第38章|娘のハーフ成人バースデー<5>娘の失踪(砂見礼子の視点)

<5>



――――――ちょっと、どういうこと!!? 二人で家にいたんだよね?? 


――――――いたよ。ただ・・・・・・そっちから残業で遅くなるって連絡があった後で、用事を思い出したから・・・・・・少し外出してたら、その間に・・・・・・


――――――帰ったら、みちるがいなくなってたってこと!?


――――――そう。


――――――ありえない! 何してたのよ!!!


――――――予約してた誕生日ケーキを・・・・・・取りに・・・・・・


――――――ハァ? ケーキは2週間前から予約してたのよ!! 日中、みちるが学校に行ってる間に取りに行けばよかったじゃない!!



あらためて、夫の間抜けぶりに腹が立って仕方がない。


私が残業していなかったとしても、ケーキを忘れていたんじゃパーティーが始まらない。


そして・・・・・・忘れていたケーキを取りに行っている間に、娘を行方不明にするなんて!!!




会社から駅まで全力で走った。電車を今か今かと待つ間に、携帯電話を見た。

娘の居場所を知らせる有益な情報は、どこからも届いていないようだ。



(・・・・・・お友達と一緒にいるのかもしれない。ママ友のグループLIMEに、一報入れておいたほうがいい? )



娘の行方不明と協力を呼びかけるメッセージを打ちかけて、頭の中が真っ白で何も文章が思い浮かばない自分に気付いた。最初の一文字を打とうと画面に親指を置こうとしたら、ガクガクガク、と手が震えてスマホ本体ごと落としそうになる。自分が信じられなくて両手でぎゅっと携帯電話を抱きかかえた。



――――――どこに行ったの。どこに行ったの、みちる。



状況的に、誘拐されたとは考えにくい。

みちるは家の中にいたんだから。


自分の意思で出て行った。

どこに?



夫は近所の公園やマンションの周辺を探すと言って電話を切った。


私は・・・・・・そうだ。学童や習い事先、塾に電話を入れておかないと。



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