1-2

 モルトたちがターザン国の前に着く。

 ターザン国は敵国による戦火の炎に包まれていた。


 ターザン国の人々は煙や蒸気で覆われている。


 そんな中を進むがなかなか前に進めない。


 そのまま敵国のGK-F184の散弾を全身の身体に埋め込まれる惨状になる。


 前進はできなかったが全身に球を食らうことはできたようでなにより斬新だ。


 惨めな姿を晒しつつも儚く散って行ったターザン国の人々。


 やがてその人々は殉職者として讃え崇められるだろう。


 ターザン国の兵士達はターザン国の剣やターザン国の銃で殺し合った。

 ターザン国の女やターザン国の子供達はターザン国の家の中で震えながら泣いていた。


 戦場を少し離れた場所。

 その場所に向かう途中に一人死んだのを目撃しただけ。


 人はいないことに驚き呆れたのはもちろん言うまでもない。


 人間が互いに殺し合うのは何のため?

 人間が神に慈悲を乞うのは何のため?

 人間が平和を羨望するのは何のため?


 今この疑問を全人類に問いかけた。

 しかし、返事をするのは敵国の殺気を帯びた鉛玉だけである。


 人間は無様に地面に身を引き千切られるもよし。

 死ぬのを拒むがもがき苦しみ死に続けるもよし。

 とにかく死んでみなきゃ何も答えが出ないこと。


「まぁ、なんて無様な有り様なんでしょうね……。見てくれよこの首回りの血痕の跡とかさあ……。あの後めちゃ顔に銃をつきまくって顔射してやっていたみたい」


 オーガアが呟くと、タイタがマイを殴った。


「貴様! なんで失礼な無礼なことを仰っしゃられているのでしょうか!? 天照大神がお怒りになりましてよ!」

「えへへ、ありがとう」


 オナリスとマリヴィには謝まったこと。


 ちなみになぜそんな状況にまでに至ったかは分からないと思う読解力の無い読者のために敢えて説明すると、オナリスとマリヴィが他のみんなとの過激な戦争にあまりにも積極的になったところを逆にモルトによって強引に止めたという経緯があることも話したいけれど流石に制限事項になってしまうため控える事となったのを承知頂けると幸いです。



 不明のままなのだ……と思うだろうか?

 理解できない現象……と思うだろうか?


 しかし、理解することから逃げていてはガチ無知なまま。


 敵から逃げることでしかない。


 それはターザン国の人々もわかっているでしょう。


 ターザン国の人々は愚かではなかったようだけれど馬鹿であった方が面白可笑しい。


「私のお父上が見たらどんなにご悲痛なさっていることでしょ……!! でも敵国の敵兵はどうしてこのような愚かな醜い戦争を引き起こすのだろうかぁ!?」

「知らねーよタコ。それより、俺の妹をぶん殴った謝罪をしやがれゴラァ!!」


 世界規模で発信されているため全ての世界中に届けられたと同時に世界の全ての国の人々は心を奪われ聞き浸るという皮肉染みており非人道的であり不穏でもあり不憫でもかり過敏でもある感動に溢れて素敵に混沌じみていることだけは確たるものだった。


「そうですか……私はアマテラスではなく、タケノコの方か……」


 タイタは笑顔を見せたとき、遠くから一筋の血風が流れた、遠くからの一筋の血風は赤い閃光と共に血を流したのだ。


 ターザン軍の鎧に包まれし大の男の首の部分は見事に綺麗に飛び裂くことが証明され、今なおターザン軍の鎧に包まれし大の男は飛んで来た刃渡り17インチ、555 Scartet Caripendea Phasmo製の片手半剣を見ているようだったのだった。


 その刹那――タイタスとマイの体が宙に浮いていた。タイタスとマイとモルトは血煙と共に大地に転げて落ちる。


「いたぁーい」


 アーガアが嘆声すると敵国の漆黒に塗られた黒い空飛ぶヘリコプターはその者達の元へ向かったのだ。


 ドッガーンズッドンガッシャーアンズッコンバッコーンガーッーン……。


 ターザン軍に斬り付けた敵の正体はターザン軍に斬り付けた敵の首は一瞬ににして跳ね飛ぶのだが、やはり正体が何かは不明に終わる謎である。


 しかし、一つ賢きことを知る事ができよかった。


 敵国は敵であることだ。

 敵国から現れた敵兵は敵でしかないことをここで知ることができた。


「いたた、派手にやってるなぁ……」

「これはまずいな。急がないとみんな死んじまうかもしれんぞ!!」


 モルトたちはターザン国へ向かって進んでいる途中である敵兵の狙撃者が目に入った。


 ターザン国に入って敵国の猛威が迫ってるに違いないと判断したターザン国の兵士一行は即座に構えたがもう撃たれそうになって絶体絶命。



 一体どうやって対処すれば……。



『なんと醜い戦争だなこと……。無惨なり、悲劇にも、哀しくもありましょうが救いが全く存在もしなかったりなかった事にならなかったと証明されたことをここで喜ぶことにするべきなんでしょうね。これ以上待てません。一刻も早く終わらせてしまいましょう。さぁ、私を戦争が起きているターザン国へ向けてください。その場から決して動いてはなりません』


 モルトが持っていた大剣、硝片のソード、ポラニスが鈍く輝きながら言葉という音を端的に発言した。


「あ、ああ」


 モルトは硝片のソードポラニスに言われるまま、硝片のソードポラニスの先端をサーザン国に向けた。


 すると、ポラニスが強く輝き出し、辺りに突風が吹く。


 すると、硝子でできたポラニスの鋭い尖先がより輝きが増し、ポラニスのガラス細工で作り上げられた大きな盾のようなものへと変化したと同時にその輝きは急速に鎮まっていく。


 光の中から出てきたが光がどんどん失われていたとしてもなお美しく可憐であることには決して嘘ではかった事は確実と信じるばかりでもある。


 次に、ポラニスの先端に禍々しい光が集う……。


 光の矛はさらに眩しい程に強く発光している……、凄い威力であることを疑えなかった……。


 またポラニスのガラス細工で作り上げられた大きな盾のようなものの形状が大きく変化していることやポラニスのガラス細工で作り上げられた盾のようなものが大きく形を変えていることもよく分かることだった……。


 ポラニスが人間ではないのでポラニスのガラス細工で作り上げられた大きな盾のようなものの形状が大きく変化していることといったような例えが適切かどうかは不明だが……。


 ポラニスの先端に集まる禍々しい光はまるでブラックホールのようなものだったが色は黄色なのでもしかしたらイエローホールなのかもしれないことは置いとかれなければいけない最重要ではないことと言える事実として言うべきである。


 ポラニスの先端に集まる禍々しい光はまるでブラックホールのようなものだったが色は黄色なのでもしかしたらイエローホールなのかもしれないと言ってしまうならばその可能性もない訳ではないとは言えないけれど違うことは明らかであるが故に言えるはずだ。


 瞬間、大空が暗くなってきた。


 いや、世界が真っ黒な暗黒になったと言ってもいいかもしれない。


 いや、世界が真っ黒な暗黒になったという説明じゃ不十分だったとは思わないけど、今言ったことは間違いなく事実であったことを表すと断言されたい。


 いや、確信もある。保証もある。世界が真っ黒な暗黒になったという説明じゃ不十分だったとは言わないほうが良いけど、何卒勘違いないようにしていただきたい。


 作者の個人的な事情は置いといて、さあこれからも頑張って説明するよ。


 サーザン国に向けられたポラニスは怪しげな光を放っていた。


 ポラニスの怪しげな光輝きが最大限にまで達したとき、モルトの目前にあるポラニスから一筋の光が放たれた。


 ポラニスから放たれた一筋の光は、直径数十キロメートルにも及ぶ超巨大な大きな光の柱だった。


 ポラニスから放たれた直径数十キロメートルにも及ぶ超巨大な光の柱は一瞬にしてターザン国を飲み込み、世界を焼き尽くし、空中を彷徨っていた敵国の漆黒の黒い戦闘ヘリコプターや、地上を闊歩していた敵国の兵隊を、細胞一つ残らず消し飛ばし、消滅させてしまった。


