第21話 最近読んで良かった本の話

 3月中に更新を頑張ると良いことがあるかもしれないということで(https://kakuyomu.jp/special/entry/7th_anniversary#kaku-marathon)、最近読んで創作に使える! と思った本をご紹介してみます。



「我在明朝穿什么?」 陆楚翚 江苏人民出版社 2022年


 タイトル「明朝では何を着るの?」の通り、季節や身分、場面ごとに明代の服飾を豊富な図版・写真と共に紹介しています。男性や官吏、宦官の服装についても載っているのが大変ありがたいです。お気づきの方もいたかもしれませんが、花旦綺羅~では男性陣の衣装の描写がかなりふんわりしていましたので……続編を書く際は、もう少し具体的に描写できるかもしれません。


 パラパラと眺めたところでちょっと驚いた記述としては「宦官の奉御職の補子(官位を表すゼッケン的なもの)は麒麟」というものですね。以前書いたように奉御はおおむね六品、同じ品階の文官はサギ、武官はヒョウの意匠の補子と聞くところ、ずいぶん良いのをもらっているような……皇帝の近侍ということになっているからとか、そんな意味があるのでしょうか。花旦綺羅~においては最下級の職位ということにしてしまっているのですが、史実においてはもっと管理職に近かったのかもしれません。なお、作中に登場する奉御の宦官・霜烈に着せた黒衣については、闇夜で舞う場面が格好良いのでこれはこれで良いかも、と思っております。



「古人这么活」

漫友文化編 1、2巻は天津人民出版社 3巻は黑龙江美术出版社 2016年~2019年


 全三巻、1.娯楽編、2.飲食編、3.佳人編の構成となっています。タイトル「古代人はこう生活した」の通り、各巻のテーマにそったイラストと記事が満載です。こちらは、歴史ものフィクションや華流ドラマの副読本的に楽しむことを想定したのでしょうか、テキスト部分は短く、言及される時代も雑多ですので、イラストを楽しむ雑学本くらいの位置づけと認識するのが良さそうです。とはいえイラストでイメージも膨らむし、1巻の遊戯名、2巻の料理名など、検索するキーワードのとっかかりとしても有用なのでは、と思います。中華後宮ものの創作、という面からすると、2巻の点心・甘味系の名称・イラストが活用できそうでした。

 なお、3巻は歴史上有名な美姫のエピソード集がメインです。


 上記二冊は中国語の書籍なので、入手を検討される際はご注意を。たぶん、眺めるだけでも興味深いとは思いますが。私も頑張って読んでいるところです……。というか、翻訳アプリを使ったほうが早いのでしょうかね。いずれ試したらレポしてみたいところです。

 Amazonと楽天で販売されているのを見かけましたが、販売者が中国の業者なので過去の評価等を見て自己責任で、になると思います。中国系書籍が充実している東方書店さんでも取り扱っていますが、本稿を書いている時点で「古人这么活」は在庫僅少、「我在明朝~」は中国から取り寄せになっていたので届くまでに時間がかかるかもしれません。



「図説 中国文明史」 創元社

 先史時代~清朝の全10巻、巻ごとに編著者、監修者、訳者が異なるようです。私が手に取ったのは第9巻「明 在野の文明」でしたが、ほかの巻/時代も同程度の密度の情報が載っているのでしょうから、是非とも読んでみたいと思っています。


 宮廷生活から庶民、地方の暮らしまで幅広い写真や絵画、図版をフルカラーで収録しています。創作的に役立ちそうなのは、宮城の建物、貴人の衣装や装飾品、調度品の詳細などでしょうか。火器の発展についてもページが割かれているのが興味深かったです。

 コラムも充実していて、皇帝や名士の逸話、出来事の解説など楽しく読めるかと思います。個人的にすごく意外だったのが、復辟した英宗帝が宦官・王振の家廟である智化寺を復興した(少なくともそれを許した?)という情報ですね。私のざっくりした理解によると、英宗帝は王振の功名心からの進言によって親政した結果、オイラトの捕虜になるという屈辱を舐めた(土木の変)、と思っていたので……恨んでないんだ? というのが正直な感想でした。明朝の皇帝は何というか濃いキャラが多いので(歴代王朝もきっとそうかも)、もっと色々調べたいなあ、と思っています。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る