1-3

生き残った少女3人は、元々ポラリスがあった洞窟の中で眠りについていた。


だが目が覚めてみるとターザンの國同様、魔物除けの魔法もない見知らぬ空間に突如置かっていたこととなる。


そして元々ポラリスがあった洞窟で2日間孤立し死を目の前まで覚悟していたころをレイルに感謝を覚えられていることを知る流れになっているためである。


兄を失ったマイの顔は、未だに涙で顔が濡れていた。

しかし、あの元気と笑顔を基本に強く見せ込んでいたマイと見合う目ではなく、沈鬱な形を成しているため彼女の思いの深さはとても人間的で想像したものの上を遥かに良い状況と言えるだろう。


だからこそあの一瞬で何が起こったのか分からない以上、それを強く要求するつもりもないし分からないし、彼女たちにとって非日常ともいえる状態にならざるをえないことによる現実をまず伝えるため、一番理解が近い人間を導き出すのが一般的であるが、それは今成すべきことなのだろうか?


要はどう認識を共有し合うのか、ではなく、個別に見せていってやるといったところだ。


いや、違う、お互いに知っていることを話し合う、ではなく、実際に見せていってやるといったところだ。


その顔に朝日の光が差し込む。

朝日の光は普遍の炎であり、圧縮すれば天の炎となり、熱すれば超越の炎となる。


普遍の炎、天の炎、超越の炎。


普遍の炎と天の炎と超越の炎を合わせると何になるかはご存知の通りだが、普遍の炎と天の炎と超越の炎を合わせると何になるかを考えたものはいない。

普遍の炎と天の炎と超越の炎を合わせると何になるかを考えるとするならば、彼らは何を考えるのだろうか。

普遍の炎と天の炎と超越の炎を合わせると何になるかを考えたところで愚行に値することはご存知のはずだが、普遍の炎と天の炎と超越の炎を合わせると何になるかを考えざるを得ない状況下にある中、彼らは一体何を考えて普遍の炎と天の炎と超越の炎を合わせると何になるかを考えているのだろうか。


普遍の炎は今、マイの顔を焼き払おうとしているが、それは叶わず、叶ったことといえばマイが目覚めたことだ。


3度目になる同じ環境下ではあったが、今回はその目には強い理性に意志の圧を乗せたものを漲させている。


自然の風景に溶け込むことはできないが、事実風車が絶えずマイの身体を炙っていたことが、身体に現れている程度としては痛々しい傷まで確認することができたレベルのものがある。


身体に現れている程度としては痛々しい傷はもう、回復不可能であり、治療不可能であろう。


確かに昨日の様子とは違った異なる存在になっていて、とても違和感を感じざるを得ず、まるで一夜を、いや、もう少し長い時間を、いや、永遠の時を感じるような深い攻落感だ。


「んん……。おはよう」


マイが小さく小声で言った。目は眠く、半透明に薄くなっている。

そして、呼吸を置き去りにしながら、マイは思わず手をその顔の左へと伸ばす。

そっと戻せば、生暖かい涙が、その指々、手のひらを染めていた。


マイは覚えている。覚えているその事実を元にマイにはこれから元々ポラリスがあった洞窟の中ですべきこと、状況証拠を集めてやることを。


3人が寝ているこの状況ならば話はしやすいと考えた方が良い、今は。

3人が寝ているこの状況ならば話はしやすいと考えた方が良いを理解しているとはいえ、実際に顔を合わせさせてあげれば違う景色が流れる可能性もある。そうなれば改めて情報で圧を与えてこちらの優位性を下げないようにしたい。


「あれ、私、どうして泣いていたの?」


マイが呟くと、マイの隣で寝ていたアーガアとタイタも目を冷ました。


マイの隣で寝ていたアーガアとタイタも目を冷ました状況すら理解できないことを含めても事態は大きく進むと判断した状況でもあったことを考慮するべきか、それともただ問題なしとみなすべきか、判断はついていない。