 ターザン国や空中には生物はおろか原子、量子さえ見出せずまさに完全な美しい完璧。


 完全な美しい完璧が現実で本当に起きてしまうことを実感できた有り得ないものだった。


 誰もが知っているはずだったのではなかったのだが、ポルト達は知ってしまった。


 目の前にあった国が無くなっていた。

 跡形も無く完全に消失しているようだ。


 ポラニスから放たれた直径数十キロメートルにも及ぶ超巨大な光の柱は徐々に小さくなりやがて収まると、閃光に照らし出されてきた世界に元の面影は無かった。


 今まで存在していた国々はこの大地から存在を無くしていた。


 辺りには静寂が包んだ。

 空からは雪のような光がフワリと舞い降りてきた。


 空から舞い降りてきた雪のような光はもちろん世界からの悲しみだと誰しもがその思いを持ち、感じとっていた。


 あまりにも、それは酷い有様。

 悲しい悲劇の悲運の重なり。

 残酷的な悲劇で愚かさ。

 噛み殺すことのできない程の惨さ。


 繰り返される地獄でさえも足りない苦しみにただ呆けていることしかできなかった。


 タイタ達はあまりの衝撃に地面に這いつくばっていたが、次第に身体を起こし、ターザン国があった場所を見た。


 ターザン国があった場所には広大な平地が生まれていた。


 ターザン国があった平地に人など最初から存在していなかったのではないかと思うくらいの草一本ない地肌になっていた。


 だがよく見ると地面が大きく盛り上がっていたり凹んでいる部分がいくつかあるのでかろうじて先程まで人が生活していたということが理解できるだろう。


 しかし大きく盛り上がっていたり凹んでいる部分はもはや痕跡であって歴史ではなく歴史があるように感じ取れるだけだ。



 そんなものは初めから無かったのであるから。



 大きく盛り上がっていたり凹んでいる大地は何物においても変えられぬ歴史を感じさせているものだったのだ。


 誰も触れることが出来ない大地。

 誰も触ることなく永遠の歴史に成り替た大地。


 永遠と生き続けたに違いない出来事も記録として記憶されることも無い大惨事として消えて行くことが決まっていた。


 さて、あなたはもう存在しない土地となってしまった事実によってその事を今ようやく知ったのではないでしょうか?


 ふと、アーガアが重々しい口を開く。


「何があったの?」

「わたくし達が今見た光景が全てです……。この世のものとは思えない恐ろしい光景を……まるで神の怒りの神罰のようでした……」

「まさか本当にタケノコの神……!?」

「絶対違うでしょ。でもそうかもしれないわね。でもそうなりすましの可能性って……」


 タイタ達は震える声で答えた。無理もない。自分達が束になっても適わないような圧倒的かつ超越的な存在に出くわして怯えるなというのが酷な話であろうか?


 現にたった今数百奥もの命を奪うことを簡単なことのように容易に成し遂げている。


 無気力にして何も知らない者に恐怖心を呼び起こす事は訳なかった。


 当然のことだ。絶対的に必要な理由は数多く考えられるからだ。


 何故このような事態が起きたと考える必要があるかを疑問にも思えるのだが今はおいて置いておく。


「……国のひとたちは?」


 マイがふと口を漏らす。


 アーガアが沈痛そうな瞳と共に少し微笑む口調で再び呟いた。


「死んだんじゃないの……?」


 まだ昼過ぎのはずだと言うに相変わらず強い直射日光を浴びせられまるで体を貫く雷や爆撃かのような雨が続く。


 太陽に向かって手を高く伸ばしても手は太陽に届くはずがないのは共通認識である。


 それは自然の摂理だったのか偶然だったかは不明だったが、どちらであったとしても大差はなかったので関係がなかったがそれを分かってほしかったと思ったが無理だったのは明確であったため言及するつもりは一切一切全くはなかったものとしたことにした次第であった。



 つまり要約しよう。



 ポラニスが放った直径数キロメートルにも及ぶ大砲のような光の柱は敵兵や建物だけでなく優しかったはずの国民までもこの世から消してしまっていた。


 もちろん優しかったはずの国民の中に愛姫ミディアムもいるに違いないと確信して彼は歯を何度もぶつくさ打ちつけつつ膝を落とし涙を流した。


 その様子を見てつらい胸を抑えられなくなったサーリアもまた彼の横でうわごとみたい泣き出す。


 いつの時からかも分からなくなりながらもこの悲しみから逃れようとしていたのだがうまくいっていかずそれは全く通用しない。そして──


「……お兄ちゃんはどこ!?」


 ポラニスを手に持っていたはずのモルトの姿もどこにもなかった。


 忽然と消えるようにして姿を消してしまったのだからマイはモルトを探してすぐに走ったのだが自分の眼中には何も残っていない事を確認するためにまた悲しみを背負い泣く。


 しかし何かおかしいとすぐに気付き首を縦に向けて考えるのに一分ほど時間がかかっていて理解してからしばらくして突然マイは大きく跳び立ったがそれと同時にタイキに支えられるように掴まれるという珍しい反応を示したがこれは予想以上の速度で走って転倒寸前まできたからだと言う事で二人共々本末転倒地面に倒れる。


