猫又の仕事

 コマからの依頼はこういうことであった。

 コマは日本各地を自由に旅する猫である。猫又になったのは約二〇年前。気付いたら人間の言葉が分かり、二足歩行になっていた。人間が自分のことを可愛いと言っているのを利用し、その日の宿や食を得ていた。

 ある時、一人の女に拾われた。女の名は「志保」という。

 コマは志保が開くカフェの看板猫になった。カフェには次第にコマの舎弟が増えて賑やかになっていった。

 志保と出会って十数年が経過した。普通の猫なら、そろそろ寿命を迎えてもおかしくない頃合いだ。それで、コマは決心した。

 死のう、志保と別れよう、と。


「承知した。とりあえず貴様が働いている、かふぇとやらに向かうとしよう」

 コマとはここで一度別れ、明日改めて彼の勤める猫カフェに伺う算段となった。


 その夜のこと。

 翼は昼間来た客猫について尋ねていた。最近は白夜達の仕事にも興味が出てきたのだ。

「ねぇねぇ、明日お仕事でコマさんとこの猫かふぇ?に行くんだよね?」

 寝る前に明日の準備をしていた白夜は振り返って翼に答える。

「そうだが?」

「あのさ、僕も行っていいかな?」

「好きにしろ」

「わーい」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る