第28話 舞台「キングダム」の話
舞台「キングダム」、配信だけど観ました、の話です。5月11日が大千穐楽で、配信の視聴期限が5月18日まででした。観た記憶が薄れないうちに書きたかったのですが、この一週間ほど体調を崩していたため今さらながらの記事になります。いくら古代中国が舞台とはいえ、創作の参考になるとは断言しづらいのですが、強引に関連付けます。最初に舞台の話もするって明言していますしね!
今回、舞台好きとしての発言が長くなりそうなので、多少なりとも創作に絡む部分まで記号で区切ります。ので、適宜読み飛ばしてください。
* * *
ご存知の方も多いであろう「キングダム」という作品、原作はヤングジャンプで連載中の漫画です。アニメ化もしていますね。孤児の少年・
山口祐一郎さんといえば、劇団四季でオペラ座の怪人、CATS、ジーザスクライストスーパースター等の初演に出演し、退団後も二十年以上に渡って「帝劇の怪人」として舞台上に君臨してきた方です。私の人生の半分以上の年月を推してきています。圧倒的な歌唱力と舞台映えする長身、登場すると舞台を支配する存在感、長年の経験でマント捌きは右に出る者がなく、確かに底知れない王騎将軍役にはぴったり……! キャスト写真の扮装もお似合いだし、ポスターでもど真ん中にいてさすが……! これは観たい……けど、コロナ禍の中で当日券もないし、仕事の都合もつけづらいし……と諦めかけていたところ、札幌公演の千秋楽を配信するという情報を得て、飛びついた──という経緯で今回の記事になります。
主役勢を差し置いて、山口祐一郎さんas王騎将軍の感想をまず綴ります。
若い役者さんの中で馴染んでいらっしゃるかしら……と勝手極まりない心配もしていたのですが、杞憂でしたね! そもそも嵐のように現れては好き勝手して去っていく役どころですし、信や政の前に立ちはだかる山のような壁のような存在、ということでやはりぴったりの配役ではなかったかと。次代の若者たちを見る目には舞台役者としての関係も重なる気がして勝手に胸が熱くなりました。王宮突入後(映画1作目と同じ部分、王弟反乱編までのお話でした)、政と信を見下ろして「よほど信頼している
今回、歌なしのストレートプレイで(帝劇で山口さんで、歌わないはずないでしょ~! と思い込んでたのですが、開始30分くらいで「このお話歌わないな?」とミュージカルでないことにやっと気づきました。それくらい前情報なしで観ていました……)、もったいない……とも思いかけていたのですが、声だけでもすごいなこの方! というのを久しぶりに思い出しました。響き方、耳に入った時の心地良さ、色気というか。囁くような発音でも心がざわざわします。花旦綺羅~にて、霜烈の美声にうっとりする燦珠の描写は、個人的感覚と体験が多分に入っています。
山口さんといえば演技プランが不思議な感じに見えることが多くて、今回も「おひとりだけ歌舞伎をやっている……?」な感じもあったのですが、王騎将軍には合ってるから無問題ということで! 配信期間の間に王騎将軍の出番のところを繰り返し観てたいへん心が潤いました。
ほかのキャストはご存知ない方ばかりだったのですが、印象に残った方を簡単に。
信役の高野 洸さん。信そのもの! な熱い演技が良かったです。
壁役の有澤樟太郎さん。壁の硬さや青さが出つつ、根性も見えて応援したくなりました。
バジオウ役の元木聖也さん。なんか関節の柔軟さがすごい……と思ってたらパルクールですごい方なのだそうですね。山の民ならではのアクロバティックな動きに魅せられました。
紫夏役の朴璐美さん。声優が本業だけあって声に迫力ありました。強かな女商人としての
良かった方のお名前はしっかり覚えておいて、また機会があればお会いしたいと思います!
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怪文書終わりました。ここからは、舞台配信を見てどう創作に活かそうか考えたことを一応書いてみます。
まずは、配信版の特典としてついてきていたメイキング映像について。お稽古風景も見せてくださっていたのですが、舞台ファンとして嬉しいのはもちろん、演劇ものを書こうとしている者としてもとても参考になりそうでした。宝塚やミュージカルでも、お稽古風景観る機会はまあ多いのですが、大きいジャンルで中華ものだし殺陣も多いしということで目を凝らしましたね。小道具の剣を抱えて演技プランについて語り合っていたり、その後ろではセットのチェックをしていたり、アンサンブルさんたちがアクションをさらっていたり──の空気感、自作にも取り入れられそうでした。楊端和のWキャストの梅澤美波さんと美弥るりかさんが殺陣を教え合っていたりとか。拙作のキャラクターたちにもやらせてみたいです。
あとは、怪文書中でちらりと触れたパルクール。セットの壁を駆け上がったり、殺陣の流れの中で相手の体や力を利用してのアクションがあったりと、身体能力を駆使した動きが華やかかつダイナミックなのが本作でした。身体能力的には拙作の子たちもできそうなので、次章以降でそんなアクションを取り入れられたら良いなあ、などと思ったりもしました。(ひらひらした漢服でのパルクールはとても危なさそうでもありますが!)
最後にもうひとつ面白いと思ったのが、殺陣における衣装の扱い方です。
秦王・政の衣装は、コミックスの表紙やアニメのキービジュアルでも恐らくお馴染みの赤い深衣だったのですが、殺陣の時には邪魔になるのか(?)、剣を握った右手の袂を左手で抑えていたり、左手を回して袂を巻き付けたり、な動きをしているのが目につきました。ほか、紫夏が弓矢を持つシーンでは、上衣の片袖を脱いだりしていましたね。やはり袖がゆったりしているので、弓矢の取り回しに邪魔になるから、ということなのでしょう。
考証的に正しい所作なのかは分からないのですが、「こういう服を着ているとどういう動きになるか」を踏まえて/考えて踏み込んだ描写ができると格好良いのではないかなあ、と。
そんなこんなで、趣味と実益を兼ねた観劇体験でした。
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