第39章|後日談 -砂見礼子sideその1- <2>岩名さんとのティータイム(砂見礼子の視点)

<2>



「そんなことがあったんだ!? 娘さん、見つかって良かったね~」


私の話を聞いて、向かいの席に座る岩名さんがお腹を抱えて笑った。


土曜日の午後。都内のカフェにお茶をしにきている。相手は『株式会社E・M・A』の勉強会で出会った、他の会社の人事課長、岩名鮎子さん。勉強会のとき少し話してみたらウマがあって、個人的に会っている。


「ほんとにもう・・・・・・心配した。でもなんか、結果的には良かったかなと思って。娘に対してもだけど、夫に対しても、私、自分よりお給料が少ないから頼りない、とか、勝手な偏見を押しつけちゃってたと思って。反省してる」


「あ~。わかるなぁ。ウチも同じ会社の人だし、私が人事だから、旦那の給料が全部わかっちゃうのよねぇ。ちょーっと、少ない。でも彼には私にできないことができたりするから、給料が多いほうが偉いわけじゃないし、って思ったり」



「・・・・・・・・・あれ? 旦那さん? 岩名さんって、結婚してたの? 」


「あっ・・・・・・・・・。口が滑った」


「えっ・・・・・・? 」


「うふ。口が滑ったついでに、砂見さんに言っちゃおう。実は私、妊娠したの。で、この間スピード入籍して、いま、結婚指輪も探し中なんだ」


「ええええええ~~~!! そうなんだ! それで今日はノンカフェインのハーブティ飲んでるんだ!! なるほど!! 」



――――――岩名さんは私と同世代なのに。妊娠できたんだ。すごい。おめでたい!! 



「まだ会社にも言ってないから私たちだけの秘密ね。私、もういい年だから、子供は無理かなぁと思って、まぁ自然に任せようと思っていたら意外と早くできちゃった・・・・・・。あー、でも子育て大変そう。うちは無事に生まれても、子供が成人するまでに私が60歳になっちゃう。大変だなぁ。ママ友とかできるかな? 」



「大丈夫。大変は大変だけど、楽しいこともいっっっっぱいあるから!! それにママ友って仕事の仲間と変わらないよ。変な人とは深入りしない、余計なこと考えすぎないってスタンスでいけばオッケー。上手に付き合ったら、自然に気の合う人も見つかるし、やっぱり愚痴れる仲間とか、子供同士で遊ばせる仲間がいると楽だから、私はゆるーくつながる居場所、って感じにしてる」



「そっか。あ。いま私、砂見さんに『エンパワーメント』された」


「ほんと? 良かった」私たちはケラケラ笑った。




「・・・・・・・・・砂見さん。課長、砂見さんならやれるよ」


「え・・・・・・」


「ゆるくでもいいから両立して、子持ち女性も課長をやるっていう前例になっちゃえばいい。砂見さんがやってたら、そのうち社内で“ママが管理職をするのは普通のこと”になるよ」



私がまだ少し迷っていたこと、岩名さんには見抜かれていたみたいだ。



「・・・・・・ありがとう。中間管理職、続けてみようかな・・・・・・」


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