第8話 好きだけど振られたから
「本当は……好き?」
俺は片桐さんの言葉に凍りついた。
月島さんのことがずっと好きで、俺は告白した。
そして、俺は振られた。
振ったのは月島さんのほうだ。
「あんたらは、いったい俺にどうしてほしいんだよ?」
「結那お嬢様と結婚すればいいのです」
「俺を振ったのは月島さんのほうだ」
「日野くん!」
月島さんが部屋に入ってきた。
泣きそうな顔をしている。
「……日野くんに、話があるの」
とても深刻な調子の声だ。
めっちゃくちゃ緊張する。
「好きです。付き合ってください」
突然の告白!
俺は驚きすぎて固まってしまった。
「……いったいどういうこと?」
「実は……私が心に決めた人は日野くんなの」
「え?」
「ハルくん。覚えてないの?」
……ハルくん。
俺をそうやって呼ぶのは、あいつしかいない。
「ユーくん……なのか?」
ユーくん。
幼稚園児の頃に通っていた、子ども英会話教室。
そこで一緒だった男の子が、ユーくんだ。
俺を「ハルくん」と呼んでいたのは、ユーくんしかいない。
「いや、でも、ユーくんは男だったはずだ」
「あの頃は……髪を短くしてたから。女の子格好するの嫌だったの」
「信じられない……まさかユーくんなんて」
脳がバグりそうだ。
ずっと男の子だと思っていた。
ユーくんが、月島結那さん。
いやいやいや、あり得ないあり得ない。
「あの頃、友達がいないあたしを助けてくれたのがハルくんだった。大きくなったら絶対、ハルくんのお嫁さんになろうと思ってた」
ユーくんは英会話教室で孤立していた。
TVも見ないしゲームもしない奴だった。
他の子たちと話が合わず、英会話教室で先生以外と誰も話していなかった。
ユーくんはアメリカの小学校へ行くために、必死に英会話をやっていたから、他の子たちから浮いていた。
「ハルくんが話しかけてくれて友達になってくれたから……すごく嬉しかった」
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【★あとがき】
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