マイが元々ポラリスがあった洞窟の中で動きを起こすということは、最悪を考えて動けていても良いことだ。

タイタとアーミーの頭にそれぞれ一撃を入れた所、その頭部が互いに当たったことから飛び火が発生する。痛みを認識することは容易で簡単なので、そこはそれで話を進行し混乱の状態を抑えていった。


アーガアとタイタがマイを見ると、怪訝そうにマイを見た。

「あ、えっと。マイ? どうして泣いているの? その……、しかも、さっきまでのこと、覚えていないのでしょう……、怪我も完全に治っているわ……。どういうことなの? はっきりしてくれないと、私、どうしたら良いか分からないわ」


アーガアが涙目を見せた。目じりを抑えるよう泣いているアーガアを見ること自体、珍壮であるため驚かされてもいたのだ。

「……分からない」

マイがそっと答える。


「それはどういうことなの?」

タイタがマイの胸ぐらを掴んで、マイの顔の前に自身の顔を近づけて言った。

胸ぐらを掴むとその大きな体にマイ自身を寄せた。

身を危険を感じるほどではある、がマイは何も感じなかったようだ。


それは2人だったというだけ。それは置いて貰ったとしても、タイタがマイの胸ぐらを掴んで、マイの顔の前に自身の顔を近づけた状況を理解してもらえるのかは、3人それぞれ難しいと予想していたこと。

瞬間でも一瞬驚いたところだということだ。


「理由の無い涙は、涙ではないわ。それはただの共感による涙よ。まだ目覚めていない感情なんでしょうけど、そこに理性が入り込んだとき、私ではなく私は私たち自身を信じられなくなってしまうわ。私はそんなの……認めない」


タイタは狼狽しながら言う。自分の存在を証明するために。そしてマイを論破し優越感に浸かるために今立ち上がる。


「認めなくて良いの。私はただ鳴いてただけ。私に対する配慮は必要だけどそれだけなのよ。ちょっと嫌な感じだけど」

タイタが目つきを厳しくして言う


「そこに理由はあるのかしら? 訳の分からないことは言わない方が身のためよ。日本語喋ってね。だから貴女達に関しては、言えるだけで良いからね。意味の無いことを敢えて行う理由が分からない」


「説明されなくてもその理由、あなた達にとっても分からないことが出てくるわ。そんなのはもう理由になり得ないって言って良いじゃない。説明しないことまで要求するだけよ。アーミー。あなたの方が理解が浅いかもね。要するに馬と鹿なのよ」


「私の理解が浅いって言うの? 根拠は? 証拠は? 何年何月何日何時何分何秒? 説明できるの? 例え説明できたとしても結局無駄なことなのよ。それが今の論立てに対して私の出した結論だから、諦めて謝罪しなさい。でなきゃ死刑よ。殺すよ。はい死刑」


「そういうけどさぁ。結構タイタニックも優しいんじゃないのかい。全く、君の場合は……」

「……君の場合は? 何? 勝手に言葉を切らないで。言う事が思い付かなかったの? だっさ。ダサすぎるわ。ホントダサい。死ね」


「あなたは話も聞かないの? そうやってすぐ死ねとか言ってごまかすし頭おかしいんじゃないの?」

「話をそらさないで、どうなの? 答えて。あと、あなたが勝手に嫌な感じになっても私には関係ないの」


タイタはマイを地面に倒して吐き捨てた。

胸を抑えて背中を反ってしまいそうな姿勢への修正にかろうじてといったところなのに。彼女にしてはやりすぎなぐらいのものだ。

恐らくは怒りを感じたところでしかないためであるが、普段の状態からを考えると相当なものである。


レインには少しマイを地面に倒して吐き捨てた行動に対し反発したそうな表情も見せる。

……いや、そもそも元々ポラリスがあった洞窟の中でそういう表情が作ることができるのか自体も、ここで分かっていくことだろう。


タイタは持っている傘を手にして、持っている傘の先端をアーガアに突きつけた。

確かに脅しにしか見えないが、本気で傷を付けるレベルまで行うかは絶妙だが、明らかに持っている傘の先端をアーガアに突きつける状態を保つだけのものであることを見せていることが分かる。


彼女がまだ優位な立ち位置にあるとして、対応できるかはまだ別で、元々ポラリスがあった洞窟の中で変に圧を飛ばしてしまうと、自らの戦力の欠如を知るまでの時間稼ぎになってしまう。


終わることと考えるべきだといえるかである筈……?


