お手本

「おみゃあが、にゃまけもんにゃのは来た時から変わらんが、そろそろにゃおさにゃいとダメにゃ。ほれ、今日もお手本を見せてやるから」

 そう言うと、コマは若い女性客の側に近寄り、足にすり寄る。

「にゃあん」

「あ~コマちゃんかわい~」

 女性客が歓喜の声を上げながら、コマを撫でまくる。コマはごろんとへそを見せてやる。

「かわいい~」

 連れの女性がコマにスマホを向けて写真を撮っている。

「すみません。インスタに上げていいですかぁ?」

「もちろんです! #保護猫カフェくるり #コマ でお願いします!」

「はぁい」

 恐らく慣れているのだろう、スタッフがすかさず宣伝を入れる。

「ここの店長をしている志保だにゃ」

 いつの間にか翼の膝の上に戻ってきたコマが言う。

 志保は二十代後半の女性で、髪を一つに結び、きびきびと動いている。

「あの人が志保さんか。何か元気な人だね」

「うむ」

「コマさんは志保さんが好き?」

「そりゃあ好きだにゃ」

「ふふ」

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