第17話 後宮の妃嬪の位階についての話
今回は、後宮の妃嬪の階位についての話です。
「花旦綺羅~」の作中に出てくる妃嬪の位は貴妃と昭儀(と皇后)のみです。世間の中華ものでは、唐代の四夫人九嬪二十七世婦八十一御妻の制度などに倣って、様々な位を帯びる妃嬪を数多登場させている作品もあるようですが、拙作ではそれをしていません。なぜなら、ただでさえ人名や殿舎名、さらには華劇(≒京劇)関係の用語や演目名でごちゃついているのに、これ以上情報を増やしても良いことはないだろうと考えたからです。たとえば作中には「貴妃」がふたり登場しますが、そのどちらが淑妃でどちらが徳妃で、どちらのほうが上位で──という情報は、書き込んだところで作品の面白さに寄与しないと思うのです。
もちろん、これは独自用語が多い拙作ならではの判断であり、後宮の人間関係をメインにする作品の場合など、後宮内の制度を細かに記述することで醸されるリアリティというものも当然あると思います。その匙加減は作者によるでしょうし、歴代王朝の制度については、本話末尾の参考文献等で幾らでも調べられるので、ここでは詳述しません。
拙作における後宮制度についてさらに補足すると、世界観で度々参考にしている明代においても、妃嬪の制度は歴代王朝に比べると比較的簡素なものになっていたようなので、登場する位階が少なくても良いのかな、と考えております。外戚の専横に悩まされた過去王朝の反省を踏まえて、太祖洪武帝が妃嬪の位階の数および定員を大幅に削減したのだとか。実際、民間から妃嬪候補を募る制度を採用したこともあり、明朝の歴代皇后の出自はおおむね低く、外戚や垂簾政治の禍も比較的小さかったようです。一方、政を壟断する宦官を輩出(?)したのも明朝なので皮肉なことですね! (明朝は、後宮の諸事を女官ではなく宦官に任せることで後宮のスリム化を図った節を感じるのですが、代を経るに従って宦官の害が顕著化していったのかな、と何となく思っています。この辺りは要勉強ですね)
明の当初の制度によると、妃嬪の序列は貴妃、賢妃、淑妃……と〇妃の形式で九階位。ただし、代を経るに従ってその折々の皇帝の命によって位階が増減することもあったそうです。そのように一時的に設けられた位階の中に「昭儀」もあったので、花旦綺羅~の世界観においても採用してみました。既存の中華ものでも割と目にする位なので、「貴妃よりは下位の嬪ですよ」とだけ認識してもらえれば良い、という考え方です。たぶん、作中世界の後宮では、皇后・貴妃の下に昭儀等の位階が幾つかある構成になっていると思います。もしも本作の続編を書くことがあったとしたら、その他の位階の嬪が登場するかもしれないし、やっぱり煩雑になるから出さないかもしれません。
歴代王朝の後宮制度について知る足がかりとして非常にお勧めなのがこちらです。
浜本鶴賓 著『支那歴代後宮秘史』,春陽堂,昭和5. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1181046 (参照 2023-01-11)
昭和5年(西暦1930年)発行というところにまず驚きますが、より驚くべきことは、オンライン上で全ページ閲覧できるということ! 画像データかつ、旧仮名遣いなので見辛いのは否めず、かつ、現代では研究・発見の結果等で覆ってる部分もありそうではあるのですが、題名にたがわず歴代王朝の後宮の制度やエピソードが豊富に載っております。私もまだ読破できていないのですが、少しずつ紐解くのが楽しいです。
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