第38章|娘のハーフ成人バースデー<1>ギクシャクする母娘(砂見礼子の視点)

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 朝。出勤前、夫の佑介が玄関まで見送ってくれた。



「きょう、有給休暇、取ってくれてありがとう」夫に言った。

 

今日は娘の10歳の誕生日だ。少し前に、日本の成人年齢は18歳に引き下げられた。でも娘が生まれた時点ではまだ成人年齢は20歳だったし、数字としてきりがいいので、10歳の誕生日を『成人するまであと半分=ハーフ成人の日』としてお祝いしている家庭は周りに多い。

我が家も、今夜は少し豪華にお祝いする予定になっている。


嬉しいイベント。楽しみだなぁ。

そう思う一方で、毎年、娘の誕生日は少し気が重い。

プレゼントの手配。ケーキや普段よりもちょっと豪華な食事の準備。部屋の飾り付け。

思い出の写真や動画を家の中でたくさん撮るから、部屋もきちんと片付けなければならない。


最近は仕事が忙しくて、プレゼントの準備以外は何もできていなかった。

それを話したら、佑介が有給休暇を取ってくれた。

私が仕事へ、娘が学校へ出かけている間に、残りのパーティの準備をしておいてくれるという。


「まかせとけって~」


「本当に助かる。でも・・・・・・みちる、仲直りしてくれるかなぁ」



先日、英験5級のドリルをめぐって言い合いになった日から、娘のみちるは最低限の会話以外は明らかに私を避ける態度を取るようになってしまった。


これが噂の反抗期? と思う部分もあるから面と向かって叱ったりはしていないけど・・・・・・。



(英語の件、口うるさく言い過ぎたかな・・・・・・。でもあれは、親心で・・・・・・)



「大丈夫だよ。ちょっと意地を張ってるだけさ。子供だもの、誕生日プレゼントを見てケーキを食べたら嬉しくなって、言い合いしたことなんかすぐに忘れるよ」夫が慰めてくれた。



「うん・・・・・・・・・そうだといいな」



娘は夫に対しては普通に接しているので、今は夫が家族の調整役になってくれている。


『這えば立て、立てば歩めの親心』になってしまう私とは違って、夫は『馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない』派。


そんな夫がここまで平穏無事に子育てをやれてきたのは、私や周囲の大人がそれなりに気をつけて娘の躾や教育をやってきたおかげでもあると思うけど・・・・・・。彼のように性格がのんびりしている人のほうが、焦りや競争心に駆られて子供をムチで叩いてしまうような親よりも、案外、うまく子育てができるのかもしれない。


「楽しいゲームもやろうね、用意しておくからさ」


「うん! ありがとう・・・・・・。じゃあ、行ってきます」


「おぅ。お仕事頑張ってね、礼子ちゃん」夫がおでこにキスをしてくれた。


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