みかん



 今日、実家に帰省した。二日間お世話になるつもりだ。

 両親は「結婚しろ、結婚しろ」とうるさい。私は「私なんかもらってくれる人はいないよ」とささやかな抵抗をする。

 次の日。コタツに入りテレビをみていると、お母さんがみかんを十個持ってきた。

「ありがとう、お母さん」

 私はみかんを一つ取り、皮をむく。

「この白いやつ、栄養あるんだよねぇ」

 私はみかんの白いやつ(薄皮でいいのかな?)をあえて残して、みかんを一つ一つにバラして、その一つを頬張った。

「甘くておいしい」

 一粒一粒がぎっしりとつまっていて、噛むとその果汁が溢れ出す。甘くておいしいそれを、口の中でゆっくりと味わう。

 そしてもう一つ、もう一つ、と一個のみかんを楽しんだ。お母さんもみかんをおいしそうに食べている。

 二つ目のみかんに手を伸ばした。しかしこれには黒ずみがあり、腐っている様子。私はこれを元に戻し、別のみかんを手に取った。

 九個のみかんを食べた私たち。コタツの上には腐ったみかんがひとつ、寂しそうに残っていた。



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