第13話 コックリさん(ホラー)1
『コックリさん』という言葉を、聞いたことがあるだろうか。
ほとんどの人は学生時代に聞いたり、中には実際にやった事があるという人もいるだろう。
コックリさんとは、『
そして、狐などの霊にお告げを聞くという、降霊の儀式のことだ。
儀式が成功すれば、指を乗せたコインが勝手に動くらしい。
——ただ、遊び半分でやったり失敗すると呪われる、と言われている。
中学3年生の頃、私は図書委員だった。
放課後の委員会が終わった後、自分の荷物を取りに行こうと、薄暗くなった廊下を歩いていた。外で部活をしている生徒達はいるが、校舎の中はもう人けがない。
廊下を歩いていると、自分の足音だけが響く。
私は委員会の中に仲が良い人はいなかったので、さっさと図書室を出て、1人で教室に向かって歩いていた。すると、自分の教室がある階に差し掛かった所で、突然——
ドン! っと後ろから押され、ふらついた。
しかし、そこには誰もいなかった。
普通なら不思議に思うかも知れないが、私は、
——あぁ、いつものアレか。と思い当たり、ため息をついた。
学校の中には、普通の目には見えない何かが、たくさんうろついていて、不意に触れてしまったり、何かが手足に掴まってきたりする事は珍しくはなかった。
別に何かがいたとしても、そのほとんどは特に害はない。
ただ、そこにいるだけだ。
人間側が興味を持ったり、寄せ付けるような行動さえしなければ、何の問題もない。
——それにしても、さっきぶつかってきた奴は荒っぽい奴だな。と思った。
身体がないのだから、そのまま通り過ぎればいいだけなのに、わざわざ邪魔だと言わんばかりにぶつかって来た。友人に、ふざけて背中を思いっきり叩かれた時と同じくらい、鈍い痛みが残っている。
私は普段、人ならざるものを避けて生活しているので、恨みを買うような覚えはない。多少何かされても、完全に無視するようにしている。
わざとぶつかられて、痛い思いをする
ただ、腹を立てたところで、目の前に怒りをぶつける相手はいないので私は諦め、背中を押さえながら教室へ向かった。
そして教室の前まで行くと、中がざわついているのに気が付いて、足が止まった。遅い時間で、もう誰もいないはずだったのに、なぜ……。
不思議に思って聞き耳を立てると、女生徒が数人で話をしているような声が聞こえる。
——中にいるのが女子だけで、しかも内緒話なんかしていたら、ちょっと入りづらいな……。私は考え込んだ。
それでも、教室の中に荷物が置きっぱなしだったので、このまま帰るわけにもいかない。私は少しだけ扉を開けて、中の様子を窺った。
すると、同じクラスの女生徒4人が、机を取り囲んで何やらヒソヒソと話をしている。
——悪口大会とかだったら嫌だな。
そう思いながら聞いていると、
「〇〇君の好きな人は誰ですか?」
と聞こえた。
私はその言葉で、コックリさんをやっているんだな、と気が付いた。
——うわぁ、最悪……。肩に力が入る。
目に見えないものを視ようとして、意識を集中させる人が集まると、自分まで感覚が鋭くなる気がして、嫌だった。だから友人たちが肝試しに行くと言い出すと、適当な理由をつけてはいつも逃げているのに……。
——勘弁してくれよ、と思った。
どうやら教室の中がざわついているように感じるのは、人間がいるからではないようだ。普通の目には見えない、人ならざるもの達が集まっているからだ。
私は、教室の中に目を凝らした。
すると、やはりあちこちで影が
私には、そこにいるもの全てが視えるわけではないがそれでも、うっすらとした影のようなものが何体もいるのが分かった。
そのほとんどは、ぼんやりとした感じに視えていて、背景と同化しているものは、ただそこにいるだけで存在感が薄い、害のないものだ。小さくてフワフワと浮いているものも、特に何もしてこない。
ただ、コックリさんなんてやっている所為か、教室の中には力が強そうな、嫌な気配も感じる。
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