一年遅れの青春、僕も少しは手伝います。
大根の煮物
第1話 プロローグというかつかみ的なもの
──突然だけど人生には『転換点』、というものがある。
分かりやすいようにいくつか例を挙げてみよう。
身近なところで言うと例えば、大学受験。当事者達の就職先や年収が大まかに決まってその後の人生を左右するといっても過言じゃないイベント。
他には結婚とか。彼女もいない僕にはあまりピンとこない話だけど、普通であれば死が二人をわかつまで共同生活は続く(浮気とか離婚とかそういうのは一旦置いといて)。
もっと大袈裟な例であれば、寝坊したおかげで脱線事故やテロ事件に巻き込まれなかった、とか。母親を殺されたので巨人達を駆逐することを決めたとき、だったり。
自分で選んだにしろ、そうでないにしろ、結果的に取った行動や見たことによってその後の人生が
それが『転換点』。
勿論、今挙げた他にも人それぞれ世界で活躍するスポーツ選手にも、憧れのアイドルにも、なんなら隣の席の人にでも、幸か不幸か別にして人生の転換点というのは往々にしてあるもので。
それはどんなに「平々凡々」というのに相応しい人生を歩んできたこの僕ですらそうなのだ。
──
母親と年の離れた二人の弟と共に暮らす四人家族。少々複雑な家庭事情はありつつも、それ以外は特に不自由無く育つ。恥ずかしながら中学生の頃に少し反抗期的なものもあったけど今は更生しました。
時々母親に代わって小さい弟達の面倒を見てきたお陰か、育児スキルはそこらの新米パパより高い自信がある。まぁそのスキルが生かされる将来は今のところ来なさそうなんですけども()。
……ゴホンッ。スポーツ経験は小学生の頃は野球と水泳、中学では柔道部に所属してた。とまぁ、上辺だけ見れば大層なもんなんだけど、情熱を持って取り組んでいたわけでも、特別な才能があったわけでもない。それどころか中学の頃は自由度が増した分、度々サボっては好きなアニメのイベントや推しのサイン会に行っていた。……全部バレてたけど。ただ、部活自体は嫌いじゃなかったし、なんやかんや楽しかったので最後まで所属しつづけて引退した。振り返ってみて「結構クソじゃない?僕」とは思うけれど、今でも遊ぶくらいの仲間を得ることが出来たのだから良しとしよう。
そんでもって頭のできはそう悪いわけじゃなく、むしろそこそこ出来るほうでその自負もあったのだが、「せっかく高校行くなら、勉強じゃなくて青春しょっ!」的なことを受験1ヶ月前に思い立ち、結果レベルを少し落として地元の中堅高校……
その際、勉強出来る人とそうでない人で極端に別れていた中学校だったために、それまで親しく
そして一年経った現在……望んでいた青春とはほど遠いものの、片手で数えられるくらいの友人とその他諸々、そこそこ充実した毎日を過ごすことが出来ている。二年になってクラス替えが行われた
……今の話を聞いて「なんだよ。散々語っといてボッチじゃねぇのかよ。普通じゃん!」とか思ったヤツ。気持ちは分かる。自分でも改めて考えると「そんなに悪くないんじゃ……」とか思っちゃったし。だけど多少の意見があろうともこれくらいは許して欲しい。家と学校とバイト先を淡々と行き来する日々、味気の無い日常に数少ない友人達と趣味を語らうくらいは。
ちなみに趣味は読書。ラノベと漫画がほとんどで、ほんのたまに一般文学。これで読書が趣味と言っても良いのか甚だ疑問ではあるけど、本を読むのは大好き。本屋でバイトしてるのも本が安く買えるからだし。
特にCGノベルズから
まぁ僕がこうなるまでの経緯は色々あるんだけど、これは長くなるので今回は割愛。
……さてと、ここまでで僕、「鳴上仁」という人間の三割は説明し終えたことになる訳だけど(自分で言ってて心が痛い)、少しは理解して頂けただろうか。
素晴らしい「平々凡々」っぷりだったろうと思う。
磨き抜かれた「スポーツの才能」や「1000人に1人のイケメンフェイス」みたいな一目見て優れた
さりとて、そんな僕を取り巻く状況を積極的に変えようとしているのかと言われると全くそうではないわけで。むしろ、この何も起伏のない日常が変わってしまうことこそが怖いと思ってしまうあたり、僕という人間はどこまでいっても小市民なのである。情けない。
――でも、
「よろしくね、鳴上くん」
「んなっ!?」
最初にも言ったように人生の『転換点』というのは能動的にしろ、受動的にしろ、どんな人でも一度はあるわけで。
六月某日の放課後、喧騒混じる横浜駅地下街の本屋【有林堂】のスタッフ休憩室にて。
本日開催する『転生したらドラゴンだった件』のサイン会の
──遅れに遅れた僕の、『青春の
一年遅れの青春、僕も少しは手伝います。 大根の煮物 @DAIKONNONIMONO
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