敷衍と墓碑

勝手に整ってんじゃねえよボケカスおまえの喪主になるまで死なない

あなたから純度の高い問いを得て答えられずに死にたかった

まだずっと真綿で首を絞められるだけの覚悟が足りない革靴

「重そうな本は返してくるからさそこで待ってて一緒に帰ろう」

遠すぎる光を追って幾千年 一等星は崩御したまま

海を見にいきたかったよ ちょっととかじゃない時間がずうっとあって

カーソルがあわない 教えてもらったシャー芯の先が詰まっているペン

手を伸ばす 手はいなかったわたしだけ見ていた陸橋のうえの落書き

ぼくだけを置き去りにして消える 嘘、もとから一緒にはいなかったね

ごちゃごちゃときもちがぜんぶ言い訳になって、どうして? 時間のせい?

あなたのためじゃないなら探していませんよ 興味がないので、ごはんとかに

遠かった あなたは冬にはいなかった冬の夜空に似てたのに、あなたは

語源がひとつも一致しない類義語を用いて生活している

もう死んだものから先に川底に堆積されてどこへも行けず

目の前でただうつくしくいたかった つよくて、あなたに似ていたかった

だいたい月一くらいの頻度です 駅であなたの亡霊を見て

かみさまか何かのはずだ ぼくの目と足をこの場に縫い付けたままでいるもの

幸福を知らないままでいられたら泥のなかでもいきつづけたか

やさしさはきみの命を拐ってく 海が枯れても見つけられない

ごめんねを言えないきみの手土産の袋の紐が食い込む手首

かけちがうボタンの穴が重なって万華鏡みたいに海も覗ける

おやすみ 間違いだらけの世界のなかであなたにふれてしあわせでした

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