産業保健師 里菜の勉強ノート㉟ 【エンパワーメント】

【エンパワーメント(empowerment)】

1950 年代から 1960年代のアメリカで巻き起こった公民権運動(※)や先住民運動、1960年代から1970年代にかけてのウーマンリブ運動などがきっかけで、広く使われるようになった言葉。意味は「偏見や社会構造の制約により抑圧されている対象者の、本来持つ力を引き出し発揮させること」「可能性を信じ、勇気づけ、挑戦を支援し、その人が本来持っている力を湧き出させること」などとされる。広義での『エンパワーメント』は「湧活ゆうかつ」と日本語訳される(ただしカタカナで「エンパワーメント」と表記されることのほうが圧倒的に多い)。

現在、「エンパワーメント」という概念は当初のジャンルにとどまらず、人事・組織運営・経営などビジネスの場面にも活用されている。その際には「権限移譲」「能力強化」という意味合い・日本語訳で使われることもあるが、『エンパワーメント(empowerment)』という言葉にはその歴史的経緯から「素晴らしい力を引き出していく」、「人がの実現を目指す」というイメージが強く含まれることに注意が必要である。単に権限さえ移譲すれば対象者をエンパワーメントしたとは言えず、また「能力を上から与えて強化する」という考え方に偏ると、言葉が持つ意味・ニュアンスとずれてしまう。

『エンパワーメント』は当事者やその所属組織、地域の力を最大限に引き出し、ウェルビーイングを実現し人生を輝かせることにもつながる考え方であり、産業保健職にとっても重要な理念・概念である。


※公民権運動…抑圧されていた黒人やマイノリティによる、白人と同等の権利を求める解放運動


➢関連ワード「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」


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