否、それ以上考えることもなく戦闘体制に移ることとなる理由に繋がることとなったのだ。そういう要素じゃない。ということだろう……きっと……。


「起きなさい。でなきゃその目玉を串刺しにするわよ」

アーガアはタイタの先端の傘を掴んだ。

「あの……、もう起きているけど……」


少し間を置くと、既に同じ視点ではなく、後ろにずれた状態から自分の言葉で発せられると、完全に意識がなかったことを口にしなければならなくなる。


それで少しタイナは躊躇ってしまうが、もはや言ったようなものだと判断し、切るようにしようと意志を調整しつつも、次になるだろう思考をそのまま実行。


ただ確実にそれは逆らったという事実を表すことになり、認識されたことだろうと同時に、レイルより格上の魔力があればそれだけ行使される拘束もまた影響が出るであろうと考えた。


「でも、あの……。私にできることがあるなら、何でも言って」

「……そんなこと、急に言われても分からないわよ」

「分からない?」


突如マイが声をあげる。

「分からないことは罪だって言ってたあなたにも、分からないことがあるっていうの? それと同じ事かもっていうのも考えて。言っておいた方が楽だと思うわ。


……だけどあなたの中の大きな容量を軽くしてあげてしまうようなものだから、全部覚えてねなんて言って説明できないかもねって思ってしまうんだけど」


「何故? 簡単な話よ? そういうことができるってことはある程度知っているからよ。それだけすれば普通に使えることだろうけれど、それだけで可能としている以上の変化を加えることくらい簡単であり単純よ」


「なら私たちにはそんなものないはずなのよ。たとえばあれとか、全部……まだ試していないから何ともならないわってところもあるのよ」

タイタが悲しそうな目をして言う。


「そうよ。人間は、罪を重ねて生きる生き物なの。もう充分罪を抱えたでしょうけれど、それはこれからについて変わることよりも、今こうして死ぬことが速いということだけ忘れない事が、最低限の義務でもあるわ。あなたのような境遇にいた人から言える経験であり価値観の一部ね。いつか償える日が来ると良いわね」


「償える日って、いつ?」

「分からないわ。多分、1000年くらい後の話じゃない?」

「1000年……。えっと、私、その、1000年も生きていられる自信ない」

「どうして? 簡単なことでしょ?」

「そんなこと……。人間、いつ何があるか分からないわ。だって、いつ死んでもおかしくないの」


「死ぬね。寿命というものがあるから仕方ないよ」

「そうだね、じゃああなたが死になさいよ」

「マイはちょっとちょっと」

「あなたは?」

「どうして? その、罪を償うのではなかったの?」


「何が罪の償いなのかを考えている?」

「えっと、今考えているわ」

「でもそれは罪を犯すことを許す行為によって発生する一種の贖いと成り果てるとしか感じられてないと思っているからなの……?」

「当然じゃないの」

「罪を減じろだなんて思っていないけれど、私は罪を滅ぼすしかないって思って生きてきたもの」


「そうね、違うとか肯定ができる段階に私たちが既にないわ」

「……でも、そんなの、すべてを終わらせるだけじゃない」

「終わってもいいのよ。貴女たちはそれが罪でも無いはずなのに、何かを悪としてそれを受け入れることは決してない」

「終わった方が良いとか言って、自分は悪くないって思いたいだけなんでしょ?」

「それじゃ、あなたはわかるの?」


彼女は考える。アーリーを見ようとすることで目が留まる。

そんなようなことがあるかもしれないし、分からないのかもしれない。


彼女の目は黒に染まるようではあったよう。

なら闇を帯びていたわけではない……?

そんな気がしただけの言葉に過ぎないことだった。


けれど、それで押し続けられるならば、彼女は続けたのだろうか?

