ピンクモンスター~六本木で本当にあった、ある意味普通に怖い話~
月本 招
ピンクモンスター
俺の名前は
もちろん偽名だ。
これは今から数年前のお話。
当時の俺はたまたま会社の業績が良かったと言うこともあり、同世代の中では羽振りが良かった時期であった。
まぁ、今はさっぱりなので本当に当時はたまたまの1人バブル状態だったのだが、頭が鳥以下の俺を勘違いさせるには十分な状況だったようで。
あの頃の俺は仕事が上手くいっていることを自分の力だと思い込み、それならばもっと高いステージで勝負してやろうとイキっていたのであった。
そう、独立。つまりは起業である。
青年実業家。ベンチャー企業の社長。
甘美な響きだ。
そうなれば周りにも綺麗な女の子が群がってくるに違いない。
そういう連中ってば、夜な夜な怪しいパーティとかやってるらしいし、会社の業績が伸びれば大金が集まってくる。
男のロマンがそこにはあると思っていた。
*
ある日、俺は異業種交流会なるものに友人から誘われた。
それは文字通り、様々な業種の人たちが集まって情報交換をしながら親睦を深めると言う、表向きは健全に見える会である。
「それってなんか怪しくねーか? カルト宗教とかネットワークビジネスとかに勧誘されんじゃねーの?」
俺は思ったことを素直に口にした。
すると友人は、
「大丈夫だって。この間行ってきたんだけど、とりあえず名刺をばら撒いて、話が合いそうな人と酒を飲みながら歓談するみたいな感じだったし」
と、全く持って当たり障りのない返答をしてきたのだった。
でもまぁ、ぶっちゃけ今後のことを考えるのなら人脈は欲しい。
それに、もしおかしなことに巻き込まれそうになったら全力で逃げれば大抵は振り切れるだろう(俺は元陸上部なのだ)。
そう思った俺は、友人からの誘いを受け、異業種交流会なるものに参加することにした。
場所は東京の銀座。
そう、あの銀座である。
最寄り駅は東銀座で、そこから歩いて数分のところにその会場はあった。
その会で俺はある人物と出会うことになる。
それが、
陣哉は今、銀座のレストランバーで店長をやっているのだと言う。
「へぇ、月本さんってweb関係で独立を考えてるんですか? それなら俺、いい人知ってますよ。今度紹介しましょうか?」
……コイツってば、めちゃくちゃ怪しい。
陣哉は元ホストで、見た目もきつめのパーマを当てて、さらに綺麗に整えられた口髭付きである。肌は日サロにでも通っているのか一昔前のAV男優のように黒く、スーツ姿ではあるが、パリッとしたシャツの第二ボタンまで大きく開いた間からチラチラ目に入ってくる、バキバキに鍛えられている身体も怪しさを倍増させていた。
しかし、なぜか俺はこの陣哉とウマが合ってしまい、結局その日は朝まで飲み明かすことになってしまうのだから、世の中わからないものである。
陣哉は俺の2つ年下だった。そのせいか、俺にはずっと敬語を使ってくる。
店長をしていると言う銀座のレストランバーにも何度も足を運んだ。
陣哉の方も俺によく連絡をしてきて、俺の家にも彼女を連れてしょっちゅう遊びに来るほどだった。
仕事に対して前向き。熱い気持ちを持って店を良くするために一生懸命に取り組んでいる。見た目こそ怪しいが、その若さでこんな立派なレストランバーの店長を務めあげているなんて、実際大したものだと思い始めていた。
一方、俺はその少し前からブログを始めていた。
ブログと言えば……みたいな、あの大手ブログである。
実は俺はそのブログで、半年くらいカテゴリの1位を取っていた時期があった。まぁ、カテゴリの1位であり、全体の1位ではないのだからそれほどのことではないけれど、文章が書くことが好きなのは、おそらくその頃書いていたブログの影響も大きいと思う。
ブログには毎日沢山のコメントがつけられていた。もちろんありがたいことなのだが、あまりにも数が多すぎたため、返信はままならなかった。
昼間はずっと仕事。夜遅くに帰ってきてはブログ。そしてたまの休みには友人と飲みに行くような生活が半年ほど続いていた。
その頃は毎日一杯いっぱいで、一番欲しいと願っていたのはお金や女性にモテるとかよりも時間であった。
時間が欲しい。時間があれば今の俺なら何だってできる。そんな風にガチで思っていたのだから、今思えば頭に虫でも湧いているとしか思えない。
気づけば陣哉ともしばらく会っていなかった。
ただ、忙しすぎたので実際は大して気にも留めていなかったのだが。
そんな俺に陣哉から連絡があったのは、最後に会ってから半年が過ぎた頃だった。
「月本くん、お久しぶりです! 忙しくて全然連絡できてなかったですけど、報告がありまして。実は今月から六本木のレストランバーで店長やってるんですよ」
おいおい、今度は六本木だと?
相変わらずフットワークが軽いと言うか、面白そうなところに足が向かうのはコイツの長所でもあり短所でもある気がする。
俺 :六本木? じゃあ、銀座のバーは辞めたのか?
陣哉:あー、あっちは後輩に任せてきました。よかったらまた向こうにも顔を出してやってください
俺 :んーわかった、そのうち顔出すわ。で、今日はどうした?
陣哉:そうそう、月本くんって来週の金曜って夜空いてます?
ははーん、今度は六本木に顔を出せと言う訳か。俺だって忙しい身。そんなホイホイとは行かねぇ――
陣哉:その日、女の子が二人、店に遊びに来るんですよ。一人は芸能事務所に所属している来年デビュー予定のタレントの卵で、もう一人は○○(会社名)の秘書って言ってたかな
俺 :!? ほほぅ、もう少し詳しく聞かせてもらおうじゃないか
案の定と言うべきか、俺は陣哉の誘いに乗り、女の子が来ると言う日に合わせて六本木の店に行くことになった。
ちなみに俺はどうも六本木は苦手である。同じ港区なら断然新橋派だ。それでも目の前のニンジンが美味しそうに見えたので、その日は鼻息荒く六本木の陣哉の店に向かったのであった。
時間は夜の9時を少し回っていたところだった。
六本木の芋洗坂にあるその店は銀座の店よりも更に広く、ドラマの中に出てきそうなお洒落な空間だった。間接照明による効果だろうか、赤と黒が基調の店内に怪しさと温かみを同時に与えているように見えた。
俺の来店に気づくと陣哉がすぐにやってきた。
「月本くん、今日はありがとうございます! 女の子はもうすぐ来ると思うので先に飲んでましょう」
そう言って8人掛けの店内のメインのようなテーブルに俺を案内した。
てか、場違い感が半端ない。
なんだここ?
どうして俺はこんなところにいるんだっけ?
そんな思いが頭の中をぐるぐると駆け巡るが、ここまで来たら後には引けない。とりあえずは流れに身を任せてみるか。
メニューを見ると、ドリンク一杯の平均が2,000円ほどであった。
てか、たっけーな!
うちの近くのバーの倍以上するんじゃねぇかこれ。
「ドリンクどうします?」
「え、あぁ。じゃあビールで」
メニューを見てビビった俺は、比較的値段の安かったビールを注文した。
それから15分ほど経った時、陣哉のスマホの着信が鳴った。おそらく女の子二人組からだろう。さて、来年デビューのタレントさん。デビュー前に俺と仲良くなろうじゃないか。ヌフフのフ。
「こんばんはー」
入口の方から声がする。
「お待ちしていましたー!」と、振り返るとそこには……
全身をどぎついショッキングピンクでコーディネートした、見るからにヤバそうな女が立っていた。
「あががが……」
え? ちょ……何この人?
ウソでしょ?
こんな格好で家から出てきたの?
一人で電車に乗ってきたの?
