第22話 機械翻訳は使えるのか、という話

 前回ふと気づいたので、中国語の文献を読むのに翻訳アプリはどのていど有用なのかをちょっと試してみました。


 インストールしてみたのは下記の三つ。

 Google翻訳

 DeepL翻訳

 Papago

 いくらか知名度が落ちるかもしれない三つ目は、オウムのアイコンが可愛い韓国産のアプリです。少し前に韓国BL漫画に嵌って本国版に手を出すか迷った時に、お勧めされていたのを見かけたので試してみました。


 使い方はいずれも簡単、読み取らせたい文章にスマホのカメラを向けると、文字を読み取って機械翻訳にかけてくれます。

 Google翻訳とPapagoは画像の中に翻訳した日本語の文字を表示してくれます。さらに、Google翻訳が切り貼りしたような表示になるのに比べてPapagoはとても自然に日本語を入れてくれるのにちょっと驚きました。とても見やすかったので漫画の翻訳にお勧めされるのも納得です。漫画のスクショを読み込ませれば、ほぼ翻訳版感覚で読めるんじゃないですかね……。

 一方、DeepL翻訳は読み取った中文と翻訳文を並べてテキスト表示する感じになります。文字だけを読めるのでこれはこれで見やすいでしょう。


 肝心の翻訳の精度は、体感ではGoogle>DeepL>>Papagoでしょうか……。DeepLは自然な翻訳をするとしばしば言われますし、実際日本語の表現としては滑らかに見えるのですが、内容的にはちょっとん? というところもありました。あと、ブラウザではこれまでもちょいちょい使っていて、文単位でしれっと闇に葬ることがあるのを知っているので今ひとつ信用がない。

 Papagoはさらに怪しい……のと、例えば「襖衣」を「チョゴリ」と訳したのを観測したりしていまして、韓国産アプリだから仕方ない面もあるのかもしれないですが、日本人としては読みづらいし混乱する翻訳結果になることもありました。

 なお、いずれのアプリも翻訳結果を英語にしてみたらもう少し読みやすくなった気がしました(あくまで体感)。翻訳アプリにも言語によって得手不得手があるのは、まあありそうなことですし、私のほうで非母国語の文章に点が甘くなっているということもあるのかもしれません。中日よりは中英のほうがまだ文法は近いですしね……。


 なお、読み込ませたのは前回紹介した「我在明朝穿什么?」なのですが、よって明朝の様々な装束に関する記述を翻訳しての感想になるのですが、各装束の名称、その部位、素材等々を翻訳アプリが把握していないがために翻訳の出来がよろしくない現象が起きている気がしました。分からない単語をピンインのカタカナや英字表記にして誤魔化すんじゃないよ、とか。上記の「襖衣」については、Google翻訳・DeepLでも「ジャケット」になっていましたしね……。なので、人間の側で「どの字がどのように訳されたのか」を考える作業の必要性はかなり重いっぽいです。円領袍が「丸首のガウン」になっていたり、「ラウンドネックのジャケット」になっていたりするので……(短いパラグラフの中でくらい訳語を統一してくれ)。

 結局、結構な時間中文を睨むことになるし、前提知識が必要だったり、何が書かれているかを改めて調べたりしなければならないようです。


 と、翻訳についての比較・所感を述べておいて何なのですが、各アプリの性能よりもスマホの画面の大きさとカメラの性能のほうが重要っぽいなーというのが正直な感想です。本を広げて、ほど良いパラグラフの塊で画面に収めて、文字が歪まないよう影が落ちないよう気を付けて読み込ませる──のがものすごく面倒だったからです。一ページまるまる撮影できるタブレットか、スキャナーでもあればもっと楽なのかもしれませんが。あと、ページが真っ直ぐになるよう本を広げると癖がつきそうですごく嫌……。


 そして、細切れで頑張って読み込ませても、文字の欠落や誤読み取りもありますしね……。一応、上に挙げたアプリはいずれも、読み込んだ文字をテキストとしてコピペできるので、例えばカクヨムの下書き等に保存→紙の本を参照してPCで編集→正しい文字列にしたうえで改めて機械翻訳に突っ込む、とかやればもう少しマシな結果になりそうではありますが。そこまでするなら辞書を引きつつ頑張ったほうが早い気がします。


 結論。中文の資料を読むのに機械翻訳は「使えないことはない」です。ざっくりとした概要を知るにはそれなりに有用ではあります。簡単な内容なら割と正確な翻訳が返って来るはず。が、もう少し踏み込んだ内容について正確に把握しようとするなら、相応の手間も努力も必要だなーと感じました。当たり前ですね。

 とはいえこれは現時点でのこと、技術の発展は日進月歩なので、いずれもっと簡単に異国語を読み解けるようになると良いですね。

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