有機物は腐敗するのが早い

お祈りのようにいちばんうつくしい絵の具を飲んで眠る未来へ

あいしてたひとたちはみなモノクロのような世界を宿してた日々

致死量の糖分だってほんもののおさとうよりも甘さひかえめ

吐く息の白さとおなじつめたさの湖に身を投げておしまい

スカートの中・靴下のうちがわにまあるい夜を含んだこども

ぐらぐらと白線をゆくマシュマロの靴をほうって天気になあれ

親指を引きちぎっては嚥下した 反対側の駅のホーム

一瞬で焼いた精子をていねいにティッシュで拭いて急速冷凍

さいあくは車内販売のワゴンでいつもどこでもぶち撒けられる

デザートにシフォンケーキのはんぶんを食べ尽くしたのはぼくだけでした

あたらしいみかんを枕に敷きつめて時計をぜんぶ割ったら成仏

赤信号右手をあげればこわくないのに直前で変わる 最低

SOSだったよ オーブン前にいたおのれの死を待つ林檎の蜜は

大切にしまっておいたすりきりの真水をたたえた花瓶を破る手

チョコレートバウムは呪いのようだった うちがわから溶け出す生命

夜色の万年筆のペン先をつぶして白いワインで乾杯

ひとつずつ金平糖を食むように文字におとして編み上げた熱

限定の色のシャドウはいつだってポーチのなかで安楽死する

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