不思議な田中君



 田中たなか君。窓際の一番後ろの席に座る田中君。

 田中君はいつも不思議な事をしている。教科書を逆さに読む、定規をはじいて遊ぶ、ドーナツをメガネとして遊ぶ、など。特にドーナツをメガネの代わりにすることは、なんかいけないことだと思う。食べ物で遊ぶなって感じ。

 そんな田中君が消しゴムを落としたので拾ってあげたら、「それ、あげる」と言われた。いや、別に自分のあるし、ペンケースはいっぱいだから、それは断った。すると「ちぇっ」と舌打ちをした。

「なんで舌打ちをするの?」

 私は訊いた。

「だって誕生日でしょ?」

 田中君はそう言った。

 誕生日プレゼントが消しゴムなのは嫌だが、なぜか私は少し嬉しくなった。

 後日友人に聞いた話だと、田中君はクラスメイト全員の誕生日を暗記しているらしい。

 変わってるなあ、と私は思った。



読んで下さり、ありがとうございます。


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