第50章| プリーズ・トラスト・ミー <2>どこまで本気でいいんかい その1

<2>


 集合時間ギリギリか、もしかすると2分くらいは遅れてきた新人の私を見ても、特に焦っている様子も苛立っている様子もない荒巻先生は、今日は水色のスーツに白いロングマフラーを巻いていた。


鈴木先生と同行していたときには、訪問予定時刻に間に合わないかもしれないとなると一気に空気がピリつくので、付いていく私も緊張した。


けれどこっちのチームは、もう少しのんびりした時間感覚で回っているらしい。



「あれ~。里菜ちゃん、ちょっと痩せた? スッキリしたんとちゃう? 」



荒巻先生は産業医の仕事とは別に美容クリニックも開業していて美には目ざといせいか、すぐに私の変化に気付いたようだった。


確かに『10日間爆やせプラン』を始めてから、サンプルのハーブだけ飲んでいたときよりもかなり急速に体重が落ちてきていた。食事を抜いているのに不思議と、激しい空腹に襲われることもない。



「はい。実はいま、ダイエットにチャレンジしていまして・・・・・・」


? ~、なーんちゃって~」


「あっあっ・・・・・・」


“ダイエットって何だい? ”と言われて、真面目に訊かれているのかと思ったら、ただのダジャレだったみたいだ。会話の波に乗りかけて、あえなく乗り損ねた。



「で、荒巻先生。そろそろ? 」

持野さんが真顔で時計を見る。


「せやな。



(あわわわ・・・・・・二人のダジャレの応酬スピードにまったく・・・・・・ついていけないッッ!! )


普通の会話からいきなりお笑いのラリーが始まったりするから、こちらのチームはこちらのチームで、鈴木先生とは別の意味で緊張感があるのだ。




二人の後ろについて、会社の中に入った。



「ここは、主に美容系商材を取り扱っている、『株式会社ウミ・シー・メーア・マーレ』だよ」

持野さんが教えてくれた。

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