第37章|高ストレス者の面談報告書<1>面談記録の確認依頼(足立里菜の視点)
<1>
――――――『株式会社E・M・A』オフィスにて。
「あの・・・・・・鈴木先生、今ちょっとだけお時間、よろしいですか? 」
その日の会社訪問を終えたあと、私は産業医の鈴木先生が一人で作業している会議室のドアをノックした。
「どうぞ」中から声がした。
「あっ。ありがとうございます。先日の『ブルーテイル商運株式会社』砂見礼子さんの高ストレス者面談の記録なんですが、私なりに作ってみたので・・・・・・内容をご確認いただけますか?」
「ええ、わかりました。どうぞ座ってください」
促されて椅子に腰掛けた。
(・・・・・・・・・うーん。鈴木先生とペアで行動して、学んだことの集大成を確認してもらう作業なんて・・・・・・緊張するなぁ~)
「・・・・・・・・・・・・・・・」
鈴木先生は黙って文書を目で追っている。
(やっぱり、カッコイイな・・・・・・・・・)
素早く動く先生の切れ長の目を眺めていたら、思わず邪念が浮かび上がって、先日、カフェでトモコに言われたことを思い出す。
――――――“里菜。真面目な話、鈴木先生と、さっさとヤっちゃったほうがいいよ! ”
あのあと、トモコに教えてもらった流れを復習しながら、ときどき自宅でイメージトレーニングをしてみてるんだけど・・・・・・。
(いやいや・・・・・・そんなの、無理無理。やっぱり絶対に無理だって・・・・・・汗)
「ふむ」
ボーッと考え事をしてしまっていたところ、鈴木先生の声で我に返った。
いけない、うっかりしていた。
私はここに専門職として仕事をしにきているってことはちゃんと認識しているので、頭の中ではイロイロ考えているけれど、絶対に「好きバレ」だけはしないように心がけている。
仕事は、ちゃんとしなくちゃいけない。
だって無職になったところを、緒方先生に拾ってもらったんだもの。
「いかが、でしょうか? 」
真剣な声で訊いた。
(この面談報告書だって何度も書き直して本気で作ったもんね! )
「全体的にはよくまとまっているかと。ただ、『プライベートの出来事・ストレス』に関する記載ですが・・・・・・。面談の際、砂見さんはこのようなことをおっしゃっていましたか? 僕の記憶にはない内容です」
「あっ・・・・・・はい。すみません。それは、記載を入れるか迷ったんですけど・・・・・・。実は私あのあと、緒方先生のおつかいで『ブルーテイル商運株式会社』に一人で訪問する機会がありまして。その時、たまたま砂見さんとばったり会って少しお話したので、話した内容を面談記録の参考として書きました」
「なるほど・・・・・・」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます