第8話 歴史の改竄
今日は、
ご
わざわざ、集まる必要あるのかね。
読むだけなら、
こんなご
書類だって、プリントアウトせずに、メールで送れば良いのにさ。
そうすれば、会議室を貸し切る金も、印刷代も時間も、
頭のお堅いオッサン達は、なんで集まりたがるのかねぇ。
直接会って、仲良しこよしでキャッキャウフフしたいって、お年頃でもないでしょ?
え? もしかして、いい年こいたオッサン同士で、キャッキャウフフしたいの?
正直、ドン引きなんだけど。
俺は、ハゲ散らかった脂ギッシュなオッサン達と、話すことなんて何もない。
こんな時間があったら、フェリックスを愛でてる方が、よっぽど
人間って、ホント理解出来ない生き物だわ。
無駄に長い報告会と会議が終わると、執務室へ戻って
人間を滅ぼすとはいえ、仕事はちゃんとこなす。
国王を
ここまで
仕事が終わり、
ふ~……やれやれ。
今日も、良く働いたぜ。
さぁて、ここからがお楽しみの時間。
フェリックスへのお土産を、たくさん買って帰ろう。
何をあげたら、フェリックスは喜ぶかな。
あの子、無欲だからなぁ。
『あのね、ボクね、お兄しゃん達とわんわんがいれば、何もいらにゃいよ』
フェリックスの言葉を思い出す度に、顔の筋肉がゆるんでしまう。
普通、あのくらいの子供って、全然言うこと聞かないんだよ。
お菓子売り場やオモチャ売り場で、ビービーギャン泣きしている幼児を良く見える。
フェリックスも良く泣くけど、声を出さずに静かに泣くんだ。
しかも、ワガママひとつ言わない。
良い子ちゃんすぎて、ちょっと怖いんだよね。
アーロンが「親が
きっと、フェリックスは心に大きな闇を抱えている。
甘えたさんなのも、愛情に
これからは、ありったけの愛で、うんと愛して幸せにしてやりたい。
フェリックスの為なら、なんでも惜しまず買い与えよう。
まずは、服かな。
今は、アーロンのTシャツを着てるんだよね。
アーロンは、「わらすなんざ、すぐ大きくなんべ」とか言うけど。
今しか着られない可愛い服を着せたいのが、親心ってもんじゃん。
って言うか、俺が可愛い服を着せたいっ!
子供服売り場で、フェリックスの服を選ぶ。
子供服って可愛いから、どれも欲しくなっちゃう。
フェリックスは、可愛いからなんでも似合いそう。
着ぐるみパジャマは、絶対欲しい。
気付けば、買い物カゴがいっぱいになっていた。
そういえば、フェリックスって、何歳なのかな。
体の大きさから考えると、三歳児ぐらいか?
いや……でも、子供らしくないガリガリの体型なんだよね。
四歳か、それ以上の可能性もある。
服を選んでいると、オバサンの店員がにこやかに声を掛けてくる。
「何か、お探しですか?」
「ええ、まぁ。フェリックスの……」
作り笑いで応えると、店員の顔がピシリと固まった。
「お、お客様……今、なんと……?」
「え? 何が?」
俺は分からずに、聞き返した。
店員から笑顔が消え、小声でヒソヒソと言う。
「今、何か名前のようなものを、おっしゃいませんでした?」
「名前のようなものって、フェリックス?」
「……ちょっと、こちらへ」
やけに神妙な顔つきで、店の奥へ連れて行かれた。
オッサンの店長が現れて、椅子に座るようにうながされて、素直に座った。
俺が「フェリックス」にまつわる(関係や縁がある)話を知らないと見るや、店長が重々しい口調で、話し始めた。
かつて、この街には、「フェリックス」という名前の男の子がいた。
フェリックスは、人間でありながら「
「無能力の子」と呼ばれるようになり、
同時に、「フェリックス」は
同じ名前を持つ人間は、改名したそうだ。
ある日突然、「無能力の子」がいなくなった。
噂によると、森に
街の人々は「魔女が無能力の子を喰ってくれて、
そして、「無能力の子なんて、元から存在しなかった」ことにしたのだという。
その話を聞いて、怒りに震えた。
なんだよそれ。
フェリックスは、何も悪くないじゃん。
「奇跡の力」を持っていなかっただけで忌み嫌うなんて、意味が分からない。
それに、アーロンが人間なんか喰うワケねぇだろ。
あんなに可愛い子供が死んだことを喜ぶなんて、正気じゃない。
フェリックスは今も生きているのに、なかったことにするな。
また「歴史の
現在と過去と未来は、ひとつに
歴史を、なかったことには出来ない。
なんで人間は、自分達にとって
やっぱり、
「人間」が忌み嫌う「無能力の子」と、うちのフェリックスが同一人物とは限らない。
だって、うちのフェリックスは、つい最近、俺が名付けた。
俺が、名付け親なんだからなっ!
確かに、フェリックスが「奇跡の力」を使っているところを、見たことはない。
名前を聞いた時、黙って首を横に振った。
「フェリックス」は忌み言葉になったから、口に出すことが出来なかったんだ。
「魔女に食べられた」って噂も、真っ赤なウソ。
「森で落ちていたのを、拾った」と、魔女本人が
街の人間全員で、フェリックスを街から追放したんだ。
う~む……ここまで
フェリックスは、人間達が忌み嫌う「無能力の子」なんだ。
「奇跡の力」を持ってないんなら「ヒト」じゃん。
「人間」は、ヒトの
恐らく、フェリックスは魔の者の
なんらかの
恐らく、フェリックスは
もしくは、偉大なる作曲家「フェリックス・ブロック」の生まれ変わり。
だって、あんなに素晴らしい歌を唄えるんだもん。
きっと、そうに違いない。
心から尊敬していた、あの天才作曲家に再び会えるなんて!
しかも、めっちゃ可愛い幼児から育てられるなんて、最高の喜びだっ!
将来は「フェリックス・ブロック」を、
そうと分かれば、俺がフェリックス・ブロックの音楽を教えてやろう。
「
よし! さっそく、オモチャのピアノを買ってこようっ!
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