第24話 登場人物の命名の手法の話

 追っている創作エッセイで「中華ものは漢字が多くて……もっとルビが欲しい……」というお話を拝見しました。慣れない方にはどうやら「人名が読めないのがストレス」という現象があるようです。人名もさることながら、独自用語もガンガン出してる拙作を読まれたらどういう評価になるんだろう……と震えたりもしたのですが、人名についてはそういえば多少なりとも気を遣って決めていたことを思い出したので、改めて書いてみます。


 拙作「花旦綺羅演戯」、朗読配信に応募したこともあるのですが、その際は「読める名前で良いですね」というようなコメントをいただけました。はい、その通り。燦珠さんじゅ霜烈そうれつ詩牙しが喜燕きえん──拙作の登場人物たちは、概ね一般的に使われる漢字の一般的に使われる読みを使用しています。画数もそこまで多くはないですね(基準は人によりそうですが……)。

 中華ファンタジーにおいて、そこまで突飛な(レアな)漢字や読みを使っている例は、私としてはあんまり思いつかないのですが、できるだけ平易な字にしようという意識はあるので、読みやすさに多少なりとも寄与しているかもしれません。

 なお、史実をもとにした歴史ものだと、読みやすさ重視で名前を設定する、ということができないので大変だなって思います……。日本史における通字とか、慣れてないとぱっと見で「みんな同じじゃないですか!」に見えるだろうなあとほんと思います。


 限られた漢字でキャラ名を作っていくと、いずれ音や文字で被りが出るのが、というか使える字が減っていくのが目に見えていますが、できる限り頑張りたいと思っています。


 ちなみに、「名前は読みやすい字で!」というルールをあえて外したのが皇太后・霓蓉げいようですね。物語中、名前で呼ぶシーンが限られているのでまあ良いかな、というのが理由のひとつ。そして、もうひとつ、年齢・立場・考え方等々がその他の登場人物とはかけ離れているので、その隔絶を示すためにあえて厳めしい字面と読みにしております。文字の意味としては虹と芙蓉なのでとても美しいのですけれどね!


 さらにちなみに、私がキャラクター名にルビを振る基準は各話の初出は必ず、一話の中で場面転換する場合は、転換後の初出も。また、比較的画数が多かったり出番が少なかったりするキャラクター(要するに驪珠りじゅですね)は言及する都度、としています。気分の上でのルールなので合致していないところは多々あるかも。

 自分で設定できるところなので、可読性を少しでも上げるためなら煩雑さは度外視でやっております。一方、商業ではレーベルごとにルールがあるという情報も得たので、思い通りにできなかったりする場面もありそうですね……。




 もうひとつ、ネーミングについての小技として「名は体を表す」を意識しています。


 ヒロイン燦珠さんじゅは、性格も明るく、眩い芝居の才能を持っています。燦然と輝く、という評を作中でもたびたび使っています。そもそも由来というかイメージ元がミラーボールなんですよね。

 ほか、妃嬪ひひんのひとりである香雪こうせつは、楚々とした美貌と清廉な人柄で、まさに香り立つ雪のよう、と描写したりしています。あるいは、青褪めたシーンでその名の通りの雪の色の顔色で、などと。

 悪役の貴妃、瑛月えいげつは音も字面も刺々しく。男装の麗人である隼瓊しゅんけいは、猛禽の精悍さと宝玉の美しさを兼ね備えた感じで──などイメージしてました。

 同じく男装の麗人の星晶せいしょうについては「スターだからキラキラさせよう!」と思って決めたところ、なんかガチャ石っぽい雰囲気になったな……とは思っています。この子についても、「(名前の通りに)星が煌めくような眼差しで」などという描写に名前を活用していますね。


 作者本人には、どこまで効果があるのか測りづらくはあるのですが、

・登場人物の容姿や性格に通じる名前をつける

・名前に絡めた描写を入れる

 ことで、各キャラクターの解像度が上がったり、覚えやすく/印象付けしやすくなったりはするのではないかなあ、と思っています。




 なお、冒頭で触れた創作エッセイは和田正雪先生の「《カクヨム・ディストピアジャーナル》和田正雪(責任編集)」(https://kakuyomu.jp/works/16817330652954047225)です。商業デビューを控えた筆者による書籍化裏話や創作・公募におけるtipsなど、興味深く拝見しております。

 和田先生の御本「夜道を歩く時、彼女が隣にいる気がしてならない」は4月24日発売とのこと、Webでも拝読済で楽しませていただいた作品なので、購入しようと思っております。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る