たとえば空の色をすっかり変えてしまうようなネイビーブルー

鮮やかな海の色さえさらってく 鋭利な刃物になりたいために

自転車にひき潰された七日目のセミといっしょに捻られる生

右耳に触れた左手の温度もわすれてしまうおとなになった

鮮やかなことばの先の虹彩がライムライトににている瞳

約束が消えてくように無駄死にを今日も重ねるワンデイコンタクト

一ヶ月まえのペディキュアがそろそろ剥がれてしまう夏になってた

にせものの体温ばかりぬるま湯に浸からせた日に戻りたくない

台風をスーパーノヴァと言った人は入道雲を何と呼んだか

夜闇とじょうずにじょうずにとけあえるしあわせなんていらないのです

だれもしらない廃線のうえをいく 森の音だけついてきてくれ

あおという文字はたくさんあっていい 正解がみつからなくていい

パスコからチョコミントパンケーキとか蒸しケーキが出ていたからうれしい

夕立の空がいちばんすきでした とつぜん降って消えていくから

子宮から出たらみんなが一人きりなのにひとりでないからさいあく

おぼえてること、わすれずにいることを置き去りにして夜闇のさきへ

ぼろぼろのスクールバッグ片側にかけて食べたアイスはおいしい

手のひらでぐちゃぐちゃにして泣いていた思い出ばかりやさしくて嫌

愛してくれなくていいよ 海と夜のなかでしか生きられないから

土にしか引けない線は海や空には引けなくて幸福でした

白線のうちがわを行く靴はもう小さくなって履けなくなった

貝殻を集めて焼いた 貝殻はひとつも成仏せずに死んでた

雨上がりの土のにおいは運動会のにおいがするからだいきらい

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