特別な日は君と話せたら。

繊月ハクサイ

特別な日だけでも君と。

『明けましておめでとうー!!』 


 一月一日、午前0時0分。

 やっぱり今年も一番にメッセージを送ってくれたのは君だった。


 既読をつけて、文字かスタンプか軽く迷っていると、次々と通知を知らせる左上の数字が増えていく。


 多分今日は一年のどの日の中でも色んな人から同じメッセージが届く日だろう。


 ざわざわと流れるテレビ番組を視界の端で流転させながら、ぼんやりとメッセージを打ちはじめた。


『明けましておめでとう』


 そんなメッセージを打って『今年もよろしく』は僕からは言えない。


 三年前、僕は家の都合により東京に引っ越したため、よろしくすることなんてないのだ。


 昔は毎日同じ学校に通って、一緒に歩くと君のラムネみたいな髪の匂いがした。家も隣同士で、生まれた時からいつも隣で歩いてて、十センチでも手を伸ばしたら触れられたのに、今じゃ五百キロ先の君を思い浮かべてる僕がいる。


 ああ、もう三年か……。


 なにかとイベントごとや節目の日が好きな君だから、メッセージを振り返ると会話が交わされているのはいつも特別な日だけ。


『今日はスポーツの日だね!どうせいつも本読んでたりするんでしょ?今日ぐらい運動しなよっ』


『誕生日おめでとー!今は身長どんぐらいなのかな?』


『メリークリスマース!!お互い彼氏彼女いないし、今日は話に付き合って!』


『ハッピーハロウィーン!高級お菓子を送ってくれないとスタ連しちゃうぞ!笑』


 そんなふうに楽しく話しかけてくれる君は僕の知っている君のままで、そのことがなんだか安心できた。


 昔は毎晩あんなにメッセージを送り合って時々電話なんかもしたのに、たった五百キロ離れただけでこんなに話しかけることも話すこともなくなるなんて三年前は思ってなかった。


 一度話し始めると会話はなかなか止まらないのに、話しかけるまでの一秒がどうしょうもなく長い。


 でも、三にも、十にも、五百にも、共通する一は必ずあるから、それを君は繋いでくれている。


 僕もそれを繋がないと、なんて思ってしまった。


『特別な日しか話せないなら、365日毎日が特別な日ならいいのに』


 すぐに携帯を閉じて、どれくらい経っただろう。通知に反応してアプリを開いた。


『なんでもない日も、話そうよ』



————————————————————

 このお話はこれで完結です!

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特別な日は君と話せたら。 繊月ハクサイ @EIeita3021

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