僕は何者?


 僕は何者なんだろう。

 すれ違う人を振り返り、あの人は何者なんだろう、と自分に問いかけてみる。

 僕もあの人も同じ人間なのだろう。それは何となくわかる。人間なのは。でも、モヤモヤとした感情が僕を支配する。

 髪の毛の質や声の質、体格といろいろと違いがある。なぜだろう。なぜ、みんな違うのだろう。

「みんながみんな同じであれば、退屈だし変でしょう。量産されたロボットみたいに」

 先生はそう言っていた。

 言われてみれば、確かに変かもしれない。たとえば、周りが全部自分だとしたら少しゾッとするし。違いがあるのは大事なんだな。でも、理由が見あたらない。違いのある理由が。遺伝子によるものか、環境によるものか、わからない。

「違いなんてどうでもいい。お前はお前だ。代わりなんていない。ここにいることが存在証明だ」

 前にお兄ちゃんが言っていた。

 確かに、違いなんてどうでもいいかもしれない。僕は僕である、と。

 家に着いた。中に入る。

「ただいまー」

「おかえり」

 お母さんがやって来てそう言った。

 いつも通りの日常がここにある。日常の中の自分。今、ここにいることが神経を通して脳に感覚として伝わる。

 僕は少しスッキリした気持ちになった。



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