第38章|娘のハーフ成人バースデー<2>夫の好感度、爆上がり(砂見礼子の視点)

<2>



――――――その日の夕方。



(今日は仕事の進みも順調ね・・・・・・これなら定時に帰れそう)



娘の誕生日パーティーに余裕をもって参加できそうな仕事の進行具合に、内心しめしめと喜んだ。



(それにしても佑介、前はこんなふうに有給休暇取ってくれることなかったのに、嬉しいな)



世間ではよく誤解されがちだけれども、家庭の仕事というのは、ひとつひとつは別に大したことではない。今日だって、ケーキの準備、プレゼントの準備、部屋の片付けと飾り付け、とタスクを分解していけば、どれもそこまで苦労するような難しい内容ではなかったのは重々承知している。


ただし、それらが次々と入り込むほかの用事や、病気や雨などの予期せぬ災難、定例の仕事などと並行して行われることで、格段に難易度・拘束度が上がるのが家事の怖いところだ。人間の頭のメモリには大した容量がないのに、10も15もタスクが同時稼働していると、フリーズ寸前になる。こういう状況下で全タスクをつつがなく、しかもあまりにもみっともない形にはならないように間に合わせなければならないっていう、そこが難しい。


縄跳びだって、前飛びだけを淡々とやるのはさして難しくないけれども、縄跳びをしながら歌を歌えと言われたら結構難しいし、同時にご飯も食べろ、徒競走もしろとか言われるともっと大変になる。


そういうとき、重なり合ったタスクの一つだけでも誰かがやってくれたら、負荷は格段に下がる。今日みたいに夫が手を貸して助けてくれることが、どれほどありがたいか。もし今日、夫が有給休暇を取ってくれなかったら、やきもきしながら仕事をこなして、ダッシュ帰宅でドタバタと洗濯物を片付け、食器を洗い、さらに疲れた身体でパーティーの準備をするはめになるところだった。それが、今日私は、無事に帰宅するだけでいいなんて・・・・・・最高。夫への好感度パラメーターは爆上がりである。


隣のお兄ちゃんでも、近所のおばあちゃんでもやれそうな些細なお手伝い。でもそれをやってくれる気の置けない誰かが家庭の中にいてくれることが、ワーキングマザーにとっては死ぬほどありがたくて、ロマンチックなデートよりずーっと気分が上がるし、あらためて惚れ直してしまうオス仕草なのだ。




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