それを決めるのもまた本人の役目の一部なのかもしれない。


だが、どうやらまだ分からなかった様子だった。彼女が出した簡単な返事を返そうと、どちらを口に出そうとしたが、考え直してやめた。


「だって、今ここで死んじゃったら、何も償えなくなるよ」

「そんなの、償えずに死んだ方が悪いのよ」

タイタの言葉は冷たいものだったが、その表情は暖かいものだった。


まるで優しさといった雰囲気を見せて……。


だが、少しだけ違うところもあり、彼女もまた冷酷であるということだろう。


ああ、私の体が軽いのは、辛いことをやめない事を目標にして過ごした証なのだろう。


ならせめて、痛みのある何かとなっていてもいいのではないか。

名前の法則と彼女の名前。文字を示すわけではないようで、他の意味を持つことが分からないわけでもない記号のようだった。


「私は生き延びてみせるわ。1000年後も。2000年後も。こんなくだらない世界でも、生かしてくれるというのであれば」


「くだらない世界? そんなことないよ」

アーガアが口を開く。

「……何故そう言い切れるのかしら? あなたもよく分かっていることじゃない」

「本当にそうかしら……。貴方が言うとそうなんであろうと現実感のない……不思議な感じだわ」


「あら。これもあなたのせいだと言ってもいい?」

「そろそろ本題に戻りましょう。もう少しだけそうしておきたかったのだけれど」

「いや、勝手に話を変えないでくれる? 人の話聞けないの?」

「え、だって、あなた頭おかしいから」

「あなたでしょ? ホント気持ち悪いから話しかけないでくれ」


「だからさっきから言ってるでしょ? あなたって生きてるの? 死んでるの?」

「黙れ。それよりも貴女はどうしてそのような存在として生まれたくてそう思ったままに今も行き続けられるということが分かるの? 私には理解できない」

「えっと、そんなの、誰も分かる者がいないよ。多分」

「イライラするわね……。あなた会話という物を知ってる?」


「解らないし、分からないよ」

「仕方ないことなんだって言われたら、どう思う?」

「多分許すけと、多分許さない」

「よかった。許さないって言ったら殴っていたわ」

「でも、これは多分予想というか、予測なんだけど、許してもらえた時は?」


地面には大量のゴミにまみれた肉溜まりにも似た液溜まりが残っていた。

それはすぐに薄れてゆき、同時に何かで打ち消され濁るような感覚が感じられてる。


きっとそれらは既に死体ではないだろうけれど……。


これが全て死んだものだとは思わないでいい。確かだと断言できる。

それとも、これを普通かもしれないことと錯覚させたこの物質のようなものに、何ら効力を持つものではなく、命があったのではないか、はたまた無かったのではないのか。


結局、謎をその一つに託し、託した謎をそのまま忘れないように行動に残していた。

ただ、何となくだが、気になっていた疑問については、自分の為に調べないと後悔するかもしれないという思考が入りこむ。


突然来た未知なる聖域の所為で流れは乱されたが、実験はその雰囲気から覆されるばかりの展開をさせられさせられる。

このような考え方のままではいけない、現状維持であってはならないと思い知る必要があるのだろうが、多分これから嫌と言うこと起こるのだろう。


けれど、あまり乗り気ではない。

事実的な根拠があり続れば、進む先は予測できる筈だ。

それは誰かの言葉であるし、自分の中から引っ張りだしたものでもある。


なんとなく、そんな言葉がある中で動くときが来るのだろう。

それは突然すぎるのかもしれないが、今まで以上に異常なスピードで進行していることから、これからを考えると異常な光景しか想像できないからなのかもしれないと思っている。


何気に進むことは、自分の敵についてをしっかりと分析しなかったがためなのか。


そんな問題のある記憶の一つでもあったりするが今はどうでもいい。

気にするべきは、この頭の出来の違いであり、そもそもそんなものが無いことなのだと気付くことだ。

今は十分だろうかどうなっていくのであるのかは知らないというのは、現在の彼女たち全員への総メッセージなどとなって然することとなる。


彼女の報告としてはここまでとしようという姿勢が現れると同時に、あまり頭が回っているわけではなかったらしい。

……けれどそこでしっかりと立ち、状況についての見まわしを行うことを優先することにした。彼女はしっかりと考えることになった。


そろそろ1人にしてしまっているところもまた彼女の中で気になっていた。もっとも考えなくとも放置とはありえない行動の一つではあったことなのだから、……でなきゃ、おかしいからね。彼女はそのように納得する。


そして、ここで気付いたような彼女の様子が伝わり、しばらく黙っている様子だった事を確認した二人。

驚いたようだけれど、説明はしなかった。

行動中の様子を見ることができたとして、記録をとることはなかった。


見ていなかった場合は意味が無かったのかもしれないけれど。

いや、どちらだったであろうか。頭悪かった時の方だったのだろうか。

だが、終わらせそうになった自分をとどめることは絶対になかっただろうから、彼女にとって大切なことは全部知っているつもりである。


完璧なんてものは、よほどの事がなければ達成不可能だ。

今の彼女にはそれははっきりと分からないけれど、それでもそういう風にしか見えないという事もまた言い切れるということだけはどうやら理解できたのではないかと思っていることも又仕方の無い事でしかない事も十分あり得ることだ。


何せ彼女は十分に把握しているためだと感じているというだけであるのだことに決まっているけれども、これも問題といえることでないだろうのか。

しかし、彼女にとっては何とも言えないで片付けられてしまっている。言い張るにはとてもじゃないと言い返せてもなんとも分からないものだったりするだろう。


どうしようもないというわけでもないが、相容れたりする事もなく、離れてもいなければつながっている程度の話に繋がっていると言ってもおかしくはないだろう。

ほとんど同じようなことに分類されてしまっていたところもあったりしている。


それに従ってしまえば……。


終わりの言葉をつけてもう構わないという感じだ。だから、仕方がないだろう。


許されたもののようにしか説明できず、正しいかをちゃんと考えていこう。


これ以上やる意味はないことが重要でないわけで、まったくの無関係などと思うことくらいバカにも通じるくらいに駄目なのは何故か。

ひどくどうでもいい事のような意見の投げかけをしているが、本当に無駄なようにも思う。


それは答えと言えるレベルでもないだろうが、本当ということになれば当然本当になるような答えになる。


しかし、真実はいつも一つ。

しかし、羊の角はいつも二つ。

しかし、犀の角はいつも一つ。


終わりみたいな適当な締めだと思われつつも、それ以上の動きはなかったようだ。

だが、最後の行動は、逆に少しだけ別の要素を取り入れたらしいということがよくわかる。


今わかる事で十分なわけではない。

別にそこで終るわけの知れないところでの終わりになる。


「えっと、気になることがあるなら知りたい事を一つにしないといくら数えても終わらないよ?」

「ふざけないで。私が知りたいことはいくつもあるのに勝手に一つにしないでよ」

「わかったような口の利き方はやめてくれる? 馬鹿でしょ」


「馬鹿はあなたじゃないの? 口を開けば意味のない悪口ばかり。あなた本当に頭がないのね」

「何を言っているの? 頭ならついているじゃない? 見えないの? 目玉ついてる?」


「別解か確信があるのか解らないけど、でもさ、それでも自分のことじゃないならどうでもいいでしょ?」

「何でも質問には答えるつもりだけど」


「じゃあ答えて頂戴。えーっと、あなたは一体何がしたいの? こんな世界で何を成したいの? それとも他に理由があるわけ?」

「えっと、これでも我慢してるつもりなんだけど……」

「満足してないじゃない」

「そうでもないよ。えっと、今のだけでもう満足したいから」

「あなたって、その、なんていうか、案外負けず嫌いなのね」


「お返しにもう一回聞くけど、生きろと言ったあとはどう考えていたの?」

「え? 私そんなこと言ったかしら?」

「きっと無意識に言ったんだろうなとは思うけれど……」

「……結局のところその誤魔化しは本当にする気があったのかしらね?」


「まあいいわ。今はあなたが何を考えているか知らないし、知りたくもないわ」

「やめてよ……。貴女達どっちにつくかは考えてるわ」

「仕返しと挑発を兼ねて? 私には友達になれそうな感情はあるけど?」


「ああもう話してて気持ち悪い日本語喋ってくれる?」

