第10話
移動中の宇宙船の船内でジャキは言った。
「この仕事ができれば、兄貴たちもマサムネを認めてくれるぞ」
「……はい」
マサムネは窓の外を眺めながら、生返事をする。
正直、ジャキの励ましの言葉は頭に入ってこなかったし、むしろ、煩わしかった。
マサムネはとにかく一人で考え事をした気分だった。
(マジでムカつくなあいつら)
地獄組の面々を思い返し、怒りで体が震える。普段の接し方もそうだが、都合の良いときだけ仲間扱いして、面倒ごとを押し付けてくることが許せなかった。
(もう我慢の限界だわ)
マサムネは決意した。この機会に、地獄組から逃げ出すことを。地獄組は裏切者に厳しいらしいが、襲われても返り討ちにする自信がある。また、この広い宇宙で自分を見つけることができるとも思わない。
「到着したぞ」
マサムネは目の前にある惑星を眺める。惑星『モブ』。高度な文明が発達しているから、逃げ出すには丁度いい場所だ。
宇宙船の発着場に着陸し、『ヘブンズ』の事務所まで移動する。ヘブンズの事務所は寂れたビル街にあった。ビルの影に姿を隠し、事務所の様子を伺う。怖い顔の男2人がビルの入り口前でタバコを吸いながら、目を光らせていた。
「どうだ? 行けそうか?」とジャキ。
「はい。大丈夫です」
「そうか」と言って、ジャキは励ますようにマサムネの肩に手を置いた。「いいか、マサムネ。ここが踏ん張りどころだ。ここで頑張れば、お前の明日は明るいぞ」
「……はい。それじゃあ」
マサムネは歩き出す。
そして、思った。
(ジャキさんも結局、あっち側の人なんだよな)
ジャキは励ますだけだった。どれほど自分が苦しんでいても、応援するだけで、それ以上のことをしてくれるわけではない。結局彼は、ただの第三者。彼と一緒にいても、苦しみから解放されることはない。
マサムネは男たちの前に立った。
「あぁん? 何だお前」
男たちに睨まれるも、マサムネは動じなかった。
(地獄組の連中とか、全員、不幸になればいい)
マサムネは不敵な笑みを浮かべ、男たちを見返す。
「あの、地獄組って知っていますか?」
「あ? 知っているが」
「そうですか。なら――」と言って、マサムネはジャキが隠れている物陰を指さした。「あそこに、地獄組の人間が隠れていますよ」
セルフ・ダークサイド・ムーブ~周りから評価されず、生きるのがしんどいので、クズになります~ 三口三大 @mi_gu_chi
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