だって、服だけじゃなくて髪もカバンも爪も目(カラコン)も口紅もピンクじゃん!
この人、肌以外全部ピンクなんですけどぉぉぉ(泣)
未だかつて、こんなにイカれた見た目をした女を見たのは初めてである。
視界に入った瞬間に一撃で思考停止に追い込まれた。
「あーた、どーしたん?」
ピンクが俺に何かを言っている。どうやらギリ日本語のようだ。
言葉を聞き取れた事実に胸をなでおろす。
「あ、あぁ、何でもない。とりあえず座んなよ」
そう絞り出すだけで精一杯だった。ピンクとその後ろから申し訳なさそうについて来ていた秘書がテーブルを挟んだ向こう側に座った。
ちなみに俺の正面はピンクである。
なんでお前がそこに座るんだよ!
と、理不尽に切れそうになるくらい、ピンクの存在は俺の何かを猛烈に刺激していた。
「あーしはマロン。よろしく~」
てか、お前マロンって言うのかよ!
そこはピンクじゃねぇのかよ!
てか、なんだよマロンって!
栗とその全身ピンクに関連性は一個もねぇじゃんか!
今すぐマロン(栗)に謝れ!
はぁはぁ……
俺は心の中でツッコみまくった。
いや、どれっだけツッコんでもツッコみ足りない。
それくらいピンク……いや、マロンの存在感は異次元であった。
ちなみにもう一人の秘書の子は、梨央と名乗った。
よかった、この子はまともそうである。秘書と言うだけあって、知的な雰囲気の美人さん。背も170㎝近くありそうな、スラリとした印象。
よし、この梨央ちゃんと仲良くなる! 合流してから2分も経たないうちに俺の目標は決まった。
しかし、邪魔なのはマロンである。
俺の正面にいるため、斜め向かいの梨央ちゃんに話しかけようにも、コイツが確実に会話を遮断しやがるのだ。
俺 :ねぇ、梨央ちゃんはこの辺りはよく来る――
マロン:六本木はあーしの庭だしー
俺 :……ねぇ、梨央ちゃんは休みの日は何して――
マロン:お買いものー
だーーー! うるせぇ!
お前に話しかけてねーよ!
大体、何だよマロンって!
そんな名前の日本人はいねーよ!(←普通にいると思う)
さっきからピンクが目に刺さって痛ぇんだよ!
……仕方がないのでちょっとだけ相手をしてみるか。
怪獣を懐柔できれば俺に有利な状況に持って行けるかもしれないし(←上手くも面白くもない)。
マロン:あーた、何してる人ー?
俺 :俺? 〇〇で働いてるサラリーマンだけど
マロン:えー? あーし、あーたんところの使ってるよー。スゲェーじゃん
俺 :そりゃどーも
マロン:でも、リーマンかぁ、なんかリーマンってショボいよねー
このピンク、全国6000万人(←適当)のサラリーマンをあっさり敵に回しやがった。てか、イチイチ上から目線でムカつくわ。
俺 :そういうアンタは何してる人だっけ?
マロン:あーしぃ? タレント〜
おいおい、オメーはまだデビュー前なんだろうが。それをあっさりタレントとか言い切りやがって。まぁ、芸能界とかって、こういう図太さも必要なのかもしれないが。
てか、マロンは不美人とまでは言わないが、別にルックスは普通だと思う。
その事務所はコイツを一体どのカテゴリで売り出そうとしているのだろう?
全く持って謎は深まるばかりだった。
そんな調子で、何の中身も伴わない無機質な時間は過ぎていった。
もちろん俺は陣哉をこっそりトイレに呼び出して席替えを提案するが、どうやらマロンの事務所の社長にこの店も世話になっているらしく、マロンの機嫌を損ねるような真似はできないということだった。
おいおい、何だそれ?
