言い間違い

「ライラさぁん、髪の色少し暗くなりましたねぇ」いつも穏やか小田谷カナコさんがライラさんに話しかける。


「そう、昨日美容院で染めたの」


「白髪ってぇ、何本になったら白髪染めしたらいいんですかぁ。今朝、白髪見つけちゃってぇ、ショックなんですぅ」


ガコォッ!

ライラさんは壁を蹴った。


「あぁッ、ライラさぁん。どうしましたぁ?」


「白髪なんてまだ生えてないけど? 白髪染め? 私に聞いてるの?」


「えぇ? あぁッ! す、すみませぇん。アラフォー女性はぁ、みんな白髪染めだと思っててぇすみませぇん!」


「フンッ。イライラさせないでよ!」


ガチャ。ドアが開いた。


「おっと、今日はどうした?」社長だ。


「あ! 社長、聞いてくださいよ!」


「なんだ?」


「小田谷さんが私をさせるんです!」


シーン……

「「……えぇ?!」」社長と小田谷さんは驚いた。


「ハッ! 間違えた! 違うの、言い間違えたの!」ライラさんは、あたふたしている。


「らっ、ライラさぁん? 私のことそんなふうに見てたんですかぁ……」胸の前で腕を交差させる小田谷さん。


「違う違う! ムラムラとイライラ間違えたんだってば!」


「あっ、俺か! 俺に対してムラムラするのか!」社長は自分の顔を指差した。


「だから違うって!」


「社長ぉ、わたしぃ、ライラさんにムラムラさせてたみたいですぅ」


「困ったな。同じ部署じゃ毎日変な目で見られて大変だったろう」


「はいぃ」


「だから違うってば!」


「ライラさんは、異動な」


「え?」


ライラさんは遠方に異動になり、平和が訪れた。



おわり















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いつもイライラ苛井ライラさん2023 ながくらさゆき @sayuki-sayuki

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