散歩

私と千早の奇妙な同居生活は続いていた。

 千早は早起きで、私より早く目覚めていた。

「千歳、お散歩いこうよ」

「う~ん、散歩?」

「そう」

「何でこんな朝っぱらから」

「いつもそうだったから」

「いつも散歩してるの?」

「うん。散歩は朝だったでしょ」

「それって……」

 その後も千早が急かすので、私は渋々散歩に出かけた。


 散歩中も千早は、るんるん気分で歩き回っていた。

「車とか気を付けてよ」

「うん!」

 自然と手を繋いでいて、千早にグイグイ引っ張られるように進む。

 紅葉の道を歩いている千早は、はしゃいでいた。


 朝の支度を終え、千早に話しかける。

「大学行って、そのままバイトも行くから、帰りは8時過ぎ。ご飯は冷蔵庫にあるもので適当に食べてね」

「うん。ソーセージとか食べていい?」

「うん、いいよ」


 千早はケータイを持っていなかった。

 親御さんとかは心配してないのだろうか。

 本当に何も持たずに家出をしてきている。

大学の授業中も、千早のことが心配で、講師の話があまり耳に入って来なかった。


「千早、ただいま」

「おかえり、ずっと待ってたんだよ!」

 家に帰って、出迎えてくれる者がいるのは良いことだ。

 千早に抱きしめられながら、私はそう思った。



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