官僚と陰陽師
程よく混んでいるバスの一番後ろの席に一人の男と少年二人が座っている。窓際の席の少年は車窓から見える景色を物珍しそうに眺めている。もう片方の少年は静かに文庫本を読んでいた。真ん中の男は明らかに不機嫌な顔をして腕組をしている。男の顔色は悪く、口を引き結び、窓際の少年の話を無視している。
「ねぇ、白夜、ほんと人が多いねぇ」
「……おい、もう降りるぞ」
「え、目的地はまだ先……、ああ……」
文庫本を読んでいた少年が顔を上げ、白夜と呼ばれた男の顔を見て納得したような声を上げ、「翼そこに付いてるボタン押していいよ」と声をかける。「わーい、やったー」と窓際の少年は待ちかねたように即座にバスの降車ボタンを押した。
数分後、バスが停車し白夜はそそくさと降りていく。
「白夜さん、エチケット袋いる?」
どうやらバス酔いのようだった。
「うるさい」
白夜は大きく深呼吸をし小さく呪を唱える。すると白夜の顔色が良くなる。
「さて、気は乗らないが、行くか」
都知事事務所。
眼鏡をかけた、いかにも有能そうな男が立っていた。
「どうぞ、こちらへ」
「ふん」
都知事の総裁選で、別の候補から呪いのような妨害を受けたため、とある筋を通じて白夜を頼ってきたそうだ。
「私は野木の秘書をしている鈴木と申します」
「陰陽師の化野白夜だ」
雨月と翼は礼をする。
「私は使えるものは何でも使います。あなた方のような超常現象を、信じる、という程大仰ではないですが、使えるならば使います。きちんと報酬もお支払いしますのでご安心を」
「ふん、いけ好かないやつだ」
白夜は神棚を準備し、呪いを祓う。
それほど強い相手ではなかった。
今頃、返ってきた呪いに、あたふたしていることだろう。
「これで完了した」
「後は、このお守りを持っていて下さい」
「はい、ありがとうございました」
深々と頭を下げる鈴木を後にし、白夜達は帰路に着いた。
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