散歩その1

ひかる

第1話 散歩その1

僕は散歩が大好きだ。何も目的もなくブラブラ知らない道をブラブラただ歩くだけ

冬の西の太陽が眩しい、


大変気持のよい午後の散歩、冷たい風が顔を撫ぜてゆく

引き締まる思いだ。ちょとした路地裏でにゃ~にゃ~と鳴く子猫を見つけた。

首輪が付いていないのでたぶん野良猫なのであろう?


僕は勝手にクロと言う名前を付けた、ただ身なりが真っ黒な黒猫だから単純にクロだ、クロは怪訝そうに僕の方を見ている。その黒く澄んだ瞳は、何か獲物をみつけたような光を放っている。そのクロは何故か僕を無視して近くの路地裏に消えていった、散歩をしていると色々な場面に出くわす、


この出会いを密かに楽しんでいる自分に新たに気付かされる。もう、どれくらい歩いたのか足が疲れたので近くの公園のベンチに腰掛けて一休みする。


そして無邪気に遊ぶ子供達を見ている。滑り台を楽しむ子、砂場で遊ぶ子、鉄棒にぶら下がる子、子供達の笑顔が眩しく映った、


ふと公園の外に目をやると、ジュースの自動販売機があるのに気がついた僕はベンチから立ち上がりテクテクと自動販売機に向かった、


自動販売機に100円玉を投入して缶コーヒーのボタンを押すと、ガタガタンと大きな音がした、自動販売機の取り出し口に手をやると何と缶コーヒーが7本も出てきていた。


僕は驚いた、これ、もらっていいのかな?寒さで自動販売機が故障しているのだろう?まぁ~勝手に貰うことにした、


でも結局1本だけ手に取って残りの6本の缶コーヒーを取り出し口に残したまま、元のベンチまで戻ってきた。


缶コーヒーを飲もうとプルタブを引っ張ると、なんと、あろう事かプルタブが折れてしまった。


プルタブを開ける道具も無いのでさっきの自動販売機まで行って残ったまんまの缶コーヒーと入れ替て元の場所まで戻ってきた。


缶コーヒーを飲むと口の中に甘く苦い味が広がる。公園で遊ぶ子供たちの声が聞こえてくる、そんな午後だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

散歩その1 ひかる @hikaru0661

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る