金平糖の海へ行けない

最寄駅が在来線でないから乗り過ごしても海に行けない

お気に入りのカーペットに万年筆のインクこぼしてじゃあ、もうおわり

のこされた声だけいつもうらんでる 海見にいきたい季節ばかりで

クッキー缶に謝罪文を詰めあわせることもできなくなってかなしい

指差した虹のふもとがまぼろしでいつか見えなくなったとしても

金色の砂糖ひとつぶすくい上げ世界を泳ぐ 花でないから

あたらしい卵のカフェに見出したあかるい光みたいな小指

輪郭がぼやけた指と指の間をキャラメルラテに包まれて、了

ぐしゃぐしゃにしまいこんだワンピースを取り出した 好きだったなあ、それでも

僕たちの描いたゆめは何という名前で存在していましたか

世界中のどんな歌もおまえにはすこしも当てはまらなくて嫌

薄氷を右手で包みこむみたい 振りまく塩に溶かされる熱

深夜帯のコンビニで買うおでんみたいなやさしいひとではいたかった

飲み過ぎた朝日にゆめを放置して放り投げた水筒のつめたさ

わたしだけ東京湾をわたれない れるられるら抜き言葉みたいな

ガーベラのお花を西の窓際で育てる午前十時の既読

おひさまをすきになりたい 朝早くカーテン開けてあくびをしたい

つまらない歌ばかりだね ラブソングの歌詞に重ねる呼吸みたいな

夜ごとに開いて消える運命の声を聞いたらそれはぼくたち

とうきょうの灯すべてがゆめのしまみたいに溶けて耳を塞いだ

正円でないドーナツの穴さえもドーナツなのできっとおいしい

おさとうでできた世界を額縁に閉じ込めたのにベタついている

キャラメルラテのむこうの瞳をさがしてこんなとおくへ来てしまった

空き缶を砕いて割っても中身はきっと空洞だから無音のまま

配られたプリントはすぐ後ろの席のひとに回して地上で吐息

山盛りの運命ばかり引き連れてお前もお前も運命と呪詛

触れるなら覚悟を持って触れてくれそうでなければ触れないでくれ

世界へのアンテナ曲げて生きるなら死んだほうがまだマシでしょう

正しさをのど飴みたいにより分けるお前らのそのひとみがきらい

世界一うつくしいことばをしんじています お前に関係ないけど

こつこつがへたくそ 処方された薬もオーバードーズしちゃうし

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