負けヒロインその3。

 葉歌梨が去ってから、いろいろ調べて見た。


 保健室にも行った。


 服従ポーズもした。


 保健の先生はドン引きしていたが、調べてくれた。


 どうやら呪いの類いで間違いはないらしい。


 ただ祝福と呪いが表裏で合わさっているので、呪いの成分多めの祝福とも言えるのだと言う。


 なのでなかなか解呪が効かないそうだ。


 知識としては知っていたが、まさか呪われるなんて…


 しかも幼馴染に…そんなのまるで自称モブ系主人公フラグじゃないか。


 俺はそんななんかじゃない。そんなイベントなどレベル5では死ぬし、駄目だ。


 やはり退学しないと命と精神が保たないと葉歌梨を探しに出たが、途中勇者様に見つかり断念した。


 勇者からは逃げられないのだ。





 翌る日の放課後。


 俺は勇者様とダンジョンに潜っていた。



「ははははは、もろい、もろいよぉ、ゆうしゃからはにげられなーい。ははははは」


「それバレたら駄目って言ってただろ! それとちょっとずつ壊そう! な!」


「えー?」


「えーじゃない! 嫌われるぞ!」


「……わかった」


「あ…ほ、ほら、水あるから。休憩しよう」


「…うん…」



 俺は勇者様に宿の借りを何で返そうか悩んでいた。


 未だ方法は見つからないが、退学までには返したいと悩んでいた。


 ならばひとまず、勇者様の恋を応援することにした。


 あるいはそこまで行かずとも、仲違いの解消くらいはしてあげたいと思ったのだ。


 俺が観察した結果、勇者様はただ力とパッシブが鬼強いだけで、本人は割とまともだとわかった。


 あのマンモスサイコ女に比べれば誰もがマシでまともか。


 勇者様に詳しく聞けば、事あるごとにその幼馴染の男の子の骨を折っていたらしい。


 そして花純というもう一人の幼馴染が回復していたという。


 無自覚系暴力ヒロインによる鯖折りアタックか…化石染みてはいるが、王道だ。


 ならばと、まずはこの力の制御を身につけてもらうことにした。


 俺も死にたくないし。


 それに、勇者様の幼馴染も見直すと思ったのだ。



「ちょっといいか?」


「山田くん? なぁに?」


「あのさ、一度素手でやって見てくれないいか?」


「ステゴロ? いいよー」



 このダンジョンの初期階層で手に入る素材は壁と床と天井と骨しかない。


 だが、普通は骨しか手に入らない。


 すげぇぜ、勇者様。


 粉塵マスク買っててよかったぜ。


 DIYしてる気分だぜ。


 ちなみに俺の口調が砕けているのは勘弁してほしい。パッシブだけで骨が砕けそうで必死なのだ。





 今は勇者様の力の把握実験とも言えることを繰り返し行なっていた。



「んーやっぱり素手でも変わらないよ」


「いや、変わってる」



 俺はモノリスで勇者様を撮っていた。それをスローで再生し、壊す対象物、速度、打ち当たる瞬間など思いつく限りの事を観察していた。



「しかし…棍棒より威力があるな…つまり…」



 つまり、棍棒は枷なのか。レベルが低いのに、この攻撃力…パッシブはともかくとして、いくら勇者様とはいえ、おかしい。



「この棍棒は誰から?」


「? ママからだよ。それがどうしたの?」


「いや…」



 推測だが、これはおそらく先天的な…病気だろう。


 いや、祝福を受けた神子と言うべきか。



「ダンジョン出てからお母さんに連絡してくれないか?」


「うん。いいよ。何するの?」


「ちょっとした確認だよ」



 チート勇者か…


 幼馴染くんは、もしかしたら劣等感から…彼女を選ばなかったのかもしれないな。

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ひろゆきのダンジョん。 墨色 @Barmoral

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