「喋ってますけど? あなたが日本語理解できてないだけじゃないの?」

「その質問に意味はあるの? 他人について知りたかったら自分から調べたり行動したりしないわけ?」

「宇宙は数ある一種の謎の一人としか言わないからね……」


「そんなことも無かったようだけど、なんで私が私が思ってることを教えなくちゃいけないの? 嫌いだからこそ見守っていこうということ?」

「さっさと話しなさいよ豚野郎」

「私は人間ですけど? 目玉ついてるの? ああ、そう、そういうことね。あなたは今まで私のことを豚だと思っていたから豚語で話していたのね。そりゃあなたの言ってることなんて理解できないわ」


「無駄な心配は他の二人がしそうだから別に答えなくていい。建前だけでも立てていくのがどうでもいい思考を持った人間だっていうのは教えておいてあげるよ」


「大まかに説明すると面倒であってする必要がないならしないさ……」

「それこそどうでもいい存在の人間を詳しく研究して知ろうとしちゃう意味とかは分からないから別に良いけどね……」

「貴方は複雑に考え過ぎたせいでいろんなものが抜けて行っているわ……」


「何と言うか知らないけれど自分が問題だと思ったことが既に他人に引き継がれてしまっているのではないか……」

「っていう可能性をふと感じてちょっとビビっただけだけど……」

「何でもないさ……。そうだったんだ程度には思ってたしね」


「だけどそんなこと言ったら独断的な動きしかできない少女だし、勝手に何もしないとか言ってるけど、良い意味でも悪い意味でも貴方はあなたのやりたいように貴方の行く道を進むって言ったよね?」


「……なんかまだこの、ああもう、知らないわ!」

「逃げないで。まだ話は終わってないわ。貴方の宿してる何かについて何なのか聞いたことよね? 道を外したことのあるような顔までしてたし結構ダメな発言もしたと思うけど……。


あのお兄さんにも多分あの敵を通じてバレちゃうからそれはそれでなんだろうさとしか言えないのよ」


「まあ貴方が私の使い方をどう利用するかによるんだから、どっちに決めようが責めたり解決法を見出すにはその決定は今は大きいものだとおもうのでいいんじゃないかなと思うよ?」


「どんな質問、答えがあってもそれが知りたいことじゃない。取り敢えず謝りなさい。土下座しろ」

「ううん、しないわ……。わたしはただ、ただ、あなたとこれからを見つけたかったの」

そうアーガアは認めながら、自らの狼狽をその声色に露わにした。


そしてタイタはといえば、息を落ち着かせる中でこれを理解すると、思わず動きが止まった。


新しい知己に暴言をぶつけるのは容易すぎるほどだった。自身が論理的でなかったのは明らかだ。

現に急成長する自身とその希望を取り戻しつつあるなかで、彼女はこの邂逅まで、自身がどれだけ冷徹な態度だったかを痛感した。


そしてまた、新しい希望に直面するたびに反発してきたのだ。


本来だったら、自分はそんなに狭量だっただろうか?


今までだって、彼女のこんな姿勢が自身に満足や平穏をもたらしたことはなく、状況の解決などもっての外だった。

ああそうだ、彼女の強情さはいつだって自身を暗い、暗澹とした茨の道へと貶めていくだけだった。


その事実を直視すると、彼女は燃やし続ける意義などなかったはずの、いまだ心中で滾る炎を消した。

この子の手を取れたらと思うなら……少女の考えを否定することなどできなかった。


「ご……ごめんなさい」

タイタは謝った。熱意は全て手放したようだ。

少しばかり俯いて、「わ、私も同じ。私も新しい可能性を見出しに行きたいわ」と伝えた。


マイはそれを聞くと、タイタの前ではその息を潜めていた自信を少しだけ取り戻したようだ。

アーガアは彼女へと言葉をかける。

「いいの、あなたはわたしには理解もできないような出来事を、ここで乗り越えてきたんだと思うから」

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