みかん
今日、実家に帰省した。二日間お世話になるつもりだ。
両親は「結婚しろ、結婚しろ」とうるさい。私は「私なんかもらってくれる人はいないよ」とささやかな抵抗をする。
次の日。コタツに入りテレビをみていると、お母さんがみかんを十個持ってきた。
「ありがとう、お母さん」
私はみかんを一つ取り、皮をむく。
「この白いやつ、栄養あるんだよねぇ」
私はみかんの白いやつ(薄皮でいいのかな?)をあえて残して、みかんを一つ一つにバラして、その一つを頬張った。
「甘くておいしい」
一粒一粒がぎっしりとつまっていて、噛むとその果汁が溢れ出す。甘くておいしいそれを、口の中でゆっくりと味わう。
そしてもう一つ、もう一つ、と一個のみかんを楽しんだ。お母さんもみかんをおいしそうに食べている。
二つ目のみかんに手を伸ばした。しかしこれには黒ずみがあり、腐っている様子。私はこれを元に戻し、別のみかんを手に取った。
九個のみかんを食べた私たち。コタツの上には腐ったみかんがひとつ、寂しそうに残っていた。
/
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます