第7話

「由梨、由梨!」


 この世界で一番可愛い女の子の声がする。同じベッドの隣で、ちょっと乱れたバスローブ姿で。


「……れ、伶菜!? あれ、私……」


 気づけばもうすっかり外は明るいのだった。


「ごめん、あのあと、私、もしかして寝ちゃった……?」

「え、由梨も、もしかして、寝落ち……!?」


 ……やってしまった。


 昨日、あれだけ盛り上がって、キスまでして、押し倒されて、押し倒して、ぎゅーってハグしたところまでは覚えてるんだ。だけど、多分これは……。


「大変だよ、もうバスの時間!」

「えっやばいっ!!」


 反省や余韻に浸ってる場合じゃなかった。すっかり高くなったお日様が、今はもう昼に近い時間だということをお知らせしてくれている。


 私たちは大慌てで着替えて荷物をまとめてチェックアウトを済ませ、それから高速バスに飛び乗るのだった。




「寝ちゃってごめん……ほんと」

「ううん、わたしこそ……」


 バスの中で、ちょっとだけ照れながらお互いにそんなことを言って、それで笑い合った。


「次まで、お預けかな」

「残念だけど、しょうがないね」


 なんだかんだ言うけど、私たちにはこれから先があるんだから。それまで我慢、しなきゃね。


 そんなことを思いながらも再び私たちは、眠りの世界へ落ちていく。


 だって仕方ないじゃない、昨日はすごくすごく楽しかったんだもん。


 こうして私たちの初めてのお泊まりディズニーデートは、もう一つの夢の世界へと向かいながら、幕を閉じるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

卒業旅行でお泊まりディズニーデートする百合 霜月このは @konoha_nov

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