天気予報の半分は嘘

山奥の揺籃の庭にいるうちにもう一度海、見にいきたかった

歩行者は青か赤かの信号で渡る 僕たちに黄色はなくて

土砂降りの雨になるって聞いたからブーツにしたのに晴れていて嫌

僕にだけ先に頭上の階段を上らせたりするところがきらい

ひと昔まえまでウォッカもアルコール消毒がわりに使ってたのに

森の中に入ってみたら案外居心地がよかった そんなかんじ

都会のお洒落はわからないけれどコーヒーの味はわかるようになりたい

一休みするとするするスライムになってなんだかゴミクズみたい

花びらが落ち着いてから何年も経ったのにまた指切りなんて

アンパンを分けてくれても僕の手に返せるものはなにもないのに

宝石をまたひとつ土に埋めるたびだんだん剥がれていく爪先

切りすぎた前髪 捨てすぎた服 擦り切れすぎた靴底 君と僕

あらかじめ君が認めるためだけにある多様性とか嘘の諸々

鈴蘭を摘み取ったばかりの指先で触れるとしたら君の眼なのに

くらやみのなかでちいさくひかってるブルーライトに起こされる朝

生活の音だけ配信されている 生活出来ずにブラウザ閉じる

雨の日のキャンパスロードものすごく滑って転んでもう千切れた足

べつにもういいけど、期待してないし オーブントースターでパイは焼けないし

鍋底に溶けたバターの重みとかかんがえつづけるじんせいがいい

仕合せたやさしさなんて真夏日の生卵みたく腐っちゃうのに

摩耗した爪先のよう ふれるたびささくれ立っていくライムライト

綺麗事なんてお前の中だけで見てる幻想とかなんだろう

星屑のような愛とか恋だからきらきらまたたいてそして消えます

ごく無理なダイエットを敢行したら胸の脂肪ばかりが落ちてかなしい

きらいな夜につれていく電車の記憶を抱きしめている

だけどそのカトラリーだってぼくを食べるためのものだったろう

朝焼けの真昼みたいな夕方を見ていた 街頭ばかり光って

似合わない劇中歌とか歌うからせっかくの演出が台無し

ゆめだった 雨のむこうに差し出したライムライトと人工の島

いつまでもダラダラ走る 線路のうえにいたらみんなしあわせだから

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