神社に行ったら所持金が無くなった件

不明夜

神社に行ったら所持金が無くなった件

「(別に、神頼みするほど困っている訳ではないのだけど……)」

 細い路地の先にある鳥居をくぐり、その先にある階段を上りながら彼女はそんなことを考えていた。

 特に何か信仰がある訳でもないが、だからと言って無神論者というほどでもない彼女はたまたま出先で見つけた、路地の先にある神社にお賽銭でも入れてみようかと思い立ったのだ。

 階段を上り切り、少し息を切らしながら二つ目の鳥居をくぐる。

 境内を見渡し、彼女が最初に感じたのは「神聖さ」であった。彼女には、その綺麗に整えられた境内と人の気配のなさが軽率に踏み入ってはいけない場所の様に思えたのだ。

「(まあ、神社なんてそんなものかな)」

 彼女はあまり気にすることもなく、賽銭箱に近づいていく。

 参拝の時の作法は幼い時に祖母に教わったものの、今まであまりその知識を活かしたことが無かった為、微かな記憶を頼りにやり方を思い出していく。

 財布を取り出し、一枚しかなかった五円玉を賽銭箱に入れる。最後の一枚だったため少し勿体無い気持ちを持ちつつも、鈴を鳴らす。その後二回深い礼をし、二回の拍手。最後に一回礼をして、彼女は足早にその場を立ち去った。

 少し徳を積んだ気になりながら鳥居をくぐろうとしたその時、彼女にめまいが襲いかかる。


 鳥居をくぐり、、彼女が最初に感じたのは「不気味さ」であった。

彼女には、整えられた境内と人の気配のなさが不釣り合いに思え、そして何よりここに一度訪れたことがあるように感じたからだ。

「(まあ、神社なんてそんなものかな……?)」

 彼女はあまり気にすることもなく、賽銭箱に近づいていく。

 参拝の時の作法は幼い時に祖母に教わった切りだが、つい最近やったことがあるかの様に鮮明に記憶に残っている。

 財布を取り出し、五円玉が無かった為一枚しかない百円玉を賽銭箱に入れる。あまり小銭が無いため名残惜しく感じながら、鈴を鳴らす。その後二回深い礼をし、二回の拍手。最後に一回礼をして、彼女は足早にその場を立ち去った。

 少し徳を積んだ気になりながら鳥居をくぐろうとしたその時、彼女にめまいが襲いかかる。


 鳥居をくぐり、、彼女が最初に感じたのは「不気味さ」であった。

彼女には、整えられた境内と人の気配のなさが不釣り合いに思え、そして何よりここに何度か訪れたことがあるように感じたからだ。

「(ここ最近神社なんて行って無かったのに……そもそもこの町に来たの今日が初だったんだけどな……)」

 彼女は違和感を覚えながら、賽銭箱に近づいていく。

 参拝の時の作法は幼い時に祖母に教わった切りのはずなのに、何度もやったことがあるかの様に鮮明に記憶に残っている。

 財布を取り出し、唯一残っていた一円玉を五枚賽銭箱に入れる。最後の小銭だったため名残惜しく感じながら、鈴を鳴らす。その後二回深い礼をし、二回の拍手。最後に一回礼をして、彼女は足早にその場を立ち去った。

 少しの違和感を覚えながらも鳥居をくぐろうとしたその時、彼女にめまいが襲いかかる。


 鳥居をくぐり、、彼女が最初に感じたのは「恐怖」であった。

彼女には、整えられた境内と人の気配のなさが不釣り合いに思え、そして短期間のうちに何度もここに訪れたかの様な奇妙な既視感が彼女に恐怖を植え付けた。

「(何かおかしい……けどわざわざここまで来たのになにもせず帰るのはな……)」

 彼女は恐怖を感じながら、賽銭箱に近づいていく。

 何度も繰り返したかの様に鮮明に参拝の作法を覚えている自分にも恐怖を覚えながら、財布を取り出す。

 財布を開いて彼女は一つの平凡な、しかしこの状況では恐怖の対象となる事実に気付いた。

「(小銭がない……え?)」

 小銭がない。ここに来る前コンビニで買い物をした時には確かにあった小銭が、だ。

 あり得ないことが起こり恐怖心が頂点へと達した彼女は一目散に境内から立ち去ろうとし、鳥居をくぐろうとしたその時、彼女にめまいが襲いかかる。


 めまいを起こした彼女の目に次に飛び込んできたのは、幾度と見たはずの境内であった。

 何故自分がこんな所に居るのか、そもそも初めて訪れたはずの場所に何故既視感を感じるのか。

 彼女には何もわからなかったが、ここに居てはいけないと言う自身の直感に従い、もうだいぶ前に通った様に感じる道を引き返そうとしたその時、彼女にめまいが襲いかかる。


 めまい、目眩、眩暈、めまい。

 もうどれだけここから出ようとして居るのか、そもそも何故ここから出ようとして居るのか。すでに日は傾き、辺りは暗くなっていく。

「(結局は困った時の神頼み、か)」

 彼女は自棄になりながら賽銭箱に近づいていく。

 何度も行った参拝の作法を頭に浮かべながら、財布を取り出す。

 財布を開き、帰りの切符とレシートの他に唯一残った一万円札を祈りながら入れ、鈴を鳴らす。

 二礼、二拍手。

「どうか、此処から帰れますように」

 最後にもう一度深い礼。

 参拝を終えた彼女の意識は眠る様に落ちていった。


 次に目を覚ました彼女の目に飛び込んで来たのは、夜の駅だった。

「(ここは……駅?)」

 しばらく感じていなかった人の気配に深く安心しながら、帰りの切符で列車に乗り込む。

「(今回、神様に感謝するべきなのかな……?)」


 今回は神に助けられたのか、はたまた初めから神の悪戯だったのか。空になった財布を見ながら、彼女はそんなことを考えるのだった。



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神社に行ったら所持金が無くなった件 不明夜 @fumeiyo

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