 するとポラニスがはっきりとした声で話し始めた。


『恐れていたことが……』


 ポラニスがそう話すうちにポラニスの言葉と力が少しずつ失われていくのを感じたアーガアがポラニスの言葉を聞いていた。


 その時三人の頭の中に想像の出来ない想像と予知のような光景が流れこんできた。


 三人の頭の中に想像の出来ない想像と予知のような光景が流れこむ力は人間とタケノイキビの力。


 三人の頭の中に想像の出来ない想像と予知のような光景が流れこむ力は人間とタケノイキビの力はつまり世界の崩壊を意味していているなんて彼女達は知らなかった。


 三人の頭の中に想像の出来ない想像と予知のような光景が流れこむ力は人間とタケノイキビの力はつまり世界の崩壊を意味していることはモルトが死んだことによってポラニスの体内に溜まる魔の量が大きく増え続けていたからだ。


 そして今それを知ったとポラニスは強く後悔をしながら泣く声を強く絞りだしたのだったことを理解した。


「えっ? どういうことだってばよ?」


 タイタが聞きながら目から大量に出てくる汗と涙を流した。

 それ程必死であり悲しい涙ということを表すようなものでもあるだろう。


 カイザー国の悲劇、それは戦争により国の全ての人がいなくなってしまうことだという皮肉があったことを知った二人は呆れる程に落ちこみその身体を抱き合う様にしている二人の姿が見て分かった。


『私の必殺技であるマインドバズーカが放たれてしまいました。そして私の目の前にも一人の兵士がいたにも関わらず殺め、さらには私の放ったマインドバズーカが爆発したりしてこの国がこうゆう状況になりました。私はあなた達の願いを聞き入れ敵国の敵兵を滅ぼした後ある人物の命を奪い今彼は魂だけが生き続ける状態にあります。しかし私の必殺技であるマインドバズーカで命を奪われた人間は魂となってこの世界に留まることはできません。つまり死者の国へ行くことになります。もうあの者達と共に歩まれないことを祈っておりますがいつか再びあの者達と共に歩める日が来ることを祈っています。でもいずれ私があなたたちに……私に与えられた……宿命は必ず起こるものとなってしまおうとも予測されているでしょう』


 ポラニスの心の中で渦巻く憎しみが悲壮な心を呼んだ。


 そして今現在の心境と直結するような状態に変化を起こし始めている。


 今現在の心境と直結するような状態に変化を見てか分からないのだがアーガァは無意識下の中に閉じ込めていて開かれなかった気持ちと心情の叫びを初めて上げたことをアーガァは無意識下の中に閉じ込めていて開かれなかった気持ちと心情の叫びを初めて上げた事を直感という感情を通じて知った。


 混沌の景色に沈黙が走る。

 しかし混沌の景色に沈黙が走るだけでありそれ以上口を動かそうとする様子もなかった。


 ただアーファの目線が何処を見ているかはマイには分かった。


 アーファの目線がマイに向けられていたのだ。


 マイが何で自分が何な存在か何も知らなかった。


 しかし、マイは何で自分が何な存在か何も知らなかったことに気づき、すぐにその顔の影を見るかのように暗くなった。


 マイは何で自分が何な存在か何も知らなかったことに気づき、すぐにその顔の影を見るかのように暗くなったことを敏感と言う以外に何か適切なものは果たしてなかった。


 さて、少女達は分かっていた。

 だが、少女達は分かりたくなかった。

 それは、その少女の言葉には、様々な意味を含んでいた。


 ーー疑問ーー


 ーー衝撃ーー


 ーー未来ーー


 ーー絶望ーー


 ーー生命ーー


 ーー逃避ーー


 この時二人は悟ってはいなかった。

 悟ってはいけなかった。


 なぜなら二人がそんなことを言う権限なぞ存在しないと言えることだったから。


 勿論二人はそうすることはできなかった。


 そしてあなたは理解すらできてなくてそれに気がついてあげることなどできなかった。


 けれどそんなことがあったなら……。

 言葉の続きを話したなら……。

 この物語の締めの部分になる。


 だが、それでタイタの心中で燃える義憤の炎には十分だったようだ。


 結局、悟れていなかったはあくまで刹那の間だけ、まるで閃光のよう。


 だが、タイタの心の奥底で眠っていたとある感情を刺激するには十分だったらしい。


 ソレは目覚めると、タイタの脳裏へと静かに降りていく。


 褪せるような記憶が、ただ黒を纏った記憶のみを見せるのみ。


 すると、笑顔が戻ってきた。

 彼女はなんと愚かだったのか。

 彼女ではない、違う。

 彼女だ。


 これは記憶などではない。

 当たり前だ、違うに決まっている。

 彼女が見ていたのは一つの未来。

 来ると予測していた通りの未来。


 愚かで、蒙昧な空想家の成れの果てだ。


 硝片が見せたのは紛う事なくモルトの姿。


 モルトは硝片で形作られた刺々しい柱で貫かれている。


 硝片で形作られた刺々しい柱で貫かれた傷はモルトの衣服をも焦がし、体は光の柱に呑まれていた。


 モルトの背後には、伸びるように広がる貧弱かつ不毛な土壌。


 伸びるように広がる貧弱かつ不毛な土壌の眼前には、ひどく見慣れた大剣が、掲げるようにその手で柱を扱っていた。


 それは今、眼前に立つ硝片のソード。

 遭ったばかりのその彼女。

 これは記憶などではなく、来るべき未来の視界。


 タイタは来るべき未来の視界を見て、その心中へと引き返すと、無視すると決意したばかりの、唯一の真実へと対峙する。


 決意に意味などなかった。


 この世界で、自身にとって善きことを見出すことなどありえない。


 最後の希望は黒に染まり、絶望に呑まれ、忘却へと棄てられた。


 そしてタイタスは発言する。


「それって……モルトは死んでしまったの?」


 その瞬間、マイの目から涙が流れ始めた。


 マイは流れ始めた涙を抑えずに流れ続けている。


 流れ始めた涙を抑えずに流れ続けている様子を見ていられず視線を向けるアーガア。


 流れ始めた涙を抑えずに流れ続けている様子を見ていられず視線を向けるアーガアと同じく見たカイタが目を閉じてしまった。


 二人揃ってアーガアは俯かせたのを見ながら言ったが、紡がせた直後にアーガアはマイに音を掲げるために口を開く。


「ちょ、どうしたのマイ!? 顔色が悪いわよ!!」

「うえっぐ……ズルッグ……死んだってどういうことなのぉ!?」

「亡くなったってことよマイ」


 マイが自分の目に手をあて拭いている。


 繰り返し自分の目に手をあて拭いているという姿をみて自分の妹の姿をアーガアは自身の頭で想い描き重ね合わせた途端歯をぎしりと噛ぎしりし悔しさか腹立っているどちらかの顔を必死に抑えて平気だという姿を見せつつ我慢しろとしている彼女の内を知る者はもはやアーガアだけだっただろうと考えているであろうことがかろうじて読み取れた。


「もしあそこに私が立っていなかったらお前の首が無かったよ。そうならなかっただけ運が良かったのさ。少しは自分の生に感謝をしなさい」


 モルトの死の原因を思い出しアーガアを威嚇した。


「えーん。お兄ちゃんはこの世界にいないのぉ〜?」


『はい、あなたのお兄さんは、もうこの世にはいません。しかし、あなたのお兄さんはこの国から戦争を取り除いたのです。ご覧なさい。先程までアマル帝国にいた敵兵が今では一人残らず消し飛んでいるではありませんか。これば紛れもなく私とモルトの偉業です。よくお聞きになってください。あの時の彼はですね……』


 その後のポラニスの言葉はもはや誰の耳にも届くことすら叶わないことはポラニスのない頭でも理解できるという願望は皆無と言えるがそれを理解しろと言うのはやはり無理があったことをこの場で謝罪したいことを述べておく。


