第4章|サクラマス化学株式会社 東京本社 <7>反省会
<7>
「足立さん、少しは落ち着きましたか」
「あ……はい。申し訳ありません。私、取り乱して」
鈴木先生と入ったコーヒーショップで、席に着く。
大手町駅すぐの立地だから、店内は仕事をしていそうな人達ばかり。
たまたま、私たちは周りに人がいない席に座ることができた。
視界の端で、数人の若い男の人が、スーツ姿で談笑している。
「指導……、と言われましてもね」
鈴木先生が、コーヒーを一口飲む。
「何でも構いません。率直なご意見をください」困り顔の鈴木先生に、頭を下げた。
「では……。まず、あなたが印刷した資料。あれは、あまり効果がなかったかもしれませんね。個人的意見としては、資源の無駄遣い、のように思いました。エコじゃないです」
「岩名さん、興味を持ってくださいませんでしたね……」
「それは仕方がないことです。岩名さんは普段から、質問をしてくる時には必ず、自分で下調べをしてきます。ましてや厚生労働省の公式ホームページは、どこの会社でも真っ先に担当者が確認するものです。それをリンク先ごとに印刷して持参しただけでは、全く響きません」
「はい……」
「もちろん、企業の担当者の中には、何も事前情報を入れず、まっさらな状態で産業医や保健師に意見を求めて来る方もいます。それはそれでいいのです。そういった方は概して、素直に専門家の意見を聞き入れて下さります。丸ごとお任せ頂ければ、こちらもプロとして妥当なご提案をいたしますので」
「でも……、岩名さんは、既に自分の案を持っていました」
「はい。岩名さんは、自分の頭で考える力のある方です。僕は以前、岩名さんのこれまでの社歴を、お聞きしたことがあります」
「確か、昔は『サクラマス化学株式会社』も、女性社員がお茶くみをしていた、って……」
「ええ、しかし岩名さんは……、社会人になってすぐ、あの会社に入ったわけではありません」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます