Episode⑥ イッツ・ライク・マジック
第46章| 荒巻-持野-足立トリオ、始動! <1>田舎のお葬式?
<1>
――――『株式会社E・M・A』オフィスにて。
「今日から、よろしくお願いします! 」
私は産業医の荒巻先生と、先輩保健師の持野さんに頭を下げた。
「おうおう! 里菜ちゃん、そんなに緊張せんといてな~」
荒巻先生が大きな口をいっぱいに広げて白い歯を見せた。
・・・・・・
私がこれまでペアとして一緒に行動していた鈴木先生とは違って、かなりファンキーなファッションに関西弁の産業医だ。目も鼻も口も大ぶりで、迫力がある顔立ちだ。
今日の荒巻先生は、会社訪問の予定がないせいか、モコモコのカーディガンをゆるーく羽織って下は半ズボン姿だった。ブランドロゴが入った派手なスニーカーと半ズボンのあいだには、鍛え抜かれた両下腿の筋肉が見えている。もちろん、スネにムダ毛は一本も生えていない。腕も足もツルッツルだ。
荒巻先生がゴツいリングを嵌めた手で、前髪に触れて言った。
「ま、こっちのチームには優秀な真穂ちゃんがおるから大丈夫やろ。色々と教えたってや、先輩」
荒巻先生、ちょっと前まではパーマをかけていたのに、いつの間にか綺麗なストレートヘアになっている。明るい茶色のメッシュ、長めのボブカット。気怠げに目に掛かる前髪の間から、耳にはぴかりとダイヤのピアスが光って見えた。
「何でも聞いてね、里菜ちゃん」
荒巻先生の言葉に、先輩保健師の持野さんも微笑んでくれた。
――――――
一言でいうと、色白ギャル系の美人看護師。
小顔にこぼれ落ちそうな大きな目。薄いグレーのカラーコンタクト。
綿棒が3本は乗りそうな睫毛やツヤツヤのネイルは、定期的にサロンに行って整えていると聞いた。
ファッションは、スラっとしたスタイルを生かしてお仕事用ジャケットの下に短いタイトスカートを合わせていることが多いんだけど、それがすごくサマになっている。
(な、なんかめちゃくちゃオシャレな二人と一緒に行動するの、ドキドキするなぁ・・・・・・)
「ん。ところで里菜ちゃん、今日はお葬式の予定でもあるんかいな? 」
「えっ・・・・・・お葬式、ですか・・・・・・? 予定はありませんが」
「なんや~。里菜ちゃん、全身が真ッッ黒やから、
「・・・・・・・・・! 」
荒巻先生の表情と手振りから、冗談を言われているのだと思ったけど、反応できずに頭が真っ白になった。
確かに今朝は時間がなかったから、リクルートスーツに薄い黒のセーターをインして、黒い靴を履いてきていた。全身がマットな黒。言われてみれば、喪服みたいかもしれない。
持野さんが囁いてフォローしてくれるのが聞こえた。
「荒巻先生。その言い方、ちょっと嫌味すぎますよっ! 」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます