、飯狗頼忠はダメージを受けない!
ミス、飯狗頼忠はダメージを受けない!
ミス、飯狗頼忠はダメージを受けない!
<+1発動!>
猛毒が周囲に巻き起こる!
飯狗頼忠は華麗に回避した!
ミス、飯狗頼忠はダメージを受けない!
ミス、飯狗頼忠はダメージを受けない!
ミス、飯狗頼忠はダメージを受けない!
<アイアンボックスの試練を乗り越えた>
<オーバートラップクリアボーナス!>
非常食を手に入れた
非常食を手に入れた
非常食を手に入れた
非常食を手に入れた
<+5発動!>
非常食を手に入れた
非常食を手に入れた
非常食を手に入れた
非常食を手に入れた
非常食を手に入れた
非常食を手に入れた
非常食を手に入れた
非常食を手に入れた
非常食を手に入れた
非常食を手に入れた
非常食を手に入れた
非常食を手に入れた
非常食を手に入れた
非常食を手に入れた
非常食を手に入れた
非常食を手に入れた
非常食を手に入れた
非常食を手に入れた
非常食を手に入れた
非常食を手に入れた
なんだ!? 何が起きた?
まさか俺のスキルは自分が開けたトラップの方にも作用するのか?
もちろん余裕で回避したが、それを乗り越えた時のドロップ率がおかしい。
普通であれば宝箱から一つにつき一つ。
これが常識だ。
だが高い幸運による回避での対処法は、さらにドロップを吐き出させる仕掛けがあった?
たった一個の開錠で、手元には25個の非常食。
30人居る団体全てに回しきれないが、目の前には解錠可能なボックスが9個。
おいおい、俺の【+1】は新たな発展を遂げちまったようだなぁ?
俺は一個当たり10円程度のアイアンボックスから、125万相当のアイテムを生み出す術を得ていた。
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