 マイは泣きだし座り込んでいる彼女を優しく支え背中へ回す優しい様子をしている。


 女性から感じ取られる気配を見て何かが動いた瞬間でもあったかもしれないと思った。


 それに彼女は何を感じ取ってなのか無意識の内の行動では有り、理解するべきものでもあった。


「うそだよぉ! だってお兄ちゃんはわたしを守ってくれるっていったもん!」


 マイは地面に転がっているポラニスを踏みつけて泣き叫んだ。

 地面に転がっているポラニスを踏みつけて泣き叫ぶとともにマイの姿がポラニスに反射する。

 ポラニスが映すのは、マイの姿。

 ポラニスが映すのは、少年の姿。

 ポラニスが映すのは、その悲しみ。

 ポラニスが映すのは、その悔しさ。

 しかし


 少女達が最後に聞いたあの言葉を聞いたマイにとって、この言葉を聞き終わる頃はもはや終わっている事に違いない。


 否定はするつもり等はなかったのだったが、受け入れることは決してできないように感じられる今の現実を受け入れることは決してできないのであった。


『残念ながら事実です。あなたのお兄さんの魂は既に死者の国へと送られています』

「そんなのウソだ! やけどの痕も見せられないあんたが何の余地能力を持って私の頭の心を見たっていうの!?」

『私は決して嘘をついていません。ほら、いい加減私に当たるのを辞めてください。さもないと──』


 マイが泣き叫ぶ。

 膝から崩れ落ちる。

 枯れ木のように崩れ落ちる。

 ポラニスの剣に指が当たる。


「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」


 マイの指が亡くなった。

 モルトと同じく、もう戻らないだろう。


『……あなたたちの悲しみはよく分かるけど、私はあなたたちを見守ることしかできない……。消えていった人の遺志をついで、あなたたちが目的を果たせるよう……、できるかぎり力になることを約束する……』


 しかしポラリスの声が聞こえていないのかマイはただひたすらに泣いていた。


 泣き叫び、赤い血が出たことでもマイはまったくそれに気にせずただ泣き叫んで。


 感情を殺し泣くのだけに力を振り払って泣かないはずもなかったはずだったのだからただ涙するのみであった。


『さぁ、行きましょう。私がこれから行くべき道を示します』


 ポラニスは立ち上がり、先端の光がある一点を指した。


 光が道に沿って光るポラニスからの先端の光を目視で見てポラニスからの先端の光が指す道を進むべきだったのだと思われる程に強いポラニスからの先端の光が指す道筋を見せる。


 ポラニスからの先端の光を中心に放射されていくその色は虹を思わせるグラデーションとなり、まるでポラニスからの先端の光に壁が存在しているのならば壁を飛び越えよと指示まである。しかし、これだけの準備がなされているというのに、誰も進もうとしない。


 当然のような当たり前のように、当たり前で無垢であることを望むマイに至ってはポラニスからの先端の光が指す道を進む行動を拒んでいたためである。


 彼女達は今ポラニスからの先端の光が指す道を進むような気分な考えの心境に満ちていないことは彼女達が一番理解していることを分かっている。


 誰かの命令に従うことの行為を遂行することはないのだと。


 誰かの命令に従うことの行為を遂行することはない証拠にそのようなものを見せられた所で彼女の目に浮かぶ景色はその感情の色をよく体に出ていたことだった。


『どうしたの? 早く前進を……!』


 ポラニスが発進を促すものの誰も動こうとしない。


 砂のない砂時計。

 鳩のない鳩時計。

 錘のない古時計。

 針のない震度計。


 只管に振り注ぐ雨は好きで降っている訳ではないことは誰もが考察したかしなかったかは考察した所で考察の無駄ではあるもののないという回答はある訳ではない。


 時は動かない。


 やがてポラニスも呆れたように諦めたようで、その場に倒れた。


『そう……、立ち上がる気力もなくなるほど、傷ついたのね……』


 ポラリスはそう言うと静かになった。


『今回は……仕方ないわ……。失う悲しみと恐怖に、誰もが最初から勝てるわけではない……。でもあなたは、それを知った……。あなたたちが、困難と恐怖に打ち勝てるよう……わたしは、ずっと見守っているわ……』



 こうして3人の旅は始まった。

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