第38章|娘のハーフ成人バースデー<6>家の中を捜索(砂見礼子の視点)
<6>
――――――いやぁ、来てませんね。
――――――見当たりませんね。
とりあえず連絡がついた習い事先や学童からはそんな返事しか得られなかった。
息を切らせながら、やっとの思いで帰宅した自宅には誰もいなかった。
ふざけて家の中でかくれんぼでもしてるのでは?
お風呂場、トイレ、クローゼットの中、いくつも扉を開けて探し回るけれど娘の姿はない。
耳を澄ましても、家電製品の微かな稼働音しか聞こえない。
夫に電話をかけた。家の近くを捜索していたからすぐ戻る、という。
状況証拠を探す。
娘の靴がない。出かけるときに使っているカバンや交通系ICカードがない。
「やっぱり・・・・・・自分の意思でどこかに出かけてるはず・・・・・・」
待って待って。冷静になってよ。いまは町中に防犯カメラが張り巡らされてるって言うじゃない。交通系ICを使えば履歴だって残る。見つかるはずよ。そのまま行方不明になんてならない。絶対大丈夫・・・・・・・・・
自分で自分に言い聞かせて、そのあと言いようのない不安が襲ってくる。
防犯カメラの映像を確かめる前に事故に遭ったら?
悪い人に目をつけられてどこかに連れていかれてしまったら??
間に合わないことだってあるんじゃないの・・・・・・・・・??
目の前が真っ暗になりそうだった。
みちるを失うことは、人生の大半をなくすのと同じことだ。
思わず口元に手を当てて、ダイニングテーブルの横でへたり込んでしまった。
そのとき、玄関から音がした。夫が帰ってきた。
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