なんで俺があんな全身ピンクのご機嫌取りに協力しなきゃならねぇんだよ。
しかし堪えろ俺。これは後輩の門出祝いってヤツだ。
ここは心を無にして時が過ぎるのを待とうじゃないか。
この時点で俺は梨央と仲良くなることを諦めた。
なにせ、目の前にとんでもないモンスターがいるのだ。
それは見た目だけではない。
そもそも中身がイカれているからこそ、あの見た目をプライベートでやってのけるのだと言うことを思い知らされた時間でもあった。
とても俺なんかが太刀打ちできる相手ではないのは今までの会話からも明らか。
てか、コイツが芸能デビューとかって、世の中マジで狂ってやがる。
なんだかんだで飲み始めてから2時間が経った。
たまに席は外すものの、基本的には陣哉も一緒に4人で飲んでいた格好である。
「月本くん、どうします? この後、別の店に行くなら俺も店抜けて付き合いますけど」
行くわけねーじゃん!!
お前、この2時間、一体何を見ていたわけ?
こんな恐ろしいピンクモンスターを引き連れて別の店で二次会とか……正気か!?
完全に思考がイカれてんじゃん!
頭の中で散々ツッコんだ挙句、俺は静かに口を開いた。
「今日は帰るわ……」と。
「わかりましたー」
と、陣哉はカウンターの奥へ行き、スタッフと何やら会話をしていた。
その時、俺の視界には梨央が映っていた。
この子はいい子そうなのに、どうしてこんなピンクの友達なんてやっているんだろう?
どこに共通点があって一緒にいるんだろう?
二人の話も全然盛り上がってなさそうだし、どう考えても不釣り合いだと思うんだけど。
疑問は残る。
だが、それをこの場で解消することはもちろん叶わない。
すごくいい子そうなのに……仲良くなりたかったぜ。
後ろ髪を引かれる思いで会計を待っていると、陣哉が俺の元へとやってきた。
「月本くん、じゃあこれがお会計です」
「ん、あぁ。えっと……なににににに!!」
差し出された会計には、46,000円と書かれていた。
怒りにふるふると震える俺は、陣哉を店の外へと連れ出した。
「おいおい、何だこの会計はよ? 俺はビール2杯しか飲んでねーんだぞ! ここはぼったくりバーか!」
もちろん俺は猛抗議。何せ俺は、ビールを2杯とテーブルにだってサラダとナッツ類を頼んだくらいである(夕食後の合流だったので食べ物は少なめだった)。
陣哉:いや、だって4人分ですし(あっさり)
俺 :はぁーーーッ!? 聞いてねぇし!
てか、歯を食いしばって女2人(特にピンク)の分は出したとしても、なにお前(陣哉)は当たり前のように人の金でガブガブ飲んでんだよ!
大体、それにしたって高すぎるだろうが!
行ってもせいぜいその半分くらいじゃねーんか!?
陣哉:でも女の子たちのタクシー代も込みなんで(あっさり)
俺 :はぁーーーッ!? 何で俺があのピンクのタクシー代を払わなきゃならねーんだよ!
てか、だったら最初から言えよ!
陣哉:そんなこと言われてもウチらの界隈じゃこのシステムが常識なんですって
俺 :オメーんとこの常識なんて知らねーっての!
話は平行線のままである。
もちろん俺は自分の意見が正しいと思って主張をしているが、陣哉には悪気がないところが厄介である。
そう、コイツも「成り上がり思考」と言う名のモンスターだったのだ。
豊富な人脈を駆使して店に客として招き、店の中でマッチングさせる。そして、社長連中や人脈のありそうな連中に恩を売って気に入られて大都会で成り上がっていくのがコイツの野望と言ったところか。
男同士の組み合わせの場合は人脈構築や情報交換の場として提供するようだが、今回のような男と女の組み合わせの場合、女の方は自動的でタク代付きで飲めると言うことになっているらしく、その誘い文句で女の子を店に呼び、さらに女の子目当ての男(今回の俺みたいなやつ)を呼ぶという仕組みのようだった。
しかし、俺はただ「女の子が店に来るからどうですか?」と誘われただけで事前に何も知らされていない。俺の友達の何人かも同じ手口で店に呼ばれたと言うことが後々発覚した。
お前ら……悲しいくらいにあっさり釣られやがって(俺もだけど)。
合コンならいざ知らず、店の中で飲む度に同席した女のタクシー代まで請求されたら、特に俺のような一介のサラリーマンはたまったものではない。
当然ながらこの強引なやり方は俺たちの反感を買い、俺と陣哉の共通の知り合い連中もクモの子を散らすように消えていった。
が、その日、俺は結局払うことにした。
散々陣哉に説教をしたのだが、暖簾に腕押し、糠に釘、柳に風の如く、コイツには何を言っても響かない。
猛烈にバカバカしいとは思ったものの、少なくとも梨央にはせっかく来てもらった感謝の気持ちがあったし、そんな彼女を待たせてこれ以上揉めるのは申し訳ない気もしていた。
それに、当時の俺は収入はそれなりにあったので、この金を払って陣哉とはすっぱりと縁を切ってやろうと思ったのだ。こんな騙し討ちみたいなことをするヤツとはさすがに絡もうと思えなくなっていたし。
陣哉の分まで払う羽目になったのは全く持って腹落ちしないのだが、自分と女二人とそのタクシー代に、そして陣哉への餞別と思ってその場は無理やり自分を納得させた。
ちなみに、今現在の俺がこの金額を吹っ掛けられたら死活問題になるため大揉めである。
だって、普通の庶民なんだもの(泣)
「わかったよ。オメーへの餞別だ。全額きっちり払ってやる。でも、1つどうしても腑に落ちねーんだけど、タクシー代っていつもこんなに高いんか?」
それでも精一杯怒りを抑えて俺が言うと、陣哉は一切悪びれた様子もなく、笑みを浮かべて言った。
「ウチは良心的なんで女の子に合わせてますよ。マロンが川越に住んでるから深夜料金で2万は持たせてやらないと。秘書の子は都内だったと思うんで5,000円で」
「……」
てか、あのピンク、川越に住んでんのか!
普通に埼玉じゃねーか!
六本木が庭とかほざいてんじゃねーよ!
何だかもうツッコむのも疲れた。。
手持ちが足りなかったのでカードで支払い、メンタルをボロボロにされたためか、電車に乗る気力すらなく、その日は結局俺もタクシーで帰った。
家についた頃には日が変わっていた。
顔をバシャバシャと洗い、タオルで適当に拭くと、俺はテーブルの上に無造作に置かれたノートPCを開いた。
「クククク……俺をナメんじゃねーぞ! あのピンク女と陣哉め、この恨み晴らさでおくべきかぁー!」
小さな復讐の開始である。
俺はブログにさっきの出来事を書き殴った。
もちろん固有名詞等は一切使わなかったけど、読む人が読んだらわかるかもしれない。
何せ全身ショッキングピンクで固めた六本木をうろついている女なんて、マロンくらいのものだろう。
ただ、小心者の俺は一応ブログ内のメンバー限定公開にしたのであった。
ブログに思いの丈を吐き出すと、俺は気絶したように眠りに落ちた。
起きたのは昼過ぎで、腹が減ったので適当なカップラーメンを取り出して湯を注ぎ、待っている間にPCを開いた。
「あれ? メッセージが来てるじゃん。まさか本人にバレたとか?」
ちょっとドキドキしながら俺はブログに個別で来ていたメッセージを開いた。
すると、そこには驚くべき人物からメッセージが届いていた。
――――――
梨央です。
さっき家に着いて、月本さんがブログをされているとおっしゃっていたので、探したらそれらしき人を見つけたのでメンバーに登録して読ませていただきました。
今日(昨日)は本当にごめんなさい。
あの会は私も急に陣哉さんから呼ばれて、マロンちゃんとも初めて会ったので、どういう会なのか全然わかっていなかったのですが、月本さんのブログで理解できました。
月本さんが怒るのも当然だと思います。
もう私も陣哉さんから連絡が来ても行くことはありません。
~中略~
もし月本さんが嫌でなければ、もう一度お会いできませんか?
今度は私にご馳走させてください。
梨央
――――――
マジ?
読者もウソだろ? と思っているかもしれないが、これはマジである。
てか、あの時の俺ってばブログやってることを言ってたのか。
ナイスだあの時の俺よ!
ファインプレー過ぎる!
それにしても、わざわざブログ内を探して見つけてくれたってことだよな。
カテゴリのランキング1位にいたから見つけやすかったのかも。
ブログ頑張ってきてよかったぁ(しみじみ)。
俺は長身美女の秘書、梨央と後日銀座に飲みに行く約束をした。
銀座は会社からも結構近く、実は割と庶民的な値段で頑張っている店もあるため、そこまで高くないお財布に優しい店を予約した。
梨央は自分が払うと言っていたがもちろんそんなことはさせられない。
感謝しているのは俺の方なのだから。
そうして俺と梨央はめでたく結ばれた……なんてことはもちろんなく、何度か飲みには行ったのだが、俺が酔った勢いで陣哉とマロンの文句を言っていたら呆れられてしまったようである。
今思えば逃がした魚は大きい。
もう二度と会えないと思うけど、梨央はいい子だった。
幸せに過ごしてくれていたらいいのになと思う。
それにしても、未だにこれだけ鮮明に覚えているんだから、マロンのインパクトたるや思い返すだけで恐ろしいぜ。
ちなみにだが、俺は今でもサラリーマン。毎日社畜として会社のために身を粉にして働いている。
タイミングを逃したってのもあるかもしれないけど、俺には起業なんてまだ早いってことだったのかもしれないな。
そして陣哉の後日談。
怒りが収まらず、また被害の拡大を防ぎたいと思った俺は、陣哉と接点のある共通の友達を急遽LINEグループに集めて、事の成り行きを伝えた。
ほとんどのヤツは俺と同様に怒りを覚え、
「アイツって最初から怪しいと思ってたんだよなー。教えてくれてありがとう」
みたいな反応だったけど、すでに起業をしてお金に余裕のあるヤツらは、
「面白そうだから一度行ってみる!」
と言って、自ら陣哉に連絡を取って実際に店に行って体験してきたらしい。
そこでもピンクモンスターことマロンが出てきたみたいで、後でブーブー文句を言っていたが(だから言わんこっちゃない)。
結果、陣哉の六本木の店は半年も持たずに畳むことになり、もちろん系列店からもクビ。
ヤツは周囲の信用を完全に失った挙句、銀座の店に戻ることも叶わず、その後何年か東京で奮闘していたようだが、最後は多額の借金を背負って田舎に帰ったと言う話を人伝に聞いた。
悪気があろうとなかろうと、そもそも人を利用して成り上がろうなんて考えが甘いのだ。
もちろん自業自得である。誰も助けてくれなかった事実こそが、陣哉がやってきたことの証明だ。
まだ若いのだから、まっとうに頑張っている人たちに心の中で詫びて、一からやり直すのがいいだろう。
というワケで、これが俺が六本木で出会ったピンクモンスターことマロンの話。
甘い誘いには気をつけようって教訓には……ならないか。
※念のため、この話に出てくる名前は全て仮名だよ
※マロンがその後、本当に芸能デビューしたかどうかは知りません
――――――
作者の月本です。
最後までお読みいただきありがとうございました!
本作はいかがでしたでしょうか?
もしよかったら、
★:まずます ★★:楽しめた ★★★:面白かった
くらいの基準で星レビューを付けていっていただけると嬉しいです(,,>᎑<,,)
今後も短編は公開しようと思いますので、月本のフォローもぜひよろしくお願いします!
コメントもお気軽に残していただければありがたいです!
また次作でお会いしましょう(*^-^*)
ピンクモンスター~六本木で本当にあった、ある意味普通に怖い話~ 月本 招 @tsukimoto_maneki
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