第6話 小学校の七不思議Ⅰ(ホラー)前編

 どこの学校にもある七不思議。


 私が通っていた小学校では、


1:トイレの花子さん

2:血の涙を流すモーツァルト

3:勝手に鳴り出すピアノ

4:動く金次郎さん

5:死ぬ時の姿が映る大鏡

6:プールで足を引っ張る手

7:開かずの間の8段目の階段


 という七不思議があった。


 学校によって少しずつ違うようだが、おそらく似たり寄ったりで、信憑性しんぴょうせいの低い話が多い。ちなみに、動く人体模型も有名な話らしいが、私の通っていた小学校には、人体模型がなかった。田舎なので、そんなものだ。


 そして、その代わりにあったのが、オリジナルの『死ぬ時の姿が映る大鏡』なのだと思う。


 私は人ならざるものが、事はあっても、


 それでも、小学校に通っていた6年間には色々な体験をした。きっとそれは、七不思議が好きな友人のせいでもあり、私は彼に七不思議について調べるのを手伝わされていたのだ。


 ただし、私に霊感があることを、友人たちは知らない。


 母に事あるごとに「言ってはいけない」と言われていたのもあるが、知られてしまうとろくな事がないので、子供の頃から必死に隠してきた。それなのに、七不思議が好き、なんていう厄介な友人が同じクラスにいたのだ。本当に私はついてない。



 まず2番目の『血の涙を流すモーツァルト』


 これは、文字通り絵のモーツァルトの目から、血の涙が流れるというものだった。しかし、絵自体に何かが取り憑いている感じはしなかった。


 それに、血の涙が流れているのを見たことはない。



 次に、同じ音楽室の七不思議で、3番の『勝手に鳴り出すピアノ』


 これは、たしかにピアノの椅子に何かが座っているのは、視えたことがある。


 しかし、ずっとそこにいる感じのものではなかった。身体が無くなってしまっても、ぶつかってきたり、物を落としたりするものもいるので、ピアノの鍵盤けんばんくらい押せても不思議はない。


 たまたま椅子に座って、音を出してみた。程度だろう。



 そして、4番の『動く金次郎さん』は、金次郎さん自体に何かを感じたことはない。もちろん、金次郎さんが動いているのも見たことはない。


 ただ、金次郎さんの足元に、透けて視える動物が寝そべっているのは何度か視たことがある。犬とか狸とか、それくらいの大きさのやつだ。


 あの動物達にとっては、居心地の良い場所なのだろう。



 5番の『死ぬ時の姿が映る大鏡』は、夕方に大鏡の前に立っていると、自分が死ぬ時の姿が映るというものだった。


 そして映ってしまうと、死ぬらしい。


 これは、鏡自体には何も感じなかったが、その横にあった階段があまり良い場所ではなかった。


 誰もいないのに、スリッパを履いた人間が歩くような音がしていたし、視えない何かにぶつかられたこともある。面倒臭そうにベタベタと歩く音は、霊感がないはずの同級生にも聞こえていたので、結構タチが悪い奴だと思う。


 霊感がない人には、普通なら音は聞こえないはずなので、力の強いものが、周りを威圧しながら歩いているのだろう。関わりたくないので、私はその階段は通らないようにしていた。


 そして、そのまま大鏡のある廊下に出ていく足音も、聞いたことがあった。もしかすると、そのが鏡の前を通った時に、霊感がある人が偶然視てしまったのかもしれない。


 そして出来たのが、『死ぬ時の姿が映る大鏡』なのだろう。



 最後の7番目『開かずの間の8段目の階段』


 これは、開かずの間の前にある7段しかないはずの階段が、8段ある時があり、8段目を踏んでしまうと、異世界に引き込まれる。というものだった。


 これも、階段の8段目があるのは見たことがない。ただ、夕方遅くまで学校にいた時に、うっすらとしか視えない人達がゾロゾロと階段を登って、開かずの間に入るのを視たことがある。


 開かずの間は、実は倉庫になっていて、先生と一緒に入ったことがあるが、嫌な感じはしていなかったし、何もいなかった。もしかしたらあの階段は、霊道のような感じなのかもしれない。


 霊道だと思ったのは、もう1つ理由がある。


 学校の裏山に幽霊が出るというのは、地元では結構有名な話だった。


 その場所と、開かずの間はほぼ同じ高さにあって、裏山から宙を歩いてくると、ちょうど階段を登って、開かずの間に入る位置関係になる。


 私と同じようにその光景を視てしまった人がいて、異世界に引き込まれる、という話が生まれたのだろう。

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