第46話 建築描写の参考資料の話
twitter(現X)にて、本日6月20日発売のエクスナレッジ社の月刊誌「建築知識」2024年7月号が話題です。これまでも和洋の建築特集を組んでいる雑誌で、創作資料にはぴったり! と評判だったのですが、今回は「中国の建物と街並み 諸説絵巻」との特集で、創作界隈が騒然としていたのでした。
綾辻行人先生のご家族、すなわち小野不由美先生も注目されていたとのこと、これは買わねば! と予約していたのが手元に届いたので早速めくってみているところです。
ボリュームとしては、16ページ~92ページ、雑誌全体の三分の二ほどが特集に宛てられています。特集部分はフルカラーで読みやすく、描写の参考にもしやすそうです。
精読はまだなのですが、パラ見したところでの第一印象としては「おっ結構既視感あるな!」でした。参考資料として購入済だった書籍を参照・引用したと思しき情報が思ったより多かった印象です。具体的には下記の書籍です。
「図解 中国の伝統建築」(李乾朗 著、 恩田重直・ 田村広子 翻訳、 マール社、2023年)
「図説 民居:イラストで見る中国の伝統住居」(王 其鈞 著、 恩田 重直 翻訳、科学出版社東京、2012年)
特集の末尾には参考文献一覧もあるし、上記の二冊も案の定含まれていたので、何ら問題はないのですが。当然のことながら、全景・ディテール含めた写真や図番の多さ、解説の詳細さ、そもそもの取り扱う建築の数においては参考もとの文献の方が圧倒しています。それはもう本のボリューム的にも仕方のないこと。
とはいえ、では「建築知識」を買う必要はないのかというと、そんなこともないと思います。とりあえず値段についてだけでも、「中国の伝統建築」と「図説 民居」を合わせると約7千円のところ、「建築知識」は2千円弱ですからたいへんお得です。雑誌ということで軽くて取り回しも良いですし、この手軽さで新石器時代~古代王朝~清朝まで概観できるのはとても便利です。より詳細な情報が欲しい場合は、参考文献一覧から辿れば良いわけですしね。
手元の文献になかった情報としては、下記項目が面白そうでした。もちろん私にとって初見であるだけで、もう見たことあるよ、という読者もいるのでしょうが、何度も言うように調べ物の起点として良いのでは、ということになります。
・各時代の都市の俯瞰図→後宮や皇宮に留まらず、市井の暮らしがイメージしやすそうです。
・春秋戦国時代の攻城兵器の図→私は使わない分野ですが、こういう資料はあんまり見たことないので新鮮でした。
・坐様式の変遷→椅子に座ってテーブルに着く文化は意外と新しい上に非漢民族由来なんですよね……この辺りを意識して描写し分けると世界観に厚みが出ると思います。
・明清時代の家具→何となくのイメージはあるけど名称が分からなかった諸々が分かる! 名称を得たことで検索が捗る!
あとは、周代からすでに四合院形式が現れてるんだ~という知見も得られたのが興味深かったです。
服飾の記事もありましたが、見開きの2ページだけだったので、また、服飾がテーマの本はすでに色々あるので、それを目的にするのはちょっと弱いかもしれません。上述の通り、お手軽な一冊でまとめて参照できるのは利点でしょうが。
たまには話題の資料も扱ってみるか、な回でした。ほかにも面白い・興味深い本は色々読んでいるので、また近いうちにまとめたいものです、
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