第十世界・「ファイティング・カウントダウン」
────時刻は8時55分。場所は変わらず海底トンネル内にて。
更に忘れては行けないのが、この戦いは長期戦になってはならないということである。
あと数手でどちらかが勝利し、このトンネルから出なければならないのだ…でなければ、どちらも熱中症、脱水症状等でジワジワと死へ近づくことになってしまう。
この戦いのタイムリミットはあと『34分』…これは、
───ジリジリと熱気が漂う、薄暗いトンネル内。『
この緊迫した中、『
しかし
その刃同士の迫り合いは、野球ボールがバットに当たるような鋭い音を鳴らした。
攻撃をガードされた『
「まだ倒れてくれるなよチビ助…33分は斬り合えるんだからな!! ……行くぞ!『
『
しかしまた
『
その突き出し方は、右の鎌の後ろから…
これに
さらに『
そしてまた左…次は右…というように、左右の鎌を交互に突き出し、
4、5発当たると、
キャキンキャキンと刃どうしの擦れる音を鳴らしながら
息も乱さない目の前の『
「はぁ……はぁ……てか、息も乱さず2分も攻撃し続けるなんてまさに『化け物』って感じだな…だけど、アンタとのこの戦いでひとつ学んだよ。それは、『遅さは相手の判断を惑わせる』ってことだよ。」
すると
そうなると、当然一手速く『
「タイミングを間違えたなチビ助!! 俺の鎌はお前の腕を貫通させたァァァ!!!!」
しかし、これは
一瞬、『
鮮血がドボドボと流れ出る腕の断面を見つめながら、
「グッ…! やはり痛いな。お前もなかなかやりおる……しかし、あと28分…その時間内に終わらせるつもりだ…!!! …冥土の土産に見せてやろう…『真の斬撃』を…いずれ、お前も習得するかもしれん…『
『
その鎌からは、眩い光と共に凄まじい風圧が
キリキリと胸の辺りが痛み始める。さらにみるみるうちに、その箇所からジワリと出血を起こし始めた。
何が起きたのか理解のできない
『
「この技は『斬撃』の極意だ。素早く刃を振り、『斬撃のダメージを飛ばす』技…。それを『宙斬り』と呼ぶ。まだまだ行くぞ!!!」
『
種が解った
そしてその技を受けながらも学んで行く。
ガキンガキンと、刃は交じりあっていないのにも関わらず激しい音を鳴らし続ける。
5分の斬撃飛ばしの末、ついに、この飛ぶ斬撃を30発
そして同じように、見よう見まねで、『引っ掻くように』左側へフルスイングした。
正直、このほぼアドリブの行為に、ここにいる皆が出来るとは思っていなかった。しかし、その予想とは裏腹に、なんとその右腕から『斬撃』が前へ飛んだのだ。
ひとつ違う所があるとすれば、その斬撃は小さいながらも、引っ掻くように放ったため『斬撃の数は五つ』なのである。
咄嗟に
「お、おお…!!! 喰らえ『
ブーメランのように回転しながら進み続ける五つの斬撃は、『
この誰も思わぬ攻撃に
解剖され、頭部となった『
「……何をされたのか分からなかった。なんて学習スピードなんだ…見事…。おい、そこのトレンチコートの男よ…。耳を貸してくれ。」
そのかすれた声の呼びかけに
「……こやつは良い戦闘センスを持っている。お前は指導者か? もしそうなら是非アイツを強くしてくれ…そう誓ってくれ……!!!」
『
「聞いているのか!!」
『
「誓うか!? 誓うと言え!!!! このウスラボケ!!」
頭を掻きながら面倒くさそーに
「わ、わーったよ。誓いますよ誓います……ってかお前いつ死ぬんだよ…!!」
「俺は死んでも死なん!! …それよりお前ら、早くここを出ろ。あと15分くらいで熱中症で倒れるぞ。」
……『
トンネルの後ろ、つまり
「なぁ。この音って何か工事してるとか、換気扇の音とかじゃねぇよな…?」
ヴェントットは懐から水の入ったペットボトルを取り出して飲み干すと、腕を組み答えた。
「さぁな…俺にゃ検討持つかねぇサウンドだ…一体なんの音だ…?」
そのどんどん近づいてくる音の正体…それはしばらくすると判明した。
それは三人が見たことのあるものだった。
なんと、『四つん這いの白い巨大な赤ん坊』である。
「あれは『ミランダ・ド・ドウロ』か!!!」
ヴェントットが反応すると、聞き覚えのある声が聞こえた。
「よく覚えてたわね!! そう、この子は『ミランダ・ド・ドウロ・
その声の主は『
手を振りながら、四つん這いの赤ん坊の上で話始めた。
「よくも我を置いてけぼりにしたわね!! 結構寂しかったんだから…!! それはそうとここから出るわよ!! あんたらに着いてかないとただ討伐されるだけなんだから!! 早く乗りなさいよポンコツ!!!」
そして『
「この子ならあと三分で出口へ着くわ!! あと、我のことを『グング』って呼びなさいよ!! いちいちフルネームで呼ばれるのめんどくさいんだから…!」
───…ドシンドシンと重い足音を立てながら、出口へ全力疾走でハイハイする『ミランダ・ド・ドウロ』……その後ろ姿を見ながら一言、頭部だけとなった『
「悔しいが俺の負けだぜ……『あのお方』に顔見せ出来ねぇなら死んだ方がマシか…。」
灼熱漂うトンネルの中、血濡れのカマキリ頭は静かに息絶えたのだった。
異門の扉より。 9スケ @9suke
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