探物屋の思うところ「翁長雅道の肖像画」

豆腐らーめん

第1話

探物屋の思う所


ep.1 翁長雅道の肖像画



〜🎶


〜🎶




.....もしもし?

あーはい。

間違い無いです。

探物ですよね。


はい。

はい。


人。

生きてたら、33歳。


居場所は、わからない。

7年前に死んだらしい、と聞いた。


はい。

問題ないです。


で、目的は?

はい。

なるほど。

ではまたその時に。


いえ。

問題ありません。

期限は...あーそういうこと。

では夏の間に。


まぁ、多分大丈夫なんじゃないですか?

うちのは、優秀ですから。


では、また連絡ください。

はい。


どうかお元気で。










埃っぽい事務所の机にはわざとらしく古雑誌が散乱している。


「いいか、こういうのは雰囲気が大事だ。お前たちの考えるような自分がどう見られたいか、なんてのはさておき。この机を見た時の相手の目を忘れるな。」


...そう言って片付けないこの店の店主の言われるがまま、今日まで蓄積したこの古雑誌だったが


「てめぇ...黙って聞いてりゃいい気になりやがって...バカにすんのも大概にしろ!

うちの犬が見つかったが返せない、だと?金払ってるのは俺だぞ?なぜ取り返してこない!」



ばさっ。


机を見た相手の目...

というか男の顔は怒張し、

3秒前には机の上にある古雑誌を跳ね除けたところだ。

机を挟んだソファに気だるげに座る男に、今飛び掛かろうかという、そんな姿勢を見せている。





「あぁ、、困った。


いや、ね。


元々あなたの犬、じゃないでしょう、あの子。

賭け事?


いや、それならまだましか.....酔っ払ってなん癖付けて、

奪った子犬を良くあんたあんな剣幕で駆け込んできましたよねぇ...」



見るからに怪しい、というか完全にラリっちゃってるこの男の客が来たのが1週間前。


「うちのシバが誘拐されたんです!」


と言って飛び込んできた時から僕と店主は顔を見合わせて、あぁ、こいつは断ろう。

と申し合わせたつもりだったが...



「えー!

わんちゃんが誘拐!?

これは一大事件ですよ!!

でも大丈夫!

私たち探物屋に任せてください!」



と、自称助手が宣ってしまったからややこしいことになっている。


ちなみに自称助手は、まだ来ていない。



「ガタガタうるせえなぁ...あのシバを取り返せないなら、本物みたいな芝生がついてる柴犬、捕まえてこいよ。」


「は??」


「だから、本物みたいな芝生がついてる柴犬、飼いてぇな、って。ここ、探し物屋、だろ?」



(...何言ってんだこの人)



「えーっと、、本物みたいな芝生がついてる、柴犬、ですか。



あーー......うん。はい。


わかりました。



そうしたら、1週間、もらえますか?」



「お、見つけてくれるってのか?」


「見つかるかどうかは、わかりませんが。探してみます。」


「ほぉー言ったな?見つけられなかった時は...どうするんだ?」


「いや、うちはあくまで、探し物屋です。

見つけ屋、じゃないんですよ。」


「はぁ?わけわかんねぇこと言いやがって。

ま、いいや。1週間後、また来るから。」


「はい。同じ時間、でお待ちしてます。」


「おう。頼んだぜ。」








「いいんですか?またわけわかんない依頼なんかうけて。」


「いやーまぁね。とりあえず帰ってもらうにはどうすれば...って」


「えっ?じゃあ何か見込みがあるわけじゃ...」


「あるわけないだろう...まぁ、探すだけ探すさ。」


「...そのうち殺されますよ」


「いやー...はは。まぁ、そうならないよう、頑張るさ」



「こんにちはー!!!

ってあれ?なんか元気ないですねぇ〜。

ダメですよーそんなんじゃ。

ほらほら、なんか雑誌も散らかってますし。

とりあえず、片付けといてください。

今、お茶入れますから。」


「...いや、みっちゃん。君のせいだから」


「えー??なにがですか??

あ、そうだ!

大福買ってきたんですよー豆大福!

先生、好きですよねー豆大福。


あ、そう!

豆と言えば豆柴!

豆柴の大群がいたんです!」


「えっ、豆大福!?

いや、ちがう。豆柴??」


「そう、豆柴の大群!!

駅前にいて、みんな気づいてなかったけど。」


「わかった!ちょっと行ってくる!!」


「え、そんなに好きなんですか〜?

先生もマニアックですねー

ってもう行っちゃった。」





「みっちゃん、念のために聞くけど、豆柴の大群って」


「ん?あーそうですよ、クロちゃんプロデュースの。ハナエモンスターが私服で歩いてたんです。」


「...やっぱり。先生、多分犬がたくさん居ると思ってるよ」


「えー?流石にそれはないんじゃ...だって、豆柴の大群なんて居たらパニックじゃないですか」


「まぁ、そうなんだけど。柴犬、見つけなきゃいけないんだよね。」


「え、あーあのワンちゃんのお客さんですか??」


「...そう。さっきまで居たんだよ。」


「ふむ。ちゃんと解決しました?」


「いや、、まぁそれは先生が戻ってきたら話そうか。」


「そうですねー。とりあえずお湯、沸かしてきます。」

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探物屋の思うところ「翁長雅道の肖像画」 豆腐らーめん @tofulament

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