冬空の星

君をさすことの数々星よりもたくさんあってずっとまぶしい

ふと触れた温度が似てて驚いた サーモスとかに入れてたのかな

今日ばかり波が高くて肌寒い もう死にたいとか言わないけれど

星のない空に親指一つ分迫り出した夢のかけらを探す

ずるい たまにライムライトの向こうがわみたいな目をして僕をみるなよ

このすべて知らないたぶんわからない 夢の温度と渡れない橋

母親の土産のケーキをおもいだす 満腹であまり食べられなかった

アップルパイとアンパンとアンバターサンドが好き あのつくものが好き 愛とか

正しくて眩しくて目が焼かれそう もう何度空のはざまにおちる

言葉にはできない過去を選びとり切り取り繋ぎ合わせて捨てる

切り分けた果実 僕のじゃないけれど、断面がすごく綺麗でいいな

指先の皺の数々、すこしだけ歩く速度が速い爪先

器からじわじわ漏れる水みたい情景焦燥嫉妬恋すべて

飲み込んで吐き出してまた飲み込んだ ごはんを食べるひとのいとなみ

うちがわの熱を余して閉じ込める先にいのちを燃やした瞳

ほぼ見かけ倒しの映画の結末を面倒臭くて僕らで変えた

篝火のような台詞は面映くて箪笥の奥にしまっておくね

僕だけが知ってる 人形焼の袋を持って駆けて行く背中

さよならを告げそびれた 10度以下の砂浜で砕けた貝殻ばかり見つける

いつまでも呪いみたいに呼べない あれっていみなって言うんだって

砂時計何度もひっくり返すたびおわれば徒労なんだと気づく

ぼんやりと花の匂いがしていて、惹かれたらしいのはミツバチだから

君が何一つ知らない この海を渡って夢の島に行く夢

もう声の出ない喉奥こじ開けて君だ君だけなんだと叫ぶ

相応しい顔ばかりして何一つ相応しさの内実をしらない

星のない夜空と静寂のまんなかであの子のしずみかかった太陽

落とす 覚えたての感情を切り裂き向かう べつにもうほんとになにもないのに

思い出せないことばかり増えていっていつか僕もしんじゃうのかな

パサパサになった魚の頭見てきれいな水のあるくにをおもう

プリンタのインクの不調コピーした資料の端に凝縮されて

生ゴミの日が燃えるゴミの日と別になってしまって二度手間の朝

こじんまりとしまいこんだセーターが大掃除の日に嵩張っている

ポケットの裏側にメンダコのぬいぐるみ君を抱いて僕もいくから

縋る 吹雪の先に見えたから灯台みたいな爪先の炎

カーソルが点滅している ずり落ちる境界線の